楽天の携帯キャリア参入で気になる「料金」と「ネットワーク」

» 2018年04月09日 15時05分 公開
[田中聡ITmedia]

 4月6日、総務省の電波監理審議会で、楽天(楽天モバイルネットワーク)にLTEの1.7GHz帯を割り当てることが決定。これにより、楽天が通信キャリア(MNO)として、携帯電話事業に参入することが確定した。楽天が「2019年10月」を予定しているというサービス開始までに、エリアやサービスの構築を進めていくことになる。ここでは、楽天のMNO参入に関して押さえておきたいポイントをまとめる。

楽天 4月6日に割り当てが決定した周波数帯。楽天には1.7GHzの20MHz(×2)が割り当てられる

そもそもMNO事業に参入する狙いは

 楽天は2014年からMVNOとして「楽天モバイル」を提供しており、契約数は既に140万を突破。総務省の統計ではSIMカード型のMVNOサービスでシェア1位を獲得するなど順調に成長している。楽天スーパーポイントで回線料を支払えるようにする、楽天スーパーセールで端末を格安で販売するなど、楽天グループのシナジー効果を生かした施策も導入し、効果を上げている。

 そんな楽天が、なぜあえてMNOになろうと考えているのか。同社は2017年12月に発表した「携帯キャリア事業への新規参入表明に関するお知らせ」で、「国内における絶対的な顧客基盤と『楽天スーパーポイント』、そしてMVNO事業で培ったモバイル通信事業のノウハウを組み合わせることで、低廉で利用しやすい携帯電話の料金を提供するとともに、オンラインショッピング、ストリーミングサービス、動画広告等のリッチコンテンツ、革新的な決済手段等をユーザーの皆さまに包括的に提供することができる」と説明している。

 つまりMNOになることで、楽天モバイルでのシナジー効果を、より強く発揮できると考えたことが分かる。

 そのためには、楽天モバイルを超える契約数を獲得しなければならない。楽天は、「1500万人以上のユーザー獲得を目指す」としている。楽天はMVNO参入当初、「1000万契約」を目標に掲げていたが、3年で100万契約を突破するのが精いっぱいなのが実情だ。MVNOで1000万契約を突破するのは厳しく、MNOになる方が、短期間でより多くの契約数を獲得できると判断したことがうかがえる。

楽天 「楽天モバイル」提供当初は、1000万の契約数をもくろんでいたが……

料金はどれぐらいになる?

 ユーザーが特に気になるのが、月額料金がどれぐらいになるのか、という点だろう。先ほど引用したプレスリリースでは「低廉で利用しやすい携帯電話の料金を提供する」とあり、楽天の三木谷浩史社長は2017年12月にTwitterで「楽天の携帯事業参入意向表明。カード事業参入の時も、色々と言われたが、10年が経ち、取扱高、利益水準も業界トップ(クラス)になった。MVNOの好調さ、9000万人を超える会員ベースを考えても、参入は自然な流れだと思う。もし認められれば、より快適で安価なサービスが提供できるように頑張ります」(原文ママ)と語っている。少なくとも3キャリアよりも安くなるのは間違いないだろう。

 また、4月7日に総務省が公開した「第4世代 移動通信システムの 普及ため移動通信システムの 普及ため移動通信システムの審査結果(※PDF)」によると、料金設定の計画は「現在のMVNOで提供中の料金プランで提供予定」「今後、大容量プラン、法人専用プラン等を検討」とある。

楽天 楽天が計画している料金プランの詳細

 楽天モバイルの主要プランは、2GBで月額1980円(税別、以下同)、6GBで月額2980円、14GBで月額4980円(いずれも1年目、2年目は+1000円)の「スーパーホーダイ」で、高速通信を使い切っても最大300KB〜1Mbpsの速度で使い放題になる他、国内通話5分かけ放題も付いている。MNOになっても、これらの料金と大差ない内容になると予想される。Y!mobileもスーパーホーダイと同じ料金なので、Y!mobileを意識して、むしろ楽天モバイルよりも下げてくるかもしれない。

楽天 「楽天モバイル」で提供している主要プラン「スーパーホーダイ」

ネットワークは大丈夫?

