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» 2018年11月03日 10時00分 公開

石川温のスマホ業界新聞:スマホから補償金を徴収しようとする音楽権利団体――私的複製の標的にされた「スマホのスクショ機能」

文化庁において進む「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」という会合。その場でスマートフォンに「私的録音・録画補償金」を適用しようという議論が持ち上がっている。実際に適用すれば、録音・録画しないユーザーからも補償金を取ることになってしまい、不公平感が拭えなくなる。配信中心となった現代において、これで良いのだろうか。

[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 10月23日、文化庁において、「文化審議会著作権分科会 著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第4回)」の会合が開催された。

 「スマホに補償金を載せる」というとんでもない暴論が出ていると聞きつけて、傍聴、取材してきた。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年10月27日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 現在、著作権法30条2では、録音や録画に対して、著作権者への補償金の支払いを義務づけている。これを「私的録音・録画補償金制度」という。録音に対しては1993年6月から実施されており、DAT(デジタル・オーディオ・テープレコーダー)やDCC(デジタル・コンパクト・カセット)、MD(ミニ・ディスク、オーディオ用CD-R、オーディオ用CD-RWなどが対象だ。

 集まった補償金は日本音楽著作権協会(JASRAC)や日本レコード協会などに分配されているのだ。

 ちなみに、録画に関しては、地上デジタル放送の開始により、コピーに制限をかけることができるようになったため、管理団体が解散し、制度が機能しなくなっている。

 私的録音に関しても、DATやMDといった録音機器がほぼ消滅し、CD-Rなどで録音する人も減少していることから、補償金が激減している模様だ。そのため、管理団体としては、新たな資金源を確保しようと「スマホに補償金を載せるべき」という議論を展開しようとしたようだ。

 ある委員からは「PCユーザーの21.4%、スマホユーザーの14%が私的複製をしているというデータがある。日本では年間3000万台のスマホが出荷されている。3000万台に14%をかけた480万台分の補償金を回収できる可能性がある」という意見が出た。

 補償金を回収し、クリエイターに還元するという仕組み自体は間違っていない。むしろ、積極的にクリエイターが保護されるべきだろう。

 しかし、この議論を看過できないのは、「補償金をメーカー側に負担させ、ユーザーが意識しない形で広く薄く回収したい」という魂胆が目に見えている点にある。

 昨今、音楽はストリーミングで楽しむようになってきており、これであればクリエイターと配信事業者、そしてユーザー間は契約で結ばれ、クリエイターはきっちりと守られるようになる。

 議論のなかで、ある委員からは「レンタルCDのコピーが問題であれば、レンタルCDのパッケージに補償金を載せればいいのではないか。そうすれば、ユーザーは自分の好きなクリエイターを応援することができるし、ユーザーは補償金を理解した上で支払うようになる」と至極、まっとうな意見がでた。

 しかし、これまで補償金を得てきた団体関係者からは「それはまかりならん」と否定。あくまでメーカーから回収すべきだという立場を崩さなかった。

 スマホに補償金を載せるとなれば、音楽をコピーしないユーザーからも補償金を獲るということになる。それではあまりに不公平ではないか。

 これまで、補償金を得てきた団体からすれば、新たな資金源を探そうと必死になるのは理解できなくもないが、あまりに暴論過ぎて空いた口が塞がらなかった。

 ITのチカラによって、著作権は保護される方向にあるし、ストリーミングの普及により、音楽や映像の楽しみ方は変わりつつある。

 例えば、民放番組の見逃し配信サービス「TVer」は、「CMがスキップできない」ということで、実は今後、期待されるサービスと言われている。

 YouTubeに違法に配信されてしまっては、テレビ局にとって何のメリットもないが、TVerで広告をつけて配信すれば、ユーザーは早送りできず、しっかりとCMを見るようになるというわけだ。

 また、radiko.jpも、地方のプロ野球中継や有名人の番組を聞きたいと、radikoプレミアムで月額350円の課金をする人が多く、ビジネス的に成功している。

 もはや「配信で稼ぐ時代」になりつつあるなかで、「補償金を獲ってやろう」という発想は、もはや時代遅れであることに全く気がついていないのだろうか。

© DWANGO Co., Ltd.

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