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» 2007年08月14日 14時20分 UPDATE

閉じると携帯、開くとキーボード付きスマートフォン──Nokia Communicatorの進化を振り返る

QWERTYキーボードや大型ディスプレイ、オフィスアプリ、オーガナイザー機能を携帯電話に詰め込んだのが、NokiaのCommunicatorシリーズ。1996年の初登場以来、時代に合わせて進化し続けたこのシリーズについて、歴史を振り返ってみよう。

[山根康宏,ITmedia]
Photo 携帯電話にPCライクな操作性や機能を盛り込んだNokiaのCommunicatorシリーズ

 携帯電話にオフィスアプリケーションやオーガナイザー機能を搭載し、QWERTYキーボードを使えば長文テキストの入力が可能な「スモールコンピューター」になる──これがNokiaのCommunicator(コミュニケーター)シリーズだ。

 スマートフォンという名前すらなかった時代に生まれたこの端末は、ビジネスユーザー向けのハイエンド端末としてユーザーからの高い支持を得て進化を続け、2007年にはHSDPAに対応した最新モデル「E90 Communicator」が登場した。このNokia Communicatorシリーズについて、進化の歴史をたどってみよう。

Nokia 9000 Communicator──1996年

sa_com01.jpgPhoto Nokia 9000 Communicator(左)。端末を開くと、大画面&QWERTYキーボードにアプリケーションのショートカットボタンが現れる(右)

 Communicatorという名前を持つ最初の端末「Nokia 9000 Communicator」が発表されたのは、1996年。閉じた状態では携帯電話として利用でき、端末を開くとQWERTYキーボードと横長の大型ディスプレイが現れるという新しいスタイルが大きな注目を集めた。

 OSにはGE OS 3.0を採用し、内部ディスプレイは640×200ピクセルのグレースケール8階調表示。電話機能、FAXやSMS、Internet、電話帳、Note(メモ帳)、カレンダー、System、Extras(電卓/時計/着メロ編集)を各アプリケーションキーからワンタッチで呼び出すことができ、QWERTYキーボードを使った快適な文字入力の手段を提供するなど、外出先でのあらゆるビジネスコミュニケーションをこの端末1台で賄える、まさに「コミュニケーター」と呼ぶにふさわしい端末として登場した。

 サイズは173(幅)×64(高さ)×38(厚さ)ミリ、重さ397グラムと、昨今の端末に比べるとかなり大きいが、当時は他の携帯電話より多少大きいくらいであり、むしろ携帯電話とPDA機能を内蔵した唯一の端末として、海外ではビジネスユーザーの熱烈な支持を得た。PCとの連携にも対応し、外部接続には赤外線かシリアルケーブルを利用する仕様となっていた。

 画面を開いた状態でのハンズフリー通話機能や、ディスプレイの右にある4つのハードウェアキーを利用したアプリ操作など、Communicatorシリーズの特徴となる操作性はこの9000がベースになっている。GSM 900MHzのシングルバンド機としてリリースされ、後に北米向けのGSM 1900MHz対応版「Nokia 9000i」もリリースされた。

Nokia 9110 Communicator──1998年

sa_com03.jpgPhoto サイズが大幅に小型化されたNokia 9110 Communicator(写真左、手前)。基本機能はそのままに、細かい機能強化が図られた(写真右)

 Nokia 9110 Communicatorは1998年に発表された。本体サイズが158(幅)×56(高さ)×27(厚さ)ミリ、重さ253グラムと前モデルに比べて一回り小型化され、スーツの内ポケットにも無理なく入るサイズとなった。OSや基本機能はそのままに、新たにEmailに対応。外部メモリスロットを備え、MMCを使って保存容量を拡張できるようになった。ディスプレイにはバックライトが搭載され、暗い場所での操作性も向上。前機種のウィークポイントのほとんどが改善され、「Nokiaのビジネスユーザー向け高機能端末=Communicator」という図式を確立した。

 のちにWAP機能を追加したマイナーチェンジモデル「Nokia 9110i」が発売されたが、北米では9110シリーズはスキップされ、9000iをマイナーチェンジした「9110il」が登場した。

