コラム
» 2011年07月08日 10時00分 UPDATE

単に速いだけでない、「WiMAX 2」に期待すること (1/2)

UQが新世代規格「WiMAX 2」の公開フィールドテストを実施。ここで分かった効果ととともに、ワールドワイド事情も含めたWiMAX 2のエコシステムとトラフィックオフロードの目的を本田雅一氏が解説する。

[本田雅一,ITmedia]

オフィスビル街でのフィールドテスト 「4x4 MIMOの効果」が興味深い

photo UQコミュニケーションズの野坂章雄社長

 本誌でも伝えられたように、WiMAXの次世代規格「WiMAX 2」の公開通信実験が、東京・大手町のKDDIホールで行われた。今回はバスで移動しながらとなる20MHz幅でのワイヤレス通信も行い、最大で実行転送速度が150Mbpsを超える、まさにワイヤレスブロードバンドと言うにふさわしい高速通信の世界が目の前で展開された。

 もちろん、単に高速通信が可能であるという技術面での実証公開実験という意味では、2010年10月に行われたCEATEC JAPAN 2010において、有線の中に40MHz幅のWiMAX 2信号を通した最大330Mbpsの試験を見せている。新しい規格なのだから高速で当たり前、という思う人もいるだろう。しかし、実環境でのワイヤレス通信と有線環境でのシミュレーションでは意味が違う。

 ポイントは3つある。実際のオフィス街において、静止状態で150Mbpsに達する通信速度が実現できていること。4×4 MIMOの効果は明らかで、特にビル群の中において通信速度確保の大きな助けになることが実証されたこと。そして、半径300メートル程のセルサイズ(都心におけるWiMAXのセルサイズと同じ)で基地局を打つことで、都心のビル街で100Mbps以上の速度がどこでも利用できること。

 それぞれについて少し掘り下げてみたい。


photophotophoto フィールドテストに用いられたWiMAX 2搭載バスとシステム構成。実スループット値を示しながらオフィス街を移動した

 まず速度だが、今回の実験用20MHz帯域と4×4 MIMOの組み合わせでは、WiMAX 2の理論最大速度は下り165Mbpsとなる。これに対して150Mbpsに達する速度を実現できたのだから、間違いなく成功と言えるだろう。

 KDDI大手町ビル23階に設置された基地局・屋上のアンテナに対して、直下の場所で静止時に通信した速度とはいえ、高層ビルが立ち並ぶ中で理論値に近い速度が出ていた。バスが移動し始めると電波に揺らぎが加わるため速度は落ちるが、それでも90M〜100Mbps程度は維持し続けた。

photo 都市部におけるMIMO効果について

 さらに興味深いのは4x4 MIMOの効果だ。MIMOは複数のアンテナを用い、反射して入ってくる電波を個別に捉えることで通信の品質を向上させる技術。実際に実証試験を始める前までは、WiMAX 2の4×4(規格上は8×8の構成もある)という構成の実効性に疑問の声も出ていた。ところが、東京・大手町というオフィスビル街の中ではビルに反射した反射波が多数得られるため、移動しながらでも100Mbps程度の速度を維持できていた。

 と、いかにもMIMOがうまく働いたと書いているのは、その後、バスが皇居周囲の内堀通りに差しかかると、通信速度が半分程度に落ち込んでしまったからだ。内堀通りは片面が皇居となり、そこには電波を反射するものがない。このため、捕まえられる電波の経路が減り、通信速度が落ちたというわけだ。

 ところが、ふたたび交差点に差し掛かりビル群の中に入ろうと30度ほどバスが転回すると、たちまち通信速度が向上し、あっという間に100Mbpsにまで達した。こちらは新たな反射波を捕まえて急速に通信環境が改善したためだ。

 UQコミュニケーションズも、もちろんMIMOの効果に関して疑ってはいなかったものの、ここまではっきり、数値として明確に結果が出るとは、実際にフィールドテストをするまで分からなかったと話す。言いかえれば、2013年度早期を目指すWiMAX 2のサービス開始に先立ち、今をスタート地点として基地局敷設の計画を錬ることができるとも言える。

 さて、UQコミュニケーションズの野坂章雄社長によると、WiMAX 2の基地局は従来のWiMAXと同様の展開を行う予定だそうだ。すなわち、WiMAXの基地局に重ねてWiMAX 2の基地局を配置していくことになる。

 基地局の間隔が300メートルより小さくなると、互いの干渉が大きくなり、通信速度や安定性の低下につながるので、現在の基地局密度(基地局間の距離は最低でも300メートル)そのままとなる可能性が高い。WiMAXとWiMAX 2の周波数割り当ては隣接した領域となるため、電波の浸透性なども含めて互換性が高く、同じ基地局設置場所に重ねてWiMAX 2基地局を設置し、エリア展開が可能となる。

 この場合、野坂社長が言うようにWiMAX 2対応機器はWiMAX 2に、WiMAX対応機器はWiMAXに接続することでWiMAXのオフロード、すなわちトラフィック負荷の軽減も実現できる。おそらくWiMAX 2基地局の配置は、始まってしまえばかなり速いスピードで進むに違いない。半面、その部分での問題はないが、WiMAX 2基地局の密度が高まるまではWiMAX 2基地局の間にWiMAX基地局を挟むケースも出てくるため、WiMAX 2対応機器によるWiMAX 2接続とWiMAX接続をシームレスに切り替えるハンドオーバー処理に問題が出る可能性はあるだろう。

 WiMAX 2とWiMAXは完全な後方互換はあるが異なる2つのネットワークであり、ハンドオーバー時──IPv4の場合はIPアドレスなども切り替わる。当然、ネットワーク接続のセッションはいったん切れてしまうことになる。両ネットワークはいずれもIPv6に対応しているので、その場合はもちろんIPアドレスの問題はない。ただし、現実問題として2011年7月現在、IPv6の普及がどこまで進むかはまだ不透明だ。

 もっとも、同様の問題はWiMAXと3G、あるいはLTEと3Gの間にもある。おそらくアプリケーション側がアクセス手順を工夫することで、同じデバイスが異なるネットワーク間をまたがって通信を継続する(実際には再要求を別IPアドレスから行う? など)はできるようになるだろう。


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