IntelがCoreマイクロアーキテクチャを採用するCPUのリリースにあたってとくに強調していたのが「低消費電力」と「消費電力あたりのパフォーマンス」(PPW)の2つだ。効率よく電力を消費して少ない消費電力で最大限のパフォーマンスを発揮する。Intelに限らず、AMDやIBM、サンマイクロシステムズなど、ほかのCPUメーカーもこぞってPPWの高さを主軸においた製品戦略をアピールしているように、これが業界トレンドの1つにもなっている。
消費電力とパフォーマンスの関係は、何十台、何百台ものサーバを限られたスペースで運用しているデータセンターにおいてかなり深刻な問題となっている。とくに「Google」「MSN」「Yahoo」など、世界規模でオンラインサービスを提供するような事業者では、一般企業が有するようなデータセンターをはるかに凌ぐ巨大な「メガデータセンター」を保有しており、その運用コストだけでもかなりの金額になる。Googleが運用しているデータセンターの集計によれば、サーバの初期導入コストも高価だが、運用を続けるごとに電力コストは累積していき、運用開始後3年を経過した段階で初期導入コストを上回り、その後も上昇を続けていくという。それだけに消費電力に対する要求はシビアになる。
IDFでは、CPUの消費電力改善以外に、こうした消費電力を抑える技術を紹介するデモが行われた。現在の一般的なデータセンターでは、電力会社から送電線を通してやってくる電気をいったん無停電電源ユニット(UPS)に溜め込み、そこから電圧を落として各サーバラックに電気を分配し、それから各ラックに収納されたサーバの電源ユニットへ電源が供給される。サーバのマザーボードに電気が供給されるまでの間に「交流」(AC)と「直流」(DC)の変換が3回、トランスによる電圧の変更が2回行われている。もし、こうした作業をそれぞれ1回まで減らし、各ユニット間の電気の運搬をDCの一定電圧で行うことができれば電力ロスの削減につながる、というのが今回IDFで提案されたアイデアだ。
紹介されたデモでは、通常のACによる電気の運搬システムでは3800ワットほどあった消費電力が、DCによる新しいシステムでは3300ワット程度まで落ちて14%ほどの電力削減を実現している。この技術を100万ワットあたりの運用可能なサーバ数で換算すると、台数にして約600台の差、60%ほどの運用効率向上につながるという。
今回はデータセンター向けのソリューションだったが、CPU以外の電力消費効率を上げてシステム全体の消費電力削減を目指すという方向性はデスクトップPCやノートPCなどでもみられる。例えば、ノートPCでは画面描画などが発生しないアイドル状態のときにリフレッシュ動作を最小限にして電力消費を押さえ込んだり、電力消費の大きいHDDの代わりフラッシュメモリを利用するなど、さまざまな試みが行われている。
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