PC USER Pro

システム担当者不在でもファイルサーバは導入できるか――TurboNASを選ぶこれだけの理由シン・ゼロから始めるQNAP 番外編(1/3 ページ)

» 2013年08月30日 11時00分 公開
[瓜生聖,ITmedia]

ファイルサーバを導入するメリット

 複数人で協力して作業を行う場合、ファイルを共有することによる生産性の向上はあらためて言うまでもない。その「ファイル共有」のために、Windows 7などのクライアントOSを搭