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» 2017年02月15日 06時00分 UPDATE

アニメを見ない私が「美味しんぼ」を見たときの衝撃 (1/2)

[おしり元気,ITmedia]

オタクになれない私がやっと見つけた「究極のアニメ」

 根暗な性格の私は、「リア充」と呼ばれるような人間にはなれませんでした。そして、「オタク」にもなれませんでした。何かを熱心に追いかけると体力を消耗しますので、どうしてもやりたくないのです。物を収集するのも苦手で、3つ集まれば捨てたくなります。

 オタク趣味で盛り上がっている様子は、とても魅力的なものです。応援上映、オフ会、コスプレ、グッズ収集……。私も、あんな風に仲間を作って盛り上がってみたい。熱く語れる何かが欲しくて、流行のアニメを頑張って追いかけてみたこともあります。

 感想は、「良かったな」でした。「良かったな」って。人工知能の方がまだ感情的な感想を述べるでしょう。脳が凍ってしまったのか。

 そんなロボット以下の無感情を抱える私が、ついに運命のアニメと出会いました。それを見ると、感情が活発になり、気に入ったシーンを何度も繰り返し再生するようになり、人と熱く語りたくなるのです。熱心に追いかける必要はありません。DVDを買う必要もありません。そんな究極のアニメがあるのです。

 Amazonプライムビデオで見る「美味しんぼ」です。

美味しんぼ 美味しんぼって……すごいんですね!

連載:おしり元気のインターネットふしぎ発見

ライターおしり元気が見つけたネットやITにまつわる不思議で面白い世界を紹介していきます。

ライター:おしり元気

歯科衛生士の学校に行っています。その様子をブログに書いています。出先でまんじゅうやアイスを食べるのが好き。ブログ「潰れそうな会社に勤めながら歯科衛生士を目指すブログ」、Twitter:@oshiri_genki


初めて美味しんぼを見てみたら、あまりのクレイジーさに仰天

 美味しんぼは、雁屋哲原作、花咲アキラ作画のグルメ漫画。新聞社勤務の山岡士郎と栗田ゆう子が、「究極のメニュー」を作るために奔走するというもので、アニメの他にも、テレビドラマ、映画、ゲームなど、さまざまな展開を見せている、言わずと知れた国民的作品です。

 そんな美味しんぼですが、実は私、原作を読んだことがありません。何気なく見ていたAmazonプライムビデオでのアニメが、私と美味しんぼの出会いということになります。人生27年目にして、初めて触れた美味しんぼ。

 あまりの「マジか……」の連続に、記事を書かずにはいられませんでした。皆さん、こんなにクレイジーな作品を読んでいたんですね……!

驚きその1:「山岡の美食には、正義がある!」と思いきや

 主人公の山岡士郎は、素晴らしい味覚と食に関する知識を持っています。しかし、それが故に料理をこき下ろしてしまうのです。料理人の前で。

 ですが、これには山岡なりの正義があると感じました。山岡は「金持ち」「自称美食家」「偉そうな店」には容赦しないのです。特に「偉そうな店」には厳しい。

 威張りちらしている寿司屋があれば、「こんな店の寿司よりスーパーのパックの方がよっぽどうまいって言ってんのさ……」と一蹴。

 その後、寿司を病院でCTスキャンして、「断面の空気が少ないからまずい」ということを得々と説明し徹底的に叩きのめすという、病的な容赦の無さです。グルメ漫画は、おいしいものを紹介して「おいしいね」というものだと思っていたので、これには驚きました。

 また、メディアに騒がれテングになっている店に行けば、取り皿は1人1皿までだと言われてブチ切れ。「なにぃ? ゴマソース料理も、チリソースのも同じ皿で取れってのか!!」と叫び、「こんな店で何も食べちゃいけない」と言って、退店してしまいました。 あ、そうか! 山岡の美食は、「客を大切にする心」を重視しているんだ! と感動したのもつかの間、わざわざ店員を呼び止め、「この豚バラ煮込みは出来損ないだ。食べられないよ」と、今度は完全ないちゃもんで場を凍らせる山岡。この一貫性の無さ、グルメ漫画界のダーティーヒーローとでも言いましょうか。

