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» 2008年06月16日 23時59分 UPDATE

石川温・神尾寿の「モバイル業界の向かう先」:第11回 マイクロソフト 梅田成二氏――シンプルなデータシンクロサービスも投入したい (1/2)

業界のキーパーソンと、ジャーナリストの石川温氏、神尾寿氏が携帯業界についてざっくばらんに語るモバイル鼎談。第11回では、マイクロソフト モバイル&エンベデッドデバイス本部部長の梅田成二氏に、Windows Mobileの今後の方向性について話を聞いた。

[田中聡(至楽社), 聞き手:石川温、神尾寿,ITmedia]

 ウィルコムの「W-ZERO3」が切りひらいたスマートフォン市場は、その選択肢の増加とともに、ユーザーを獲得しつつある。中でもマイクロソフトの「Windows Mobile」を搭載する製品はオープン性が魅力で、カスタマイズの自由度が高く、ユーザーが好みに合わせてアプリケーションソフトをインストールできるという特徴を持つ。一方で、このオープン性がユーザーに対してハードルを高くしているという状況もある。購入したままの環境では使い勝手があまりよくなく、チューンナップする作業が必須だからだ。

 第9回ではそんなWindows MobileのUIの強化について、そして第10回ではキャリア独自のサービスがWindows Mobileにも搭載される可能性について話を聞いた。今回は、Apple製品との比較も交えながら、理想のデータシンクロサービスについて、マイクロソフト モバイル&エンベデッドデバイス本部部長の梅田成二氏に聞く。

PhotoPhotoPhoto 左からジャーナリストの石川温氏、神尾寿氏、マイクロソフト モバイル&エンベデッドデバイス本部 部長の梅田成二氏

“共有”と“継承”をどれだけスムーズにできるか

神尾寿氏(以下敬称略) マイクロソフトさんも、PC向けのWindows Vistaも含めてトータルでデータのシンクロサービスを出してくれると、特にコンシューマーにとっては画期的かなと思います。私は複数のApple製品を使っているので、.Macで使用している複数台のMacとiPhoneをシンクロさせていますけど、あの環境は手放せません。サーバ経由ですべてのマシンがシームレスに連携するんです。設定が簡単で工夫もいらないというのが、不精者の私にはうれしい(笑)

 .MacとApple製品の連携がスムーズで簡単なのは、あれはあれで閉じた世界だからなのですけれど、マイクロソフトさんは多分それ(クローズドな連携)ができない会社ですよね。ですから、Windowsとしてのオープン性を担保にしつつ、クローズドなときに得られる利便性の高さや使いやすさがどこまで出せるのかが重要です。その利便性や使いやすさがかなりのレベルまで上がると、Windows Mobileを使うメリットがすごくあるのかなと思います。

 携帯電話も買い替えすると、キャリアさんが100%のデータ移行はしてくれないので、どうしても自分で細かな設定をする必要があります。でも、Windows Mobileの対応機器を買って、新しい機器にSIMカードを挿して、IDとパスワード入れれば、前と全く同じ環境がサーバ経由でシンクロされるとか、移行作業や初期設定が一切不要で環境が復元されるとなれば、「Windows Mobileは素晴らしい!」となりますよ。ユーザーから見てシームレスかつシンプルに提供してくれるシンクロサービスは、ぜひともほしいところです。

石川温氏(以下敬称略) 私も前は「ActiveSync」を使っていて、機種変更するときにデータを移行していたんですが、やはりiPhoneなどの使い勝手の良さに気付いてしまったので(笑)、前はWindows Mobileをすごく一生懸命使っていたんですけど、どうしてもだんだんiPhoneに行ってしまって……。それで今、なかなかWindows Mobileに戻る理由がないんですよ。

梅田成二氏(以下敬称略) いや、もうすぐ出てきますよ、そのへん(に注力したサービスや端末)が(笑)。

石川 一度(新機種に)データを持っていってしまうと、なかなか(旧機種に)戻すのが難しくなってきて、そこでアップルのうまい戦略にまんまとはまってしまっているわけですよ。そう考えるとマイクロソフトの戦略は、まだまだ完成されていないのかなという気はします。