Nokia 9210 Communicator──2001年

sa_com05.jpgPhoto カラー液晶を採用した9210 Communicator(写真左、手前)。OS/UIはNokia Series80に変更。開いた状態でも待受画面となる「Desk」の概念が取り入れられた(右)

 2001年に登場したNokia 9210 Communicatorは、9110と同じサイズ(重量は若干アップ)ながらも内部の大型ディスプレイに4096色表示対応のTFT液晶を搭載し、まだ携帯電話のディスプレイはモノクロが当たり前だった海外市場において大きな話題となった。内部の進化としてOSはSymbian OS(6.0)に変更され、UIはCommunicatorデバイス向けとなるNokia Series 80を採用した。

 GEOS時代からの操作性はそのままに、SymbianをOSに採用したことにより、搭載されるアプリケーション機能は大幅に強化されている。MicrosoftのOfficeアプリケーションと互換のあるワープロや表計算など、ビジネス系アプリの標準搭載に加え、Java対応、MMS対応、音楽/ビデオ再生への対応などエンタテインメント機能も盛り込んだ。また面白い機能としては赤外線を搭載したデジタルカメラが別売され、カメラを搭載しない9210の外部カメラとして、撮影した画像を赤外線経由で9210へ転送することができた。

 通信方式はGSM 900/1800MHzのデュアルバンドに対応。パケット通信には対応していないがGSMの高速通信方式HSCSDに対応し、最大43.2kbpsでの通信が可能であった。この9210もマイナーチェンジモデルが登場し、メモリを強化した9210i、GSM 1900MHzに対応した北米向けモデル9290、中国語OSモデル9210cなどが発売された。

Nokia 9500 Communicator/Nokia 9300 Communicator──2004年

sa_com07.jpgPhoto 9500 Communicator(写真左、中)と9300 Communcator(写真左、手前)。フラットタイプのキーボードになり、キーを押しやすくなった

 4年間に渡るベストセラーとなった9210シリーズの後継機は、市場のニーズに合わせて「Nokia 9500 Communicator」と「Nokia 9300 Communicator」の2モデルがリリースされた。いずれも基本スペックはほぼ同等で、OS/UIはSymbian OS 7.0/Nokia Series 80 V2.0にアップグレード。対応周波数はGSM 3バンドとなり、この端末1台で全世界のGSMエリアで利用できるようになった。パケット通信はEDGE/GPRSの両方式にようやく対応し、内蔵メモリも80Mバイトに増えた。

 外部接続はUSBに加えBluetoothに対応。これによりケーブルレスでのデータのやりとりが可能になった。ディスプレイは背面もカラー化され、背面/内部ディスプレイともに6万5000色表示に対応。9500には802.11b準拠の無線LANとVGA解像度のカメラが搭載された。今でこそスマートフォンに無線LANが搭載されるのはあたりまえとなっているが、当時はその搭載は画期的であり、携帯ネットワークと無線LANを統合する時代が近づいていることを予感させた。

 フルスペックの9500に対し、やや小型な9300は女性ユーザーやアクティブに利用する層をターゲットに据えたモデル。のちに無線LANを内蔵した「9300i」が登場している。

Nokia E90 Communicator──2007年

sa_com09.jpgPhoto 2007年の最新モデル「E90 Communicator」はS60を採用し、HSDPAに対応した(左)。サイズは9300に近く、Communicatorとしては小さめだ(右)

 そして2007年、最新モデルのE90 Communicatorが登場した。W-CDMAへの対応に加えHSDPAと802.11b/g方式の無線LANに対応。GSMは850/900/1800/1900MHzの4バンドに対応した。画面の解像度は背面ディスプレイがQVGA、内部ディスプレイが800×352ピクセル。microSDカードスロット、GPS、Bluetooth 2.0などの機能も搭載しており、まさにNokiaのフラッグシップモデルと呼べる端末に仕上がった。

 なお、ビジネスアプリ開発の合理化を図るため(2月15日の記事参照)、E90 CommunicatorのOS/UIはSymbian OS(9.2)/S60に変更され、操作性はE61などに近いものとなった。

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