―― 基本スペックでは、Haswellこと第4世代CoreのUシリーズを採用したことが目玉になりますが、この新CPUによって内部の設計はどこが変わりましたか?
山田氏 これまでと大きく違うのは、CPUとチップセットの2チップ構成だったものが、1チップに統合され、全体が細長いパッケージになったことです。実装面積は減らせるのですが、製品によって2チップの配置を最適化できた第3世代Core(開発コード名:Ivy Bridge)に比べて、内部の部品レイアウトにおける自由度は減りました。省電力化の進歩については、液晶ディスプレイの質問で答えた通りです。
また、第4世代CoreはTDP(熱設計電力)が下がっており、冷却が簡単になると思うかもしれませんが、実際は放熱設計も意外に苦労しています。
―― 放熱設計の苦労とはどういったものでしょうか?
立神氏 第4世代Coreは1チップ化により熱源が集中しているため、高負荷時はこの1カ所だけが熱くなります。UH90/Lは本体を薄型化しているため、CPUの熱をファンが放熱する前に、ボディ上下のほかの場所に伝わり、外装が発熱してしまう懸念がありました。安易に搭載すると、底面のカバーやキーボードの表面温度が上がりすぎてしまいます。
この対策としては、ファンの吸気を通風口以外の隙間からも行うよう設計したり、密着したメイン基板とキーボードの間に熱を拡散する薄いシートを挟んだり、ギャップを維持するためのスペーサーを設けたりしました。断熱には部品を離し、空気の層を作ることが大切なので、高密度に圧縮した構造のわずかな隙間をうまく使い、エアフローを作っています。空気の流れを作ることで、メモリやHDDの放熱も助けています。
―― CPUクーラー自体に何か工夫はしていますか?
立神氏 強力なツインファンや省スペースな小型ファンも検討しましたが、実装密度が上がっているため、効率的にファンを2つ並べるのは困難ですし、熱源が集中する1チップ構成の第4世代Coreを小型ファンで冷やすのには不安があります。ツインファンや小型ファンは動作音が大きくなるのも問題です。
そこでUH90/Lでは、液晶ディスプレイにタッチパネルを搭載しながら、ボディをより薄く仕上げる必要がある中で、あえて従来と同じサイズのファンを実装し、小細工せず、しっかりした放熱機構を確保するという方向にかじを切りました。冷却効率を考えると、理想は大型のファンを低速で静かに回すことですが、内部スペースは限られるため、全体のバランスの中で最適なサイズにまとめています。
また、ヒートスプレッダ(ヒートパイプの先端に付いたCPUを押さえる銅の板)の固定方法を工夫しました。従来と同じ方法では、ヒートスプレッダのネジを固定する基板上のスタッド部に厚みが出てしまうので、薄型のネジ固定スタッドを新規に起こし、片面実装の基板で省スペースに実装しています。
固定部の高さが低くなったり、接着面積が狭くなることで、ヒートスプレッダのバネの反力を押さえつけながらネジをつけている間に衝撃が加わった場合、はんだが剥がれてしまうのではないか、との懸念があったので、事前に耐衝撃性の解析を何度も行ったうえで採用しました。
―― 第4世代CoreのUシリーズには、いくつかの選択肢がありますが、このCPUと内蔵グラフィックスのグレードを採用した理由を教えてください。
山田氏 UH90/LのCPUはCore i5-4200U(1.60GHz/最大2.6GHz)、内蔵グラフィックスはIntel HD Graphics 4400を採用しています。Core i5-3337U(1.8GHz/最大2.7GHz)とIntel HD Graphics 4000を備えたUH75/K(UH75の現行モデル)に比べて、システム全体では約6%のパフォーマンス向上を果たしました(Sysmark 2012のスコア)。
大幅に省電力化しながら、旧世代を上回る性能も確保できているため、より上位のCPUを選択して、割高な価格になってしまうより、求めやすいレンジのCPUのほうがベターだと判断しました。より高い性能を求める方のため、直販モデルのWU1/Lでは、Core i7-4500U(1.8GHz/最大3.0GHz)も搭載できるようにしています。
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