MVNOの音声通話プランは、MNOから「卸プラン」を購入して提供している。卸プランは基本的に「リテールマイナス」方式で提供されており、MNOが直接ユーザーに提供する料金よりも割安な料金となっている。
しかし、データ通信における接続料と比べると、卸音声プランの料金はあまり下がっておらず、MVNOから「引き下げる余地があるのではないか」という指摘がなされている他、「(MNOプランには存在する)音声(準)定額プランを卸プランとして提供してほしい」という要望も上がっている。
そこで、今回の総務省の論点案では、(準)定額を含む全料金を考慮に入れた実質的なユーザー料金ベースで卸音声料金を検討すべき旨を盛り込んでいる。
IoT(モノのインターネット)を普及させる観点で、昨今「LPWA(低消費電力・広エリアネットワーク)」に注目が集まっている。日本でも、各キャリアがLTEネットワーク用の電波帯域の一部を利用する「セルラーLPWA」への対応を進め、とりわけau(KDDI・沖縄セルラー電話)とソフトバンクは低廉な専用料金プランも設定している。
総務省としてはMVNOを含め、セルラーLPWAを提供する事業者を多様化したいと考えているものの、約款においてMVNOがセルラーLPWAを提供することを想定していないMNOもある他、対応は可能でも回線管理機能にかかる接続料が若干高額(1回線あたり90円前後)という課題がある。
そこで、今回の総務省の論点案では、回線管理機能に関する低廉な接続料を設定するなど、MVNOがセルラーLPWAを提供しやすくなるような制度整備について検討を促している。
現在、NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話とソフトバンクは第二種指定電気通信設備を持つ通信事業者として指定されている。この指定を受けると、他社から接続(回線借用)の要請があった場合に原則としてそれに応じる義務を負う。
この研究会も含め、総務省が過去に開催した検討会・研究会では、UQコミュニケーションズの「WiMAX 2+」と、Wireless City Planning(WCP)の「AXGP」の通信設備について第二種指定するべきかどうかの議論が行われてきた(関連記事その1/その2)。
この点について、UQとWCPは「自社単独では接続交渉上の優位性を持たない」「アンバンドル機能(※2)を自社単独で提供していない」といった理由から二種指定されることは不適切との見解を示してきた。
※2 第二種通信設備を持つ通信事業者が他事業者に開放しなくてはいけない機能。現状の制度では、「音声交換」「データ交換(レイヤー2接続)」「MNP転送」「SMS(ショートメッセージ)交換」がそれに当たる
今回の総務省の論点案では、UQとWCPは「電波の有限希少性等により寡占市場が形成されているモバイル市場においては、MVNOに対する『交渉上の有意性』を持ち得る」と整理。UQはKDDIと沖縄セルラー電話に、WCPはソフトバンクに回線の大部分を提供することで「相当水準の端末設備シェアを獲得」しており、「MVNOへの設備開放による収益拡大のインセンティブが働いていない」ことから、両社にも第二種指定を適用できると結論付け、二種指定制度では事業者間連携も加味すべきとしている。
論点案では、両社への二種指定を行う場合、以下の点について配慮、または見直しをすることが適当であるともしている。
※3 UQに対するKDDI・沖縄セルラー電話、WCPに対するソフトバンク
※4 「電気通信事業会計規則」に則って作成された企業会計。二種指定されたMNOは、同規則に基づいた会計計算が義務付けられる
この案を巡っては、構成員から二種指定の基準となる「シェア」について、そもそもの考え方を見直すべきであるという趣旨の意見が出た。
現在の携帯電話は、SIMカード1枚で何台もの端末を使える。一方で、1台の端末が複数枚のSIMカードを取り扱うこともできる。5GやセルラーLPWAが普及すると、「端末」の台数が爆発的に増えることも考えられる。
今後、携帯電話のシェアをどう定義していくかの議論も行われることになるだろう。
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