ソフトバンクが他社に先駆けて「音声定額」を導入――他社と消費者の反応を伺う「様子見」リリースか?石川温のスマホ業界新聞(1/2 ページ)

» 2014年01月31日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 1月24日、ソフトバンクモバイルは4月21日より「音声定額プラン」を導入することを発表した。日経新聞がすっぱ抜いたかと思いきや、朝11時にはプレスリリースが配信されたところを見ると、話題性を狙って、ソフトバンクが日経の記者にリークしたものだと思われる。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年1月25日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。


 「ついに大手キャリアにも音声定額プランが来たか」と諸手を挙げて喜ぼうと思ったら、何とまぁ、ツッコミどころの多いリリースであった。これが日本通信ならサラリと流せるのだが、ソフトバンクとなっては話は別。すでにいろんなサイトで指摘されているが、改めて整理してみたい。

 まず、リリースでは「お客さまにシンプルで分かりやすいように音声定額とパケット定額をパックにした革新的な新サービス」と謳っているが、音声とパケットをパックにしたことで、料金プランが圧倒的に高く見えてしまっている。Sパック(月額5980円)、Mパック(月額6980円)、Lパック(月額9980円)という具合で、「スマホにしたら毎月の支払いが高くなった」と不満を感じているユーザーが多い中で、この料金設定は、本当に消費者のことを考えているのか、甚だ疑問だ。

 しかも、これはあくまで「パック料金」であり、基本料金は別に980円が必要となる。しかも、いずれも「税別」となっているのがミソでもある。

 これまでのホワイトプランは税込980円(税別934円)であったが、4月からの消費税の増税に合わせて、税別で980円となっている。しれっと値上げをしているのが何とも巧妙だ。

 もちろん、パック料金も税込みとなるとSパック(6458円)、Mパック(7538円)、Lパック(1万778円)という値付けになる。

 肝心の音声定額プランも、Sパックで1回3分以内で月50回、M・Lパックは5分以内で月1000回という設定だ。規定時間を過ぎると、30秒32.4円とこちらも値上げされている。

 孫社長は「情報革命で人々に幸せにしたい」と常々、語っているが、孫社長の情報革命は、日本人の通話を3分以内に終わらせることなのだろうか。このままでは「ニッポン総早口時代」に突入することだろう。

 データ定額に関しても、月額6458円のSパックは2GBまで、これまでと同じく7GBにしようとすると7538円のMパックを適用せざるを得ない。しかも、超過した際、低速の128kbpsの制限をかけるためにも月額324円のオプション料金が必要となる。従量制に切り替わるのは問題ないが、データ通信量を超過する前にはSMSなどで「まもなく超過します」といったアラートを何度も飛ばすような仕組みが必要だろう。アプリですぐに使用データ量が確認できるぐらいだとありがたい。

 今回のパック料金は「誰もが安い」と感じられるような設定にはなっておらず、「ソフトバンク、大丈夫か」と心配になってくるほどだ。かつて、ボーダフォンを買収した後に発表した「ゴールドプラン」の時の世間の空気を読めていない、ドッチラケ感が漂ってくるのはなぜだろうか。

 ただ、ソフトバンクとしても、今回の発表は、ライバルと世間の動きを読むためのアドバルーン的な位置づけが強いのではないか。

 まず、発表が1月24日であり、サービス開始まで3カ月近くもある。通常、料金プランをここまで前倒しで発表することはなく、ましてやソフトバンクは、過去には数日単位で料金プラン変更を行ってきた会社だ。それが3カ月も先の予定で発表するとは行儀が良すぎる。

 今年、NTTドコモやKDDIがVoLTEを投入し、もしかすると同時に音声定額プランも発表する可能性を控えている。早ければ、NTTドコモは3月にも発表することが予想されるだけに、ソフトバンクとしては「他社より先に発表したかった」という本音が見えてくる。

 KDDIは1月30日、NTTドコモは1月31日に決算会見を予定しており、早ければそのタイミングで、VoLTE導入に関するアナウンスがあってもおかしくない。ソフトバンクとしては、KDDIの春商戦モデル発表の翌々日、さらに2社の決算会見の前週という絶妙な時期を狙って、今回の発表をしたのではないだろうか。

 特にKDDIが「つながるなんて当たり前」とアピールしているのに対し、ソフトバンクは「VoLTEを先駆け」という、もはや接続率などは二の次に置き、違うステージに逃げ込もうという戦略はとても上手いように感じる。実際、VoLTEの導入も明らかにしておらず、やるかもわからないVoLTEをさも先駆けて導入するかのように見せるリリースを出すというのは、イメージ戦略としては、ずば抜けて巧妙と言えるだろう。

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