子どもの携帯電話利用は日本でも関心が高いが、それは韓国でも同様だ。ただし日本と韓国では、少し状況が異なる点も見受けられる。韓国での子どもの携帯電話利用にはどんな問題や課題があり、それに対してどのような対策が行われているのだろうか。
9歳(日本の小学校3年生)の子どもを持つ兼業主婦のパク・サンヒさんは、子どもに携帯電話を買い与えるのは少なくとも2年先と考えている。
端末が決して安いものではないこと、クラスでも携帯電話を持っている子が数えるほどしかいないこと、そして子どもは学校が終わるとすぐに塾へ行って勉強していると分かっていることがその理由だ。
ただし、「職場にいて子どもと離れている間はやはり不安」(パク氏)ということもあり、いつでもつながる携帯電話はとても便利だと考えている。一方で携帯電話が高価なものであること、子どもの勉強への影響、そして成人コンテンツへの接触などに対して憂慮しているのも事実だ。
パクさんは、「だいたい11歳(日本の小学校5年生)くらいから、友だちも携帯電話を持ち始める。キャリアが用意している子ども向けのサービスを利用することで、成人コンテンツへの接触などの不安点も解決していければ」と話す。
韓国には子ども用の携帯電話はあまりなく、子どもでも大人と同様の端末を使っていることが多い。一方でコンテンツの利用を制限するサービスに関しては、子ども向けののサービスが数多く用意されている。
韓国には以前から、未成年専用のメンバーシップというものがある。SK Telecom(以下、SKT)では「ting」、KTFは「Bigi」といい、これに沿った料金プランや、さまざまな特典付きのメンバーシップカードを用意している。料金プランは若年層向けのためか、メッセージの送受信に関する割引などが多い。
未成年専用の料金プランとして代表的なものには、最近発表されたばかりの「子ども安心料金制」(SKT)がある。これは満12歳以下の子どもだけが加入できる料金プランだ。基本料は1万2500ウォン(約1500円)。これで子どもを守る4つの機能が提供される。
1つ目は1時間ごとに計8回、子どもの現在位置を親の携帯に知らせるサービス。2つ目は決められた場所から外れた場合、親の携帯に知らせるサービス。3つ目は子どもの現在位置を親に知らせるサービス。4つ目は緊急事態が発生した場合、複数の人に緊急呼び出しを行うサービスだ。
SKTが以前から提供している子ども用携帯電話「i-Kids」(2005年12月13日の記事参照)のサービス内容と似ているが、インターネット利用に関する規制は最近の韓国の事情を反映している。
子ども安心料金制ではインターネットに接続しようとすると、10代専用のインターネットサービス「NATE ting」に必ず接続するようになっているのである。ほかにも、2万ウォン(約2470円)/2万5000ウォン(約3090円)/3万ウォン(約3710円)のうちから、ユーザーが決めた限度額以上の通話をした場合、電話の発信を不可能にする機能も提供している。
こうした料金プランの内容やパク氏の話から、韓国における子どもの携帯電話利用の問題が垣間見える。つまりインターネットの使い方に多くの問題が見られるのだ。
情報通信倫理委員会が、13〜18歳の未成年1014人とその父母412人を対象に、携帯電話の利用法について調査した「青少年の移動通信サービス実態調査」(以下、実態調査)によると、約6.5%の未成年が成人コンテンツを見たことがあると回答している。その中でよく利用されているのが、成人向けのゲームや画像、小説などのようだ。
全体的な数値は小さいが、その一部の利用法に問題が見られる。時には膨大なコンテンツ利用料に膨らむ場合があるため、社会問題に発展するからだ(2006年3月7日の記事参照)。
韓国で成人コンテンツを利用するには単にメニューに接続すればいいわけではなく、「成人認証」を行わなければならない。これは韓国国民1人1人に割り当てられている「住民登録番号」と、本人が決めた暗証番号とで二重のチェックを行うというものだ。
本来、住民登録番号は本人しか知らないものだが、親などの住民登録番号を知っている場合、これを入力さえすれば、未成年でも成人としてコンテンツを利用できてしまう。実態調査でも、子どもが成人コンテンツを利用してしまう親側の理由として、「親の住民登録番号を入力するから」というのが71.4%にも上っていた。このように未成年の間で、住民登録番号の盗用が多いのも社会問題となっている。
未成年による成人コンテンツへの接続が大きく社会問題化したため、キャリア3社は現在、成人コンテンツをすべて廃止する方向だ。
SKTが7月に10月から全面廃止していくと発表したのに続き、KTFは11月から2007年3月にかけて成人コンテンツを段階的に廃止していくことを9月に発表。また、10月に入りLG Telecom(以下、LGT)も全面廃止していくことを宣言した。
特にLGTの場合は、他キャリアとは異なり成人カテゴリはないものの、「準成人コンテンツ」ともいえる写真集や、出会い系チャットのサービスまでを廃止するという強力な措置を取った。
こうした措置で困るのは当然コンテンツプロバイダだ。大きな収入源を失うとあって、一部コンテンツプロバイダから不満の声も挙がった。しかし、キャリアにとっては企業イメージに直結する問題でもあり、廃止を断行するしかなかったとみえる。
成人コンテンツに対する、親の認識不足も目立つ。先の実態調査において、成人コンテンツが子どもの目に「露出していない」と答えた親が57.3%で、「露出している」と答えた38.8%を上回っており、成人認証を知らないという親も40.1%にも上っていた。
子ども用携帯の少ない韓国。そのためサービスで問題を規制していくしかないのだが、親の認識向上や制度の改善も図られるべきだろう。
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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