神尾 個々人の情報資産、これはデータだけでなく、各種設定なども含まれるわけですけれども、それらの“共有”と“継承”をどれだけスムーズにできるかなんですよね。この2つ要素が完全にクローズドに取り込まれているところがアップルの上手さなので、それをオープン環境でどれだけマイクロソフトさんが実現できるかというのは、今後の成功における重要なポイントだと思います。

機種変更はフラストレーションがたまる

石川 例えばドコモからソフトバンクモバイルに番号ポータビリティ(MNP)で移るときに、WindowsMobile端末であれば、同じプラットフォームなのでデータをごっそり持っていくということも不可能じゃないですよね。そこはキャリアの手前、なかなか難しいでしょうけど、そこまでできるといいのかな、と。

神尾 キャリアさんの提供しているデータ移行サービスってものすごく時間がかかるんですよ。写真や動画までフルセットでやろうとすると数時間コースなんですよね。そういう状況なので、例えば、Windows Mobileのデータをまるまるサーバ側で預かってくれて、それが自分のものだと認証されれば、いつどの端末からでもデータが再現される環境になれば、かなり魅力的です。端末から端末のデータ移行そのものがいらないわけですから。

梅田 技術的にはできないことではありません。バックアップアプリとかでも環境をすべてバックアップしたうえで保存しておけますので、それをどう提供するかだけですね。

神尾 サードパーティーベンダーさんのソフトと組み合わせれば、似たようなことができると思うんですけど、それは一般の人にはめんどうくさいし、使いこなせない人も出てきます。やはり、ユーザーが使いこなさなくても使えることが、データのバックアップやシンクロといった基本的な部分では大切だと思うのです。ですから、どこまでマイクロソフトさんがサービスまで踏み込んでWindows Mobileをケアしてくれるかどうかは、すごく興味深いところです。

梅田 例えばそういうサービスがキャリアさんから出てきたとして、追加で料金が発生したら、払いますか?

神尾 払いますよ。私は.Macに年間9800円払っていますから。やっぱり安心感があるんですよ。端末が壊れたり紛失したときでも、すぐに新しい機種を買ってきてIDとパスワード入れれば、サーバからすぐに落としてくれてすぐに再現されるわけですよね。あれは一度味わってしまうと、有料でも全然構いませんね。

 特にケータイの場合、月額での数百円の課金は、ユーザーさんはそれほど抵抗はないわけですから、きちんと訴求して、例えば最初の1、2か月使ってもらえば良さが分かると思います。無料期間を設けて、最初に使っている間はバックアップとシンクロを体験してもらって、次にWindows Mobile機器を買い換えたときには、継承サービスという形でその良さを強く印象づけられると思います。機種変更は、一般のユーザーにとってかなりフラストレーションがたまるはずなんですよ。

石川 昔自分がWindows Mobileをアクティブに使っていたころは、米国のサービスに契約していました。W-ZERO3とかにためたデータをそのサービス経由でシンクロさせて、機種変更をするときは、そこから別のデバイスに設定して落としたりしていました。個人向けのサービスがなかなかないんですよね。最近一部の会社でやり始めていますけど、価格が高かったり聞きなれない会社だったりするので……。

神尾 マイクロソフトさんにやってください、と(笑)。

梅田 なじみのブランドでそういうサービスがあれば、入りやすいですよね。

神尾 マイクロソフトは今までソフトウェアを売ってきましたけど、そうではなくOSを含めたサービスや使いやすい環境を売ってほしいんですよね。そう考えると、ソフトとサービスを切り離す必要はなくて、一緒くたにやってもらったほうが、むしろありがたいですね。

 そのときの認証も、同じWindowsブランドであれば、自分のIDとパスワードでどこからでもログインできるというのは、すごくメリットがあります。

梅田 マイクロソフトはWindows Liveを提供しているので、そのへんが充実してくるとそういう(ソフトとサービスが統合される)状況になるとは思います。

神尾 けっこうまだバラけている感じがしますね。個々のサービスは頑張っていますが、全体としての一体感がもっとほしいところです。

梅田 本社のほうでもすでにWindows Liveのモバイル版の開発とWindows Mobileの開発を一緒に進めるような体制になっています。その組織変更が行われたのが去年なので、これからいろいろと出てくると思いますよ。

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