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» 2012年07月25日 16時00分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:本体メーカーとサードパーティーの「持ちつ持たれつ」 (1/2)

PCやスマートフォンの本体メーカーと周辺機器やアクセサリのサードパーティー。二人三脚で事業を展開する彼らの関係に、ちょっとした変化が起きている。

[牧ノブユキ,ITmedia]

彼らの関係に生じ始めた「ある」変化とは

 PCにせよスマートフォンにせよ、機器本体で利用できる周辺機器やアクセサリを提供する“サードパーティー”と呼ばれるメーカーが存在する。彼らが製造販売する周辺機器やアクセサリは、販売店にとっても売上を構成する大事な要素の1つだ。

 こうしたサードパーティーが周辺機器やアクセサリを作って販売することに対して、本体メーカーからクレームが付くことはないのだろうか? と疑問を持つユーザーも多いだろう。彼らと本体メーカーの間には資本関係もないわけで、いわば勝手に関連製品を作り、勝手に利益を得ている形になるからだ。“コバンザメ”とはいわないが、なんらかの上納金を払っているわけでもない。部外者からみると、芸能人の人気にあやかって勝手にグッズを作って商売しているのと同じようにみえても不思議ではない。

 しかし、ロゴや意匠の無断使用さえなければ、こうしたサードパーティーが本体メーカーから制裁を受けることは、まずない。本体の破損につながるような機器だったり(プリンタの互換カートリッジがこれにあたる)、純正品と紛らわしいため本体メーカーに問い合わせが殺到してサポート窓口をふさいでしまったりすると問題になるが、こうしたケースはまれだ。基本的には無問題の場合がほとんどだ。

 そればかりか、こうしたサードパーティーの製品は、本体の販促につながるとして、本体メーカーが歓迎することも多い。そもそも「売れない」とみなされた本体のために周辺機器やアクセサリを作ることもないわけで、専用アクセサリの存在は、Facebookの「いいね!」のようなものといえるかもしれない。サードパーティーの専用アクセサリが、最終的に売れ残ってしまったとしても、本体メーカーにとっては何のダメージもない。それゆえ、本体メーカーとしては、“どんどん作ってください、一緒に売り場に並べましょう”といった前向きな姿勢であることが大半だ。

 こうした事情から、サードパーティー各社と折衝するために担当者を置き、積極的に情報を提供したりロゴなどが使えるようにサポートしたりする本体メーカーは少なくない。もちろん、そこはビジネスの話なので、サードパーティーA社には積極的に情報を提供するが、サードパーティーB社には聞かれるまで教えないといったように、差をつける場合もあるが、本体メーカーがサードパーティーを支援する構図というのは、この業界では一般的といっていい。

 この背景には、本体メーカーとサードパーティーの間に、量販店とメーカーのような明らかな力関係の上下がないことも関係している。部外者には「量販店は売るものがなければ成り立たないからメーカーに対して平身低頭なのではないか」と思われているが、実際にはまったく逆であるのはよく知られているところで、メーカーに対してヘルパーなどの販売要員の応援を要請して労働局から是正指導を受けるケースは後を絶たない。

 その点、本体メーカーもサードパーティーも、ともに量販店に製品を納入する「同志」にあたる。まったく同じカテゴリーで競争しているメーカー同士ならいざ知らず、そうでなければ基本的に「味方」だ。そうした事情から、本体メーカーとサードパーティーの商談は、一種和やかな空気が漂っていることが多い。

本体メーカーが周辺機器やアクセサリに進出すると

 しかし、この本体メーカーとサードパーティーの関係に微妙な変化が生じることもある。その典型的なタイミングとなるのが、本体メーカーが、周辺機器やアクセサリの販売を始める時期だ。

 いまや、どの会社も利益を出すのに必死だ。1つの商品を大量に生産して一気に売るのではなく、バリエーションを増やして細かなニーズを拾っていかなければ、必要な利益を確保するのが難しくなりつつある。スペック違いはもちろん、常識的に考えても少量しか売れないようなカラーバリエーションまで用意して売場に並べないと、売場で面展開ができず、結果としてユーザーの目を引き付けることができない。一見すると非効率な多品種少量であっても、利益確保のためにはやむを得ない。

 こうした中、本体のバリエーション展開を押し広げるのと並行して、周辺機器やアクセサリを自前で手掛けることで、確実に利益を確保する本体メーカーが少なくない。もともと、多くの本体メーカーでは、純正アクセサリをカタログなどに載せてはいるものの、その多くはサードパーティー各社のアクセサリに比べて割高で、顧客から型番指定で注文がなければ、積極的に販売していなかった。

 しかし、この不況下において、本体に比べて利益率が高く、また、本体の販売台数からある程度の需要が見込める周辺機器やアクセサリというのは、売上の底上げをしていく上で格好の商材になる。本体メーカーは、こんな利益率が高いものを、自分たちと(財務上)関係のないサードパーティーに売らせて、利益をもっていかれるのはもったいないと考えるようになった。さらに、製品の仕様について細かい情報を得るにはサードパーティー各社に比べて圧倒的に有利なわけで(自社で作っているのだから当然だ)、取り組むべき優先度は高いと見なされる。

 自社で参入するのではなく、これまでに付き合いのあるサードパーティーからライセンス料を徴収するという方法もある。しかし、こうした方法はサードパーティーの反発を招く可能性が高いし、彼らの参入を困難にして周辺機器やアクセサリのモデル数が減少すれば、本体の売上に悪い影響を与えかねない。それなら、いっそ自分たちが、サードパーティーとともに売場に商品を並べる立場で参入してしまおうというわけだ。

 とはいえ、サードパーティーにとってこうした動きは大きな脅威になる。本体と同じ流通ルートを使えば、本体を販売する店舗に自社アクセサリを流通することもたやすい。サードパーティー側に製品作りのノウハウや大量生産によるコストの安さ、開発力、独自の量販店ルートがあるにせよ、本体とセットで“純正”周辺機器が流通しては、一定の売上を横取りされることが目に見えている。サードパーティーのやっていることを考えると、本体メーカーが「横取り」という表現は正確ではないかもしれないが、これまで周辺機器やアクセサリを売ってきたサードパーティーからすると、まさに死活問題だ。

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