驚きその2:初期は「さすがにやりすぎ期」

 山岡の父、海原雄山も負けていません。海原雄山は有名な陶芸家であり、美食家です。食に異常に執着する人間で、死んだ妻(山岡の母)に気に入るものができるまで、何度も料理を作り直させていた過去を持ちます。

 そんな父を毛嫌いしている山岡と雄山の確執が話の軸になっているのですが、雄山も「さすが山岡のパパ!」と手を打ってしまう程のいかれっぷりで驚きました。

 招待されたフランス料理のパーティーでの一幕。「和食至上主義」の雄山は、フランス料理のすべてが気に入らず、ワサビとしょうゆを持参。カモ肉に付けて食べ、一言。

 「この方がうまい」。

 こき下ろすために、わざわざ持ってきたのでしょうか。周到すぎてドン引きです。美食とはこんなに野蛮なものなのか……。

 しかし、アニメではこれが雄山の異常行為のピークでした。この後は、キレながらもアドバイスをくれたり、ピクルスを贈ったりと、「怖いけど実はいい人」というキャラに定まってきます。

 同時に、当初は狂犬のように雄山にかみついていた山岡も、随分理性的になります。どうやら初期は「さすがにやりすぎ期」だったようです。でも、このやりすぎ期がたまらなく好きです。

親子 話し合いが持たれたのではないかと疑うくらい、急に大人しくなる2人

ある日突然、山岡がカッコよく見えてくる現象

 美味しんぼを見続けていると、山岡士郎がカッコよく思えることがありませんか? 私はあります。

 山岡の博識さは、猛烈です。街中でアヒルの丸焼きを見かければ「あの腹から出たタレがうまいんだ」と、さらりと教えてくれますし、「アラ」と言われれば、それが魚の残りではなく、「アラ」という名の魚のことだと分かります。

 重ねて、山岡は独特の口調でさらに知的な印象を植え付けてくるのです。アニメ33話『青竹の香り』(Amazonプライムビデオの話数、以下同)では、野菜のテリーヌを食べ、「あっさりして具合が良い」と評しました。山岡ほどになると、「おいしい」なんて言いません。「具合が良い」のです。

 性格はクールなように見えますが、身投げしようとしている人を助けて世話してやるなど、熱いハートの持ち主です。

 狂犬のような一面もある一方で、会社でのぐうたらぶりを上司に突っ込まれると、「勘弁して下さいよォ〜」と調子の良い返事をして場を和ませる様子を見せることも。人間性が読みきれません。博識でミステリアス。能力者バトル漫画のライバルみたいでカッコいい……!

 海原雄山も一見いかれた老人ですが、アニメ20話『板前の条件』では、「この雄山を試すようなマネをしおって」「雄山をうならせるとは見事だ」と、一人称が「ゆうざん」になってしまうというカワイイ一面があります。

 ちなみに、雄山をうならせたのは、「春雨を膜状にして桑の実の酒漬けで香りをつけたもの」という謎料理でした。

山岡 モテたいときは、スーツで調理場に立とう。もちろんベルトではなくサスペンダーで

「カスや」と言わない!? アニメならではの美味しんぼ

 アニメには、かの有名な「あゆ回」も収録されています。山岡と雄山が「あゆ対決」をする回で、審査員役の京極氏が、山岡の出したあゆをさんざん褒めちぎった後、雄山の出したあゆを食べた途端に泣き出し、「これに比べると山岡さんのあゆはカスや」と言い放つというものです。

 原作を知らない私も、この名言は知っていました。知らない間に美味しんぼが刷り込まれている世の中、恐ろしいです。そして、この名言が聞ける瞬間を今か今かと楽しみにしていたのですが、なんと、アニメでは「カスや」という部分が無くなっていたのです。

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