 モバイル事業を展開するに当たって、最も重要なのがネットワークの品質だ。いくら低廉な料金を実現できたとしても、快適に通信できなければ意味がない。

 楽天に割り当てられたのは、1.7GHz帯の20MHz(×2※下りと上りで20MHzずつ)。20MHz幅をフルに使い、変調方式を256QAMにし、4×4 MIMOを導入することで、理論上は下り最大400Mbpsの速度が出る。しかし他社を見ると、例えばNTTドコモは「PREMIUM 4G」として下り最大788Mbpsのサービスを提供している。auは下り最大708Mbps、ソフトバンクは下り最大612Mbpsで、大きく水をあけられている。

【訂正:4/9 18:17 楽天の通信速度を4×4 MIMO導入時の400Mbpsに変更しました。また、auとソフトバンクの最高速度に誤りがありました。おわびして訂正致します】

 屋内でも電波が通りやすい、1GHz帯未満の「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯を確保していないのもネックだ。900MHz帯取得前のソフトバンクや、800MHz帯非対応のau「iPhone 5」の通信品質が(場所によって)いまひとつだったことは記憶に新しい。この点は、楽天が大手キャリアのネットワークをローミングする形でカバーするのが現実的だ。実際、イー・アクセスも、サービス開始当初はドコモのネットワークをローミングして、狭いカバーエリアを補完していた。

 ただ、総務省は4社に電波を割り当てる条件を課した際に、楽天にのみ条件を追加した。その1つに「既存事業者のネットワークを利用する場合でも、自社でネットワークを構築することが原則であることに留意する」とあり、「ローミングだけに頼らないように」とくぎを刺した形だ。

楽天 総務省が楽天にのみ課した条件。注目は7つ目の条件だ

 楽天は2025年までに最大6000億円を調達して設備投資に充てると説明しているが、これはドコモが1年にかけている投資額にすぎず、「どこまで本気でインフラを構築するのか」と懐疑的な意見もみられる。逆に、この6000億円の資金をMVNOの回線増強に割り当てて、MNO並みの速度を出すようにした方が有効にも思える。

 楽天モバイルはドコモからネットワーク(帯域)を借りており、カバーエリアはドコモと同じ。お昼時や夕方など時間帯によっては速度が出にくいが、基本的には全国で問題なく通信できる。「MNOよりMVNO(楽天モバイル)の方が快適だ」という事態は十分ありえるし、料金プランが楽天モバイルと同じで通信品質が悪いという“劣化版楽天モバイル”になってしまっては本末転倒だ。

 ちなみに、三木谷氏は2018年2月13日の決算会見で、楽天モバイルのユーザーについては「準備が整い次第、MNOに乗り換えてもらう計画」と語っている。つまりMVNOとMNOを併存させるのではなく、モバイル事業についてはあくまでMNO一本で展開していく考えのようだ。

 既存3キャリアよりも保有周波数帯が少なく、圧倒的不利な状況なので致し方ないが、楽天でどこまで快適にデータ通信できるかは気になるところ。楽天モバイルのユーザーがMNOの楽天でも満足して使い続けてもらえるかが、1つの試金石になるだろう。

iPhoneは扱えるのか

 日本のスマートフォンでシェアの半分近くを占めるiPhone。このiPhoneを販売できるかどうかも、契約増に大きく関わってくる。現状、国内でiPhoneの最新モデルを扱っているのはドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアのみ。MVNOは、楽天モバイルをはじめ、1〜2世代前のメーカー認定整備済品を扱うところがほとんどで、新品の最新モデルは扱えていない。

 楽天も、MNOになればiPhoneの最新モデルを扱えるのでは、という期待があるが、iPhoneはある程度の台数を調達できないと扱えないという不文律がある……と業界内でささやかれている。楽天がMNOになったといえども、すぐにiPhoneを扱える可能性は低そうだ。

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