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» 2013年06月27日 00時00分 UPDATE

本田雅一のクロスオーバーデジタル:Windows 8.1はMicrosoftの課題にどう挑むか (1/2)

Microsoftの開発者会議「BUILD 2013」が始まる。注目はいよいよパブリックプレビュー版が配布となるWindows 8.1だ。このOSアップデートは、Windows 8が抱えるいくつかの課題への回答となる。

[本田雅一,ITmedia]

BUILD 2013でWindows 8.1の姿が公に

tm_1306win81_01.jpg 開発中のWindows 8.1。スタート画面は好きな静止画や動画を壁紙にできるほか、タイルのサイズが増えている

 米国時間の6月26日より、米サンフランシスコのモスコーン・センターにて、Microsoftの開発者向け会議「BUILD 2013」が開催される。開催初日の話題はWindowsの最新版「Windows 8.1」の紹介である。一部の開発者と共有されている情報を基に、いくつかの情報がリークしているWindows 8.1だが、開発意図を沿えて正式な形で紹介されるのは今回が初めてとなる。

 関係者によると、今回のBUILDで紹介された後、Windows 8.1は一般向けに公開されるパブリックプレビューがMicrosoft Storeを通じてオンラインアップデートで配布される予定とのことだ。こうした開発者向けイベントでは光ディスクなどでテスト版が配布され、一般公開は先送りのケースが多いが、今回は誰もがテストに参加できる形にする。日本語版も同時(あるいはほぼ同時)公開の見込みだ。

 Windows 8.1は、Microsoftが抱えるいくつかの課題に対する回答となっている必要がある。昨年にリリースされたWindows 8は、メモリ消費量が少なく動作が軽いことから好んでアップデートする層もあったが、タッチパネルの画面を前提とした、まったく新しいユーザーインタフェースは賛否両論ある中で「否」の意見がとりわけ目立っている。

 スマートフォンやタブレットでおなじみの“タッチパネル画面”を用いたユーザーインタフェースは、画面全体を操作系統のデザインに用いるため、従来のマウスで操作するデスクトップGUIとの相性がよくない。このため、Windows 8ではデスクトップ画面で動作するアプリケーションと、Windows 8世代の全画面動作アプリケーションを別の体系に分離し、その間をスタートメニューに代わるタッチパネルフレンドリーな“スタート画面”に変更。従来ユーザーに対してはキーストローク操作による互換性を取るという大胆な方法を採用した。

 このドラスティックな変換(特に画面遷移やデザインの変化)に対し、Microsoftは新規ユーザーや初心者からの抵抗は少ないというが、大部分を占める既存のコンピュータユーザーからは戸惑いの声が出ているのは致し方ないところだろう。

 Windows 8が「タッチパネル画面をコンピュータ・ユーザーインタフェースに取り入れること」を基本コンセプトとしている以上、従来の画面デザインとの間にあるギャップは本質的に埋めることができない。Windows 8.1の1つの課題は、この本質的な差のある2つの要素を、どうつないでいくのかだ。

Windowsストアアプリをいかに普及させるか

tm_1306win81_02.jpg 開発中のWindows 8.1。2つのアプリを1画面に半分ずつ表示し、同時動作が可能になった

 もう1つの課題も、この新ユーザーインタフェースと関連している。前述したように、Windows 8によるユーザーインタフェースの大変革は、その大半がタッチパネルをPCで活用するために施されたものだ。

 もし、PCアプリケーションのトレンドが全画面操作に向かっているならば、ユーザーが使うアプリケーションも少しずつデスクトップから全画面操作のWindowsストアアプリに変わっていき、“スタートメニュー”ではなく”スタート画面”のほうが馴染みがよくなるはずだった。

 ところが「世の中には10億台のWindows PCが稼働している。Windowsストアアプリが増えるのは時間の問題だ」と、Microsoftは話していたものの、地道な開発者支援プログラムの実施もむなしく、ユーザーがWindows 8を使う時間の大半はデスクトップアプリだ。

 MicrosoftはBUILD 2013で大規模な開発者支援プログラムを用意し、多様なアプリを呼び込むとともに、過去1年と同様に不足している定番アプリの充実に努めるという。BUILD 2013の基調講演では「Windowsストアアプリの数が○○本を達成した」などの数字を公開するはずだが、Microsoft自身、本数だけで問題が解決するとは考えていない。

 例えば新たなクラウドサービスを立ち上げるとき、そのフロントエンドに使うアプリの開発はiOS、Androidのスマートフォン版が最優先。その次に開発されるのは、それぞれのタブレット版ユーザーインタフェースだ。Windowsストアアプリの優先度は、あるいはスマートフォン市場で5%に満たないシェアしかないWindows Phoneよりも低いかもしれない。Windows PCならばWebブラウザ用ユーザーインタフェースでも十分なパフォーマンスが出せることもあり、後回しにされがちだ。

 “すでに世の中にあるアプリのWindowsストアアプリ版”ではなく、“これから生まれてくる新しいサービスのWindowsストアアプリ”が自然に生まれる環境を作ることが課題となる。

 Windowsストアアプリに関連して、Windows 8.1ではWindowsストア自身の改良という、多くのユーザーから望まれている取り組みもなされている。現在のWindowsストアはアプリの分類、検索システムが貧弱で、望みのアプリを探すのが困難だ。

 よくGoogle PlayがApp Storeに比べてアプリ検索が貧弱で使いにくく、アプリのエコシステムが成長するのを阻害していると言われるが、それでもまだWindowsストアよりはマシだ。Windowsストアでの検索結果はノイズが多く、登録アプリ数が増えるほどに目的のアプリに到達しにくくなる。Windows 8.1の改良にはアプリ検索の大幅な改良も含まれるという。

 もう1つは、Microsoft自身が提供しているWindowsストアアプリ、すなわちWindows 8以上専用の全画面アプリの充実だろう。従来の作業性と互換を取るためとはいえ、自社で開発しているOfficeでさえ、まだデスクトップアプリのままだ。コアモジュールを共有しつつ、UIの表層部をデスクトップと全画面で切り替えられるような仕掛けが必要だ。ただし、そうした対策には時間がかかる。

 Microsoftが最短で提供できるのは、Windows 8以上に標準装備されるアプリの充実である。例えば、全画面版のメールについては完成度がまだまだ低い。機能的な面もあるが、各ペインの文字サイズが変更できないうえ、自動設定される文字サイズは画面解像度や液晶サイズによっては小さすぎて見えづらくなる。

 ほんのちょっとしたことだが、最も多くユーザーが接するアプリケーションだけに、メールやカレンダーなど、一連の情報フロントエンドの改良はWindows 8.1に対する改良の中でも最も注目すべきものの1つになるだろう。なお、Windows 8.1を待たずして、Windows 8にもメールの大幅アップデートが近く提供されるとのことだ。

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