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» 2011年12月20日 11時30分 UPDATE

また1歩、電脳コイルの世界に:シースルーモバイルビューアー「MOVERIO」でサイバーな夢を見る (1/2)

エプソンの「MOVERIO BT-100」は、現実の視界に映像が浮かび上がるシースルー型ヘッドマウントディスプレイだ。「このおもちゃ面白いな。もらっておくわ」などとつぶやかずにはいられない。

[瓜生聖(撮影:矢野渉),ITmedia]

エプソンが世に問うもう1つのヘッドマウントディスプレイ

og_moberio_001.jpg MOVERIO BT-100

 エプソンが11月25日に発売したシースルー型ヘッドマウントディスプレイ「MOVERIO BT-100」(以下、MOVERIO)。その2週間前に発売されたソニー製HMD「HMZ-T1」と比較されがちだが、この2台はヘッドマウントディスプレイの性能やスペック以前に、まったく異なるコンセプトを持った製品だ。

 HMZ-T1が仮想画面サイズ750インチ、仮想視聴距離20メートル、視野角45度と、没入感を重視し、映画館を想定した仕様であるのに対し、MOVERIOは仮想画面サイズ320インチ、仮想視聴距離20メートル、視野角23度と、テレビを想定した仕様に近い(仮想視聴距離2.5メートルの場合で仮想画面サイズ40インチ相当となる)。さらに外界光と映像光を瞳に導くハーフミラー層を置くことで、半透明の画面が空間上に浮かび上がるユニークなHMDである。まさに“あの”作品たちの世界が手の届くところまで来た、という印象だ。

 また、HMZ-T1があくまで映像・音声出力装置であるのに対し、MOVERIOはコントローラ部にメディアプレーヤーを内蔵したスタンドアローン型モバイルビューアーだ。OSにはAndroid 2.2を採用し、より「いじれる」ガジェットとなっている。

og_moberio_002.jpgog_moberio_003.jpgog_moberio_004.jpg 「あの」作品たちの一例。HMDとARの代表作といえば電脳コイル。現実世界の情報強化というアプローチはシースルー型ならでは(写真=左)。境界線上のホライゾンの1シーン。もはや空間上に浮かび上がるウインドウは既定路線の未来?(画面=中央)。そしてMOVERIOを装着した外観(写真=右)

しっかりしたホールド感

og_moberio_005.jpg ヘッドセット部と専用コントローラーの1セットで利用する

 MOVERIOのヘッドセット部は240グラム(ケーブル除く)。重量部が側面に配置され、あまり重量が一点に集中しないようになっている。テンプルの部分にクッションがついており、調整可能なスプリングによって横から頭部を挟み込むように固定する。上下方向にはフロント部分を鼻に乗せて固定するが、いくら軽量化されているとはいえ、メガネに比べると相当重い。

 サイズ違いの鼻パッドが付属しているので、自分のサイズにあったものを選択する。サイズがあっていないと鼻に負担がかかるだけでなく、画面も上または下が見切れてしまうので注意してほしい。また、メガネを使っている人は鼻パッドを取り外し、サイド部に装着したメガネ用フックをメガネのフレームに乗せることでメガネをかけたまま利用することができる。ただし、ヘッドセットを超える147ミリ以上の幅のメガネには装着できない。

 実際の映像は明るいところでは透過性が高くなるため、窓ガラスに映ったテレビ画面を観るような感じになる。見にくいときにはコントローラのBrightnessキーで輝度を上げる、黒っぽい場所に視線を向ける、シェードを付けるなど外界光と映像の明るさの差を大きくしてやるとよい。ただ、シェードを付けない場合は逆に自分の瞳も回りから丸見えになり、文字通り「ほかの人には見えない何かを見ている顔」をさらすことになるので、公共の場では気をつけてもらいたい。

og_moberio_006.jpgog_moberio_007.jpgog_moberio_008.jpg メガネ着用者は鼻パッドを取り外し、サイドにメガネフックをつけて使う。前面のシェードを取り外せば透過率が上がるが、日中の屋外では映像が見づらくなる

 3Dコンテンツはサイドバイサイド方式の映像データに対応。2D/3Dボタンで切り替えることが可能だ。実際の3次元の空間上に浮かび上がる3D映像の不思議な浮遊感はなんとも表現しづらいが、臨場感というよりは、想像のもう1つ「先」にある感覚といったところだ。

 音声はサイド部にイヤフォンが搭載されているが、コントローラ部に音声出力端子も付いている。サイド部と干渉するためインナー型に限られるが、お気に入りのイヤフォンを利用できる。

独自のUIを備えたコントローラ部

og_moberio_009.jpg Android 2.2を採用したコントローラ

 コントローラは上半分にトラックパッド、その下にHOME、MENU、BACKの3つのボタン、方向キーと決定キー、それにBrightness、2D/3Dキーが並ぶ。側面にはボリュームとキーロックスイッチがある。通常は方向キーで選択項目を切り替え、決定キーで実行するが、トラックパッドに触れるとマウスカーソルを操作できる。ドラッグの場合は長押ししてマウスカーソルがやや大きく表示されたところでスライドさせる。この操作はスクリーンロックの解除、USB接続時にSDカードをマウントする場合などに行うが、やや慣れが必要だ。

 Android端末というとタッチパネル液晶を搭載したものが多く、フリック操作が一般的だが、MOVERIOのトラックパッドは「タッチパネル液晶の代わり」ではなく、あくまで「マウスカーソルのコントローラ」であることに注意したい。フリック操作をしても単にマウスカーソルが少しだけ移動するに過ぎず、操作性がよいとは言いがたい。自然と方向キーでの操作を多用することになるが、それだけでは操作できないところもある。

og_moberio_010.jpgog_moberio_011.jpgog_moberio_012.jpgog_moberio_013.jpg 本体上面/下面/左側面/右側面

og_moberio_014.jpg デモメニュー画面。3Dと書かれているコンテンツはサイドバイサイド方式の動画

 文字入力はさらに絶望的だ。ソフトウェアキーボードの上のマウスカーソルをトラックパッドで操作してタップ、それを繰り返すのはかなりの苦行だ。Webブラウザは搭載されているものの、文字入力は実用的ではなく、検索ワードを打ち込むのも一苦労。また、Bluetoothも搭載していないため、キーボードを利用することもできない。

 対応動画/音声フォーマットはMPEG4、H.264、AAC、MP3だが、初期状態ではこれらのフォーマットでファイルを用意し、microSDHCカードに保存してMOVERIOに挿入することになる。標準ではSEViewerというファイルマネージャーが搭載されているが、そこで映像ファイルを選択してもファイルオペレーションのみで再生はできない。映像ファイルを再生するには「ギャラリー」を使用する。このあたりもう少しすっきりさせられなかったのだろうかとも思う。

og_moberio_015.jpgog_moberio_016.jpgog_moberio_017.jpg メニュー画面。トラックパッドに触れるとカーソルが出現する。なお、決定ボタンはカーソルの右クリックとしては認識されない(画面=左)。USB接続時、マウントを切り替えるには上部ステータス表示領域にカーソルを合わせ、長押しして下にドラッグ。ちょっとやりづらい(画面=中央)。文字入力中の画面。トラックパッドでカーソルをボタンにあわせ、ぶれないようにタップする(画面=右)

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