不人気でも“カラバリ”が増えていくミステリー牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2013年04月23日 09時00分 公開
[牧ノブユキ,ITmedia]

「新色追加」は好調の証? 不調の証?

 発売済みで店頭に並んでいる製品に、しばらくたってからカラーバリエーションが追加投入されることがある。ホワイトだけだったモデルに1カ月たってブラックが追加されたり、あるいはホワイトとブラックの2色展開だったところに半年たってレッドが追加されて計3色になるといったパターンだ。

 こうしたカラーバリエーションの追加投入は、はたから見ていると「おぉ、売れているんだな」「売上が好調だから新色を追加したんだな」と思ってしまいがちだが、必ずしもそうではない場合がある。そればかりか、製品が売れていないことが新色投入のきっかけになることすらある。

 今回はこうした「後日のカラバリ投入は吉か凶か」についてのお話。

本体をモデルチェンジしないのは製品が安定している証

 すでに市場に認知されている製品のカラーバリエーション追加というのは、確かにもとの製品が好評なゆえである場合は多い。きっかけはユーザーの声だったり、ユーザーの声を聞いた販売店からの声だったりといろいろだが、その多くは発売済みの製品に十分な魅力があってこそのものだ。まったく購買意欲が沸かない製品であるにもかかわらず、新色の要望だけが出てくることは少々考えにくいからだ。

 また、これに応じるメーカーの側としても、もし製品そのものに問題があるならば、あえてカラーバリエーションを追加投入せずに見送ったり、少なくとも次回のモデルチェンジまで持ち越すというのが普通の考え方だろう。つまり本体をモデルチェンジせずにバリエーションを増やすという判断自体、現行製品に大きな欠陥がなく、製品として最低限のレベルには達していると見ることができるわけだ。こうして投入されたカラーバリエーションは、売り場で面を増やすのに役立ち、売上の底上げに貢献する。

 余談だが、量販店における陳列の基本は「バリエーション製品は横に並べる」ということだ。これが衣料品であれば、色や柄、サイズが異なるバリエーションを同じフックにつって1列に並べることもあるが、ことPC関連製品などではまずない。下手に勘違いさせる陳列だとクレームになりかねないからだ。つまりカラーバリエーションを増やせば、それだけ面が横に広がり、競合他社に対して広い面積を確保でき、ユーザーの目にとまりやすい……という好循環につながっていく。

 もちろん、新発売の時点で大量のカラーバリエーションを投入して面を一気に確保する方法もあるのだが、まだ販売実績がない製品で無理に面を取ろうとすると、バイヤーが守勢に入ってしまい、まずは1〜2種類だけ陳列して売れるかどうか様子を見たい、と言い始める場合がある。その点、すでに販売実績がある製品であれば、カラーバリエーションの追加投入による面の増加は、売上が予測しやすいだけに、量販店のバイヤーを納得させやすいというわけだ。

泣く泣く作らざるを得なくなる「負のカラーバリエーション」

 しかしその一方、こうしたカラーバリエーションの追加投入が、製品が売れていないがゆえの施策である場合も少なくない。言うなれば「負のカラーバリエーション」だ。要因はいくつかある。順に見ていこう。

 まず1つは生産の都合によるものだ。PC関連に限ったことではないが、製品の生産というのは融通が利かない場合が多い。1万個作ってまったく売れず、もうこのままたたき売って終息させたいところなのだが、内部の基板はすでに2万個ぶんを仕入れてしまっており、残り1万個のボディを泣く泣く生産しなくてはいけないというケースがある。

 この場合、まったく同じ製品を追加で1万個作ってしまうと、ただでさえ過剰な在庫がさらに過剰になるので、本体色を変えて1万個製造することにより、別の製品として流通させるわけだ。もし局地的に売れている量販店があれば、先に述べたような事情で店頭の面を増やせるかもしれないし、また製品のカラーが気に食わないとして取り扱いを渋っていたバイヤーがいたとすれば、この新色をきっかけに再度アタックすることも可能になるからだ。

 またこうしたカラーバリエーションは、滞留在庫の返品を要求されている場合に入れ替えの対象としても使える。「前の製品は色がイマイチでしたからねー。今回の新色はいけますよ!」などと根拠のないセールストークをまくし立て、前の製品の返品を黙って受けるのではなく、同額のカラーバリエーションと入れ替えることにより、マイナスになるはずだった売上をプラスマイナスゼロで食い止めるわけである。一見すると返品を先送りしただけのように見えるが、時間稼ぎのテクニックとしては重要だったりする。少なくとも入れ替え対象の製品があれば、他のメーカーに棚を取られることがないからだ。

 また、カラーバリエーションの追加投入は、改めてニュースとして露出を増やすことにもつながる。いったん発売された製品は、なにか大きなきっかけがなければ、たとえそれがメーカーサイト上のトピックスであれ、ピックアップして大きく取り扱うのは難しい。カラーバリエーションの追加投入はそのきっかけとして最適というわけだ。専門のニュースサイトが新製品として報じてくれれば、もとの製品が再注目され、売れ始めるきっかけになることもある。

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