岸田氏が就任以降、大きく見直したのは端末のラインアップだけではない。むしろ、「昨年1年間、かなりの時間を使った」というのが、オペレーションの見直しを含む構造改革だ。「まだ完全に終わったわけではないが、公表したように、2020年にオペレーションコストを半減するという活動は、今年度をめどに、完全に終了する予定」。
岸田氏によると、構造改革は「予想以上のスピードで進んでいる」という。構造改革に終わりが見えたことで、「内部の会話がよりよいものになっている。ソニーらしい5Gとは何か、ソニーらしい商品やアプリケーションで何を目指すのかといった会話に変わってきた」
商品を変え、オペレーションを見直した結果は、第1四半期の決算にも表れているという。岸田氏によると、「大きな変化は、Xperia 1を導入した第1四半期に、このセグメントが黒字だったこと」だという。
「報道では、どちらかと言うと年間の販売台数予想を400万台に下げたことが取り上げられてしまったため、われわれの進化を感じられないかもしれません。ただ、実際には、100万台(年間の販売台数予想を)減らしたのは、ローエンドの機種群や昨年から持っていた在庫分で、その意味では一からリスタートできました。Xperia 1のようなものを出せたおかげで、その四半期が黒字になったのは、本当に手応えがありました」
新しいXperiaは、販売台数も慎重に見積もっているという。実際、「色や販路、国や地域によっては、足りていない時期もあった」という。「多くを求め過ぎず、まずは復活することを主眼に生き抜こうとしている」という考えがあるからだ。
ただ、年間の出荷台数は、これ以上落とせないところまで減ってしまった。調達量が減れば、コスト増にもつながりかねない。「小さなボリュームになり、そこからどこに行くのかは、まさに今プランを作っているところ」だという。ただし、「1億台、2億台という目線ではなく、本当にユニークなプレイヤーとして5Gも含めて開発していく」といい、数ではなく、質で勝負していく方針。この戦略は、テレビやカメラなど、他のソニー製品にも共通したものだ。
海外では、構造改革の結果として、欧州ではソニーと販路を統合。撤退してしまったアジアの一部でも、ソニーの販路を使って復活を果たしている。タイ、マレーシア、シンガポール、ベトナムでは、直営店のソニーストアでXperiaの販売を再開しているという。岸田氏は、「ソニーと販売を一体化させ、それぞれの地域に帰っていくことを、1つ1つ丁寧にやっていきたい」と語る。
一方の日本では、10月1日から改正・電気通信事業法が施行され、端末の割引が大きく制限される。これによって、ハイエンドモデルの売れ行きに大きくブレーキがかかるとの見方が強く、ソニーモバイルにとっても正念場といえる。岸田氏は市場の変化には柔軟に対応していく構えだ。
「私が目指すのは、ソニーが好きでXperiaが好きというお客さまを増やしていき、そこに最適な商品をお届けすることです。ミドルレンジだからやらないということは、考えていません。ハイエンドからスタートし、目指すべき旗は立てるべきだと思いますが、同時に(Xperiaを)使うのが楽しい、(Xperiaの)使い勝手が好きというお客さまもいます。その方の好きな商品がたまたまミドルレンジなのであれば、それを出していくべきだと思っています」
ミドルレンジでは、既に楽天モバイルがSIMロックフリーの「Xperia Ace」を導入することを明かしているが、岸田氏の言葉を聞く限り、今後の展開にも期待が持てそうだ。
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