「逃げ恥」はなぜヒットした? 星野源を素直に愛せない私たちの思いを探ってみた(1/2 ページ)

» 2016年12月22日 06時00分 公開
[おしり元気ITmedia]

話題の「逃げ恥」って何?

 「逃げ恥」が終わってしまいました。

 逃げ恥とは、2016年の10月〜12月までTBSで放送されていた連続ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の略称(原作は海野つなみさんの漫画)。12月20日の最終回は、平均世帯視聴率20.8%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)となり、TBSの火曜ドラマ枠で歴代最高視聴率を更新しました。

 とあるきっかけで、賃金が発生する「契約結婚」をすることになった男女の社会派ラブコメディーで、出演者が主題歌に合わせて踊る、通称「恋ダンス」も話題になった大ヒットドラマです。

 「自尊感情が低い男」津崎平匡(つざきひらまさ)と、「小賢しい女」森山みくりのぎこちない恋は、「ムズキュン」と呼ばれ、毎週多くの視聴者をもん絶させてきました。もちろん、私も毎週テレビの前でもがき、叫び、恋ダンスをしていた1人です。

 では、一体逃げ恥の何がそこまで人を引き付けたのでしょうか? 今回は、Twitterで逃げ恥に関するツイートを追いかけながら、その答えを探してみました。

 「ロス」が起こる作品と起こらない作品の違いは? そして、我々はなぜ星野源を素直に愛することができないのか……? 「逃げ恥ロス」に苦しむ皆さん! 共に考えながら、ロスを越えていけ!

逃げ恥 ぬぐいましょう、喪失感! 乗り越えましょう、「逃げ恥」ロス!

連載:おしり元気のインターネットふしぎ発見

ライターおしり元気が見つけたネットやITにまつわる不思議で面白い世界を紹介していきます。

ライター:おしり元気

歯科衛生士の学校に行っています。その様子をブログに書いています。出先でまんじゅうやアイスを食べるのが好き。ブログ「潰れそうな会社に勤めながら歯科衛生士を目指すブログ」、Twitter:@oshiri_genki


逃げ恥の何が人を引き付けたのか?

「夫とまだ友達以上恋人未満だったとき、終電を逃して家に泊まったけど、何もできなかった。そのことを思い出してキュンとした」

「付き合う前のもどかしい時期、小さなことに一喜一憂したなあ」

「付き合う前ってモヤモヤしてつらいけど、毎日ドキドキして楽しいよね」

 Twitterを見ると、逃げ恥に関連して、結婚前や交際前の甘い思い出をつぶやく人が多く見られました。

 つまり、老若男女が共感できるような「あの頃」を提供したこと。これが、逃げ恥が多くの人を引き付けた最大の理由ではないでしょうか。

 お互いにくっつきたいのにくっつけない、あの距離感は、逃げ恥の大きな魅力です。契約結婚という発明によって、恋愛における最高の時間、つまり、「交際に発展する直前」を引き延ばすことを可能としました。

 あの頃を思い出したからといって、どうしようもないのですが、人間は今のところ過去には戻れません。時々振り返り、懐かしみ、また前を向いて、現在を変えていくことしかできないのです……。

 いつまでも眺めていたい、そんな契約結婚ですが、お互いの好意を確認し合った瞬間に「恋人」にシフトし、崩壊することは明白でした。つまり、視聴者を喜ばせていたムズキュンの数は、契約結婚崩壊のカウントダウンだったというわけです。

 もちろん、そうして親密になっていく2人を見るのはうれしいのですが、別居事件以降積極的になった平匡に物足りなさを覚えた人も多いのではないでしょうか?

ヒラマサ 第9話でのひとコマ。あの平匡がそんな事を言うように……! と、うれしいような寂しいような気持ちになりました

なぜ「ロス」は発生するのか?

 「ロス」とは、文字通り「喪失」を示し、インターネット上では「好きなアニメやドラマが終わってしまった後の喪失感」を表す言葉として定着しています。

 NHK連続テレビ小説「あまちゃん」放送終了後に生まれた「あまロス」という言葉は、記憶に新しいのではないでしょうか。

 Twitterを見てみると、今回の逃げ恥終了に伴い、あまロスに匹敵するくらいの壮絶なロス現象が起こっている事が分かります。

 かくいう私も、生まれて初めてのロスを経験している所です。この空っぽな気持ち。心に穴が開いたような感覚。ああ、「あまちゃん」ファンの皆さん、これがロスってやつなのですね。いつか終わってしまうということは知っていたけれど、この喪失感を埋めるものを、私はまだ知らないのです……。

 しかし、なぜロスが起こる作品と、起こらない作品があるのでしょうか? そこにはさまざまな理由が考えられますが、最大の理由は、物語の中のキャラクターが持つ「人間らしさ」の量ではないかと考えます。

 「自分はダメな人間で、こんな自分を受け入れてくれる人なんていないに違いない」という平匡のあきらめ。「求めるのは自分ばかりで、相手は求めてくれない」という、みくりの悲しみ。

 私はこれまでの人生の中で、どちらも味わったことがあります。逃げ恥は、「あっこれ私だ」と感じる回数が、猛烈に多いドラマです。

 もちろん、その他のキャラクターたちにも、それぞれ軸の通った生き方、考え方が与えられています。これは、より多くの人が共感できるようにするための工夫です。

 逃げ恥は、冷静になると「少女漫画にありがちな超非現実的設定」だらけなのですが、こうして「共感」の量をてんこもりにすることで、リアルを感じさせていたと思います。共感はキャラクターを人間らしくして、その生き方に興味を持たせます。いつの間にか、「この人はこの後どんな人生を歩むのだろう?」ということが気になってしまうのです。

 しかし、ドラマは現実ではないので、その後の人生は用意されていません。好きになった人たちの、その後を知るすべがない。この虚しさこそがロスなのではないでしょうか? 例えば、キャラクターが最後に死んだり、物語が老後まで描かれたりしたら、私たちは満足するのでロスは起こらないと思います。

 逃げ恥のドラマの場合、全11話、計11時間30分が彼らについての全てです。私たちにそれ以上のことは分かりません。ああ、なんてむなしいんだ……。

号泣 「夫婦を越えていけ」のフレーズで大号泣
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