“ISP最後発”ならではの戦法で――リニューアルした格安SIM「エキサイトモバイル」の狙いMVNOに聞く(1/3 ページ)

» 2016年09月27日 06時00分 公開
[田中聡ITmedia]

 「エキサイトモバイル」は、エキサイトが7月1日から提供しているMVNO(格安SIM)サービス。もともと「BB.exciteモバイルLTE」を提供しており、これをリニューアルさせた形だ。利用量に応じて料金が決まる従量制の「最適料金プラン」と、1GBからの「定額プラン」を提供しているほか、最大5枚のSIMを1契約で持てる。BB.exciteモバイルLTEでは対応していなかった音声対応SIMも提供している。

 固定回線向けを含むインターネットサービスを提供しているISPとしては、NTTコミュニケーションズ、ソニーネットワークコミュニケーションズ(So-net)、ニフティ、ビッグローブなどもMVNOとなってモバイル通信サービスを提供しているが、エキサイトモバイルは、中でも最後発のサービスとなる。

エキサイトモバイル 月額500円から利用できる「エキサイトモバイル」

 エキサイトモバイルはどのような経緯で誕生し、2つのプランはどのような狙いで提供しているのか。エキサイト ブロードバンドサービス本部 ブロードバンド営業企画部の橋本昌和氏と、ブロードバンドサービス本部 ブロードバンド企画部の栗原春樹氏に話を聞いた。記事中の価格は税別。

サブ回線ではなくメイン回線として使ってほしい

エキサイトモバイル エキサイトの橋本昌和氏

―― サービスを開始してからの反響を教えてください。

橋本氏 プロモーションやキャンペーンをそれほどやっていない割に、安定的にお客さまが訪れて申し込みいただいているという状況ですね。後発だったので心配はしたのですが、うちを選んでくれるポイントがあるのかなと。

―― どのあたりが評価されていると感じていますか?

橋本氏 お申し込みいただいたプランを見ると、当初の想定では、市場のニーズが大きい定額制の3GBに集まると思いきや、最適料金プランの複数枚SIMへのお申し込みが多いですね。そのあたりにお客さまが評価されるポイントがあると想定しています。

―― これまではBB.exciteモバイルLTEを提供していましたが、7月にリニューアルした背景を教えてください。

栗原氏 BB.exciteモバイルLTEは2012年7月から提供していて、(格安SIMは)早めに取り組んだ方だったのですが、当時はまだ音声通話SIMがメジャーではありませんでした。マイナーチェンジはしてきたのですが、「大手キャリアの音声SIM」と「MVNOのデータSIM」の2台持ちをターゲットにしたままでした。音声SIMの検討もしましたがそれだけだと弱いのではないかという話も出ました。

 リニューアルするならプランやブランドも一新した方がいいと考えて、いろいろ練った結果、この時期になったということです。

―― BB.exciteモバイルLTEでは、大手キャリアをメインにして、サブ回線として使うことを想定していましたが、エキサイトモバイルは、大手キャリアともガチンコで勝負して、メイン回線で使ってほしいと。

栗原氏 そうですね。2014年頃から、MVNOが大手キャリアからの乗り換え対象になってきましたが、そこの波にうまく乗り切れていなかったので、大手キャリアと使い勝手があまり変わらない内容にしようと思いました。

―― 2014年からなぜ2年も時間がかかったのでしょうか。

栗原氏 バックボーンの検討を1からする形になったので、そこに時間がかかりました。また、固定回線では(2015年に)光コラボが始まり、そちらにも注力して「エキサイト光」を提供していた事情もあります。

―― 光コラボとセット契約をすると、モバイルサービスの料金を割り引く施策を実施しているMVMOもありますが、そちらはいかがでしょうか。

栗原氏 現状はまだやっていないですが、検討はしています。

無駄を省けるよう「最適料金プラン」を提供

―― 「最適料金プラン」と「定額プラン」の2つを用意した狙いを教えてください。

栗原氏 最適料金プランは、当初の企画からありました。弊社の場合、低容量で複数枚SIMの人気が高く、極力1枚あたりの単価を抑えたい人たちが集まっています。定額制プランは無駄が生じることがあるので、無駄を省いて効率的に使えるプランがゴールなのではと思い、従量制をやってみようと。(検討していた)当時はFREETELさんしかやっていませんでしたが、FREETELさんは刻みが大きい従量制だったので、より無駄をなくせるよう、今回は500MB〜1GB刻みにしました。

エキサイトモバイル 従量制の「最適料金プラン」。200kbpsの低速通信のみなら月額500円で済む。高速通信は500MBまでは月額630円、1GBまでが月額660円で、以降は1GBごとに料金が上がっていく。SIM1枚コースの上限は10GB

―― 最適料金プランで利用するデータ容量は、どれぐらいが多いのでしょうか。

栗原氏 まだ低容量帯の方々が多いですね。上(の容量)に集まることもあるので、小容量か大容量で分かれています。

―― BB.exciteモバイルLTEの毎月のデータ容量は4GBまででしたけど、エキサイトモバイルでは(最適料金プランで)上限を15GBにしたのは、ニーズがあったからだと。

栗原氏 ニーズがありました。低容量のニーズもありましたが、大手キャリアとの遜色をなくして、乗り換え対象にしてもらえるよう、大手キャリアが持っている7GBや8GBに相当するプランが必要と判断しました。

―― 定額プランも用意しています。

栗原氏 最初は従量制だけを考えていましたが、いろいろアンケートを取ると、従量制プランを提供しているMVNOがそれほどいません。大手キャリアをずっと契約してきた方は、従量制プランにあまりなじみがない方がほとんどなので、定額プランを導入して、選択の幅を広げました。

エキサイトモバイル 「定額プラン」は月額670円/1GBから。大容量の20GB、30GB、40GB、50GBプランも用意している

―― 定額プランも低容量のユーザーが多いのでしょうか。

橋本氏 定額は3GBあたりが多いですね。

―― 定額プランでは20GB、30GB、40GB、50GBの大容量プランを提供していますが、これの狙いを教えてください。

橋本氏 20GB〜50GBは、どちらかというと販促寄りの視点で、当初、30GB〜50GBのプランは特定の販路でのみお取り扱いしていました。まれに(申し込みが)入ってきているので、通常のラインアップに追加しました。“他社がやっていないけれどニーズのあるところ”は意識しました。

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