もう1つの特徴が、初のPro IGZO OLEDだ。この名称からも分かるように、Pro IGZO OLEDもIGZO(インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素)によって構成される半導体だが、バックライトが必要な液晶ではなく、自発光の有機ELである点が大きな違いだ。IGZO液晶の省電力性能や応答性の高さはそのままに、有機ELの持つ高いコントラストを取り入れたのがその特徴。IGZO液晶と有機ELの“いい取り”をしたディスプレイともいえる。
表示するアプリやコンテンツに合わせ、リフレッシュレートを1Hzから240Hzの間で可変することで、省電力性能と滑らかさを両立。色彩階調は10億色で、コントラスト比は2000万対1、輝度は2000nitと、映像表示のクオリティーも抜群に高い。指紋センサーをディスプレイ内蔵型にできたのも、有機ELを採用したメリットといえる。
しかも、AQUOS R6には3D超音波式センサーが搭載されており、従来モデルより素早くロックを解除できる。指紋の検出エリアが11倍に広がったことで、2本指での認証にも対応。シャープによると、1本指のロック解除に比べ、セキュリティの強度は20倍高くなるという。ディスプレイ内蔵型の指紋センサーは認証が遅く、検出範囲もピンポイントで使い勝手が悪かったが、AQUOS R6ではこうした課題を解決した格好だ。
シャープがフラグシップモデルのAQUOS Rシリーズを大胆に刷新した背景には、市場の変化がありそうだ。2019年10月に改正された電気通信事業法で、高額なハイエンドモデルの売れ行きには急ブレーキがかかった。売れ筋はミドルレンジモデルに変わり、シャープ自身もAQUOS senseシリーズを大ヒットさせている一方で、ハイエンドモデルを選ぶには、高いだけの明確な理由が求められるようになった。小林氏も、2019年9月の発表会では「“何となくハイエンド”を選ぶ時代は終わった」と語っている。
ただ、「AQUOS Rシリーズの存在感を復活させなければいけない」(同)というように、フラグシップモデルのインパクトが低下していたのも事実だ。有機ELを採用し、世界最軽量をうたった「AQUOS zero」シリーズの登場で、AQUOS Rシリーズの存在意義が分かりづらくなっていたことも否めない。市場の変化に対応しつつ、シリーズ全体の“顔”に返り咲くためには、既存のAQUOS Rシリーズより、強い売りを立てる必要があったというわけだ。AQUOS R6を見ると、その目的は果たせているように思える。発売が今から楽しみだ。
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