国家が“ゲーム”に参加し始めた――現実化するサイバー戦争Kasperskyセキュリティセミナー(1)(1/2 ページ)

» 2012年04月13日 16時07分 公開
[後藤治,ITmedia]

サイバー犯罪の影響は年間1000億ドル〜1兆ドル

Kasperskyのユージン・カスペルスキーCEO

 Kasperskyは4月12日、最新のセキュリティ脅威を解説するメディア向けセミナーを開催した。サイバー犯罪の変化や同社の企業セキュリティに対する取り組み、今後の技術的な展望まで、複数のセッションで構成された多岐にわたる内容だが、いくつか気になる内容をピックアップしていこう。

 冒頭に登壇したKaspersky会長兼最高経営責任者であるユージン・カスペルスキー氏(Eugene Kaspersky)は、「サイバー戦争の時代に脅威から世界を救う」(Saving the world from Threats in the Age of Cyber Warfare)と題したプレゼンテーションの中で、ますます深刻化するオンライン犯罪や、国家が関与する“サイバー戦争”と言うべき状況に触れ、いま現実に起きているさまざま事例を紹介した。

 現代人の生活は把握できないほど多くのコンピューターに依存している。普段何気なく利用している公共交通機関は情報システムで管理され、ゲームやテレビなどの娯楽はネットワークに接続し、情報(知識)を得るために検索エンジンやWikipediaを利用するのも一般的だ。TwitterやFacebookに代表されるSNSが社会生活の一部さえ成している。「アマゾンの奥地に住む人たちでなければ、コンピューターと無縁でいることは困難だろう」とカスペルスキー氏。こうした社会全体がITインフラに依存し、あらゆるものがオンライン上にある“電子社会”では、「個人だけでなく、企業、政府、産業すべてが攻撃の対象になりうる」と同氏は指摘する。

 その最も大きな動機は金銭だ。カスペルスキー氏は「サイバー犯罪が非常に儲かるのは事実だ」と述べ、モバイル向けマルウェアを開発していた犯罪者集団が1日平均して1000〜5000ドル(多い人で1万〜2万5000ドル)ほど詐取していたというリポートを紹介。また、Kaspersky Labsが実施した調査によると、サイバー犯罪が世界経済に与える影響は年間1000億ドル規模にのぼるという。

 これは犯罪の手段にマルウェアが関わるものだけの数字で、DDoSやクレジットカードの盗難なども含めた他社の被害調査では、1兆ドルという試算も出ている。カスペルスキー氏は「サイバー犯罪による損失は1000億ドルから1兆ドルまで幅がある。東日本大震災の被害額は3000億ドルと言われているが、サイバー犯罪の損失はその3倍になる可能性がある」と語り、インターネットアクセスとPC、そして知識さえあれば手軽に巨額な金銭を入手できるサイバー犯罪が今後ますます増えていくだろうと予測する。

サイバー犯罪はグローバルかつ組織的に行われてる。Kaspersky Labsの調査によると、サイバー犯罪が世界経済に与える影響は年間1000億ドルにのぼる

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