新たな販売方式と割引プランで“ドコモ離れ”に歯止め――ドコモの中村社長

» 2007年10月26日 23時05分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo 中間決算について説明するNTTドコモの中村維夫社長

 「新たな販売モデルと新たな割引サービスは、車の両輪。セットで導入することで、お客様との新たな関係を築いていきたい」――。中間決算発表の席でドコモの中村維夫社長は、今後の取り組みについて、こう説明した。

 ドコモの2008年3月期中間決算は、第1四半期に続く減収減益とふるわず、純増シェアも7.9%にとどまるなど厳しい状況が続いている。こうした中、8月22日の導入以降、順調に推移する「ファミ割MAX50」に、新たな販売方法を取り入れた「バリューコース」と「ベーシックコース」を追加して、解約率の低減と顧客満足度の向上を目指すとした。

 ドコモの中間決算は、営業収益が前年同期比2.4%減の2兆3251億円、営業利益が前年同期比21%減の4085億円。583億円減となった営業収益は、ファミ割MAX50などの割引サービスの影響で携帯電話の収入が減少したことが理由だと中村社長は説明する。また、営業費用の増加は、広告宣伝費の前倒しや基地局の増強に伴うコストがかかったことなどを理由として挙げた。「ネットワークは2007年度の投資額を80億円増やして7580億円に見直している。1つはエリアチューニングや設備容量の増大など質的向上を目指すのが理由で、9月末で89%となっているHSDPAの人口カバー率を年度末までに95%にすることを目指す。もう1つは洞爺湖サミットに対応するための設備投資が急遽入ったため」(中村氏)

 また、ファミ割MAX50が好調なことから、減収影響額が200億円拡大するとしているが、今後はバリューコース分の販売奨励金削減効果で200億円が生じるとし、それで相殺できると説明。純増数が当初の計画を下回ったことによる影響は、経費削減などで吸収するとした。

Photo 新たな販売販売方式の導入と好調な割引プランでユーザーの取り込みを図る(左)。ネットワークへの投資はHSDPAのエリア拡充の前倒しなどで7580億円に見直す(右)

国際ローミングやDCMX、3Gへの移行は好調に推移

 オペレーションについては、解約率が0.94%と「想定したほど下がっていない」(中村氏)ことが影響し、純増シェアが7.9%に止まるなど改善に向けた課題があるものの、「9月、10月の解約率は、8月までと比べると低下している。割引サービスの効果が徐々に出てきている」(中村氏)など、明るい兆しもある。

Photo 第2四半期の解約率(左)と純増シェア(右)

 FOMAの契約は4000万を超え、契約者の約4分の3がFOMA利用者になるなど移行が進んでいる。「2007年度末には8割以上がFOMAになる見込み」(中村氏)。定額制のパケ・ホーダイは契約者が1130万契約まで拡大し、9月末に1390万契約に達したiチャネルの好調も手伝ってARPUが底上げされているという。なお10月22日からサービスを開始した、PC接続のデータ定額は、約5000契約を獲得している。

 クレジットビジネスのDCMXは、9月末で370万契約を突破し、2007年度の獲得会員数の見込みを400万から500万に上方修正している。国際ローミング対応端末は1000万契約を突破し、ユーザーが手持ちの端末を海外で利用する“自端末ローミング”の比率は7割に到達。これに伴い、国際サービスの収入は前年同期比38%の増加となった。「11月に発売予定の905iシリーズは、W-CDMA/GSMのローミングを標準搭載しており、利用拡大につながる」(中村氏)

 端末の調達コストは、第2四半期の端末販売で70xiシリーズの比率が50%に近づいたことを挙げ、「90xiシリーズに比べて相対的に安価な端末の販売比率が上昇していることから、調達価格も低減している」(中村氏)とした。

Photo FOMAへの移行は順調に推移(左)。定額プランもARPUの底上げに貢献しているという(中)。10月22日から提供開始したPC接続のデータ定額は、約5000契約(右)

Photo 第2四半期のARPUは6550円で、前年同期比2.5%減。音声ARPUは前年同期比8.4%減の4340円、パケットARPUは前年同期比11.6%増の2210円(右)。DCMXの会員は9月末で370万契約を突破(中)。国際ローミング収入は前年同期比38%増となった(右)

Photo 70xiシリーズの健闘で、端末調達コストが低減

軸足はバリューコース、市場成熟期のリテンションモデルに転換

 業績改善の鍵を握る、解約率の低減や純増シェア拡大を目指すための施策として新たに導入するのが、同日発表した新たな販売方法の「バリューコース」と「ベーシックコース」だ。

 日本の携帯キャリアはこれまで、端末本体の価格から一定額を割り引いて販売し、その割引分を月々の通信料金で回収するという販売手法を採用してきた。しかしこの方式は、同じ端末を長く利用するユーザーに不公平になる点などが指摘され、総務省が主催した「モバイルビジネス研究会」でも改善を促す声が上がっていた。

 2つの販売方式のうちバリューコースは、端末の販売奨励金を廃し、その分月額料金を下げる「分離プラン」を取り入れた販売方式。「端末購入の初期費用をユーザーに負担してもらう代わりに、月額基本料を一律1680円値下げする」(中村氏)

 ドコモでは、これまで安価に端末を購入してきたユーザーが、いきなり原価に近い価格で購入するのを負担に感じることがないよう配慮した施策も行う予定だ。12回と24回から選べる割賦販売を導入するとともに、905iを購入したユーザーには、期間限定で定価から8000円を割り引き、最大3カ月間基本料金を2100円割り引く。

 中村氏は、こうした施策で「初期に多額な投資をするという抵抗感が薄れる」とし、端末価格についても、「新端末の価格がどうなるかによってずれはあるが」と前置きした上で、「プラン設計の考え方からすれば、奨励金を廃止することになるので端末価格は上がることになるが、基本料金の割引などの特典がある。このため、形は違えど差し引けば、(プランのスタート時には)現状とほぼ同レベルになるのではないか」と説明。ドコモとしては、今後は分離プランのバリューコースを主軸とする考えで、「バリューコースで5割は取っていきたい」(中村氏)としている

 ベーシックコースは2年間の継続利用を条件に、端末価格から1万5750円を割り引くもので、従来の販売モデルを踏襲したモデルという位置づけになる。

Photo 分離プランと割賦販売を組み合わせたバリューコースを主軸とした販売を目指す

 新たな販売方式の導入で、1台の端末を長く使う傾向が高くなると予想され、それが端末の出荷台数に影響するという懸念もあるが、中村氏は大きな変動はないと予想する。「個人的な感想としていえば、現在の年間5000万台という出荷台数からはマイナス方向に行くと思うが、そう大きく変動しないような気がしている。これまでは、購入から1年目に買い換えの山があり、それが低くなる気はするが、劇的には変わらないのではないか」(中村氏)。また、長期にわたってドコモを利用しているユーザーに対する優遇施策については、「現在検討中で、近いうちに発表できると思う」(中村氏)と話した。

 バリューに軸足を置く理由を問われた中村氏は、“大きく時代が変わったから”だという。「モバイルビジネス研究会が指摘した“長く使った人が損になる”という不公平感を我々も認める。今のままだとインセンティブ分を償却し終わった後も料金が下がらず、“これはまずい”ということで導入に踏み切った」(中村氏)。これまでの新規獲得モデルから、市場成熟期のリテンションモデルへの転向を図ると宣言した。

 あわせて、現在のドコモ中央と地域ドコモ8社で構成される体制を見直し、2008年度第2四半期をめどに統合することも明らかにした。全国1社の事業運営体制に移行することで効率化を図り、業績改善を目指す考えだ。

Photo 新たな割引プラン、新たな販売方式、事業体制の見直しで業績改善を目指す

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