インタビュー
» 2007年06月13日 15時00分 UPDATE

マニアからSNSユーザーまで:モバイルPCをもっと身近な存在に――富士通「FMV-BIBLO LOOX U」誕生秘話 (1/2)

個人向けモバイルPCとして定評あるFMV-BIBLO LOOXシリーズに、コンバーチブル型PCで世界最小をうたう「LOOX U」が追加された。小型ボディに込めた富士通の意志とは?

[前橋豪,ITmedia]

 富士通が6月12日に発表した「FMV-BIBLO LOOX U50WN」は、FMV-BIBLO LOOXシリーズで最小最軽量のコンバーチブル型PCだ。IDF 2007 Beijingでインテルが発表したUMPC(Ultra-Mobile PC)向けプラットフォーム「Intel Ultra Mobile Platform 2007」に対応した国内初のモバイルPCとして、6月16日より同社直販のWEB MARTで発売される。

 製品概要は既報(ニュース記事はこちら、分解記事はこちら、フォトレビューはこちら)の通りだが、今回はどのように超小型のLOOXが誕生したのかを開発に携わった富士通のパーソナルビジネス本部 ソリューション開発統括部 PC/ユビキタス企画グループ プロジェクト部長 日野正康氏に聞いた。

製品コンセプトは“2台目のPC”

tm0706lui01.jpg 富士通 パーソナルビジネス本部 ソリューション開発統括部 PC/ユビキタス企画グループ プロジェクト部長 日野正康氏

――企業向けモデルの発表から1カ月待ちましたが、ついにFMV-BIBLO LOOXシリーズ初のUMPCとなる「LOOX U」が登場しました。はじめに製品コンセプトを教えてください。

日野氏 富士通はもともとユビキタス社会のためのソリューションと端末を提供することにフォーカスした事業展開を行っており、今回の製品もその一環です。製品コンセプトは“2台目のPC”になります。

 まずはLOOX Uの元となった企業向けのモデル(FMV-U8240)から説明をしますが、とくにビジネスでは現場での利用を考慮しました。現場と言っても、外回りや工場内といったケースに限らず、デスクワークの方が机以外の場所で使うようなケースも想定すると、小型軽量な2台目のPCが必要だと分かり、開発に至ったわけです。

 一方、LOOX Uとして見た場合は2つの意図があります。1つはPCをもっとお手軽に使っていただきたいということです。家の中でもPCを使うためにPCのある場所に行って電源を入れるのは手間がかかるので、手軽にサッと取り出してどこでも使いたいのではないかと考えました。

 もう1つは外出先で積極的にインターネットを活用してほしいということです。無線LANはもちろん、CFカードスロットに別途通信カードを接続していただければ、どこでもインターネットに接続できます。外出先でストリーミングの動画を見ていただいてもいいですし、しっかりしたキーボードも搭載しているので、いろいろな場面で使っていただきたいですね。

tm0706lui02.jpgtm0706lui03.jpg 個人向けの「FMV-BIBLO LOOX U50WN」(写真=左)と企業向けの「FMV-U8240」(写真=右)。直販のカスタマイズメニューが一部異なるが、共通のボディを採用している

――Intel Ultra Mobile Platform 2007を採用していますが、このプラットフォームを使うことを最初から決めて開発したのでしょうか?

日野氏 実際に企画を始めたのは2006年の初頭ですが、それ以前から我々はユビキタスのデバイスをPCで実現するために、必要なものをいろいろと探し続けてきました。どのメーカーから部品を調達するかはタイミングなどで変わってくるので、2005年の段階では採用するプラットフォームを想定していたわけではありまえん。

 ただ今回は、我々がこうした取り組みをしているときに、インテルさんがUMPC用の新しいプラットフォーム(Intel Ultra Mobile Platform 2007)を開発していると知り、かなり早い段階から協業し、プラットフォームの立ち上げに製品投入が間に合うように開発を進めてきました。インテルさんもUMPC用のプラットフォームを立ち上げるのは初めてなので、UMPCとはどういうものなのかを互いに考え、我々のお客様から寄せられた要望も反映しながら作っていきました。

――富士通のノートPCでは最小最軽量の製品となりましたが、開発時に目標とするサイズはありましたか?

日野氏 具体的な目標値などは申し上げられませんが、インテルさんと話をする前から“ポケットに入る大きさのモバイルPC”を目指していました。当時はWindows Mobile搭載の小型端末が世間で注目を集めていたこともあり、こうした製品をPCのアーキテクチャで実現できないかと試行錯誤を重ねました。

 2006年からは製品と同程度のサイズでかなりの数のモックアップを作り、小型化と軽量化を検討してきました。通常のノートPCのようにキーボードを使えて、両手で持った状態では親指でもキーボードを使える、それにタブレット機能を加えるとなると、ボディの横幅は短いなりに大体決まってきます。あとは、その状態でどこまで薄く、軽くできるかにチャレンジしました。

tm0706lui04.jpg 液晶ディスプレイを反転させることでタブレットPCとしても使えるコンバーチブル型のボディを採用

――展示会などで見る他社のUMPCは、スライド式キーボード搭載の製品やキーボード非搭載の製品が目立ったように思えます。あえてボディサイズで不利になりがちなコンバーチブル型を選択したのはなぜでしょうか?

日野氏 コンバーチブル型の採用は最初から決めていたわけではありません。いろいろなモックアップを作りながら、一体どのような形状が使いやすいのかを検討した結果、タブレットPCに行き着きました。

 ボディの形状については、まず第1に“PCでなければいけない”という思いが強くありました。すでにWindows Mobile搭載の小型端末は市場に出ていますが、フルのWindowsを動かすUMPCとなると、価格もそこまで安くはできず、使い勝手もPCと同じものが求められます。そういう意味でも、やはりノートPCの形状でなければ、本来のPCとしての使い方はできないだろうと考えて、ノートPCに見えるデザインにしました。

 さらに、通常座ったままキーボードを使うことに加えて、立った状態で使うことを考えると、タブレットが最適な形状になります。そもそも、富士通は従来からタブレットPCに非常に力を入れており、海外ではアメリカなどの市場で好調です。タブレットPCに対するノウハウがあったのは、製品開発のうえで大きな強みとなりました。

tm0706lui05.jpg キーボードは本体を握ったまま親指で入力できるほか、通常のノートPCのようにデスクに置いて両手で入力することも可能だ

――コンバーチブル型のボディだけでなく、このサイズのUMPCにしては、通常のノートPCにかなり近い形のキーボードを搭載しているのが珍しいですね。

日野氏 繰り返すようですが、キー入力をきちんとできるようにしなければ、PCとしてのメリットが生きません。長文のメールを書いたり、SNSやネットショッピングでIDなどの情報を入力するのにもキーボードは重要なので、最初からしっかり作ろうと意識しました。Enterキーなどを小さくし、Fnキーとの組み合わせ(FnとBack Spaceの組み合わせでDeleteになるなど)も活用することで、キー数を56キーにまとめつつ14ミリのキーピッチが得られるように設計しています。

 また、キーボードにはかなの刻印が入っていませんが、英語配列というわけではありません。ほとんどのユーザーはローマ字入力ですし、ここまでキーボードが小さいと、かなの刻印が見にくくなるので省きました。キーボードを上方から照らすライトに関しては、他社のモバイルPCでもキーボードにいろいろと工夫を凝らしているので、独自の工夫として後から追加することにしたものです。

 そのほか、使いやすさへのこだわりとして、左側面の音量ボリュームやヒンジ部分近くのスクロールボタンの実装などは最初から決まっていました。アプリケーションやランチャソフトを起動するワンタッチボタンやローテーションボタン、ライト点灯ボタンなども用意しています。液晶ディスプレイを反転させてタブレットPCとして使う場合に、キーボードがなくても、ある程度使えるようになっています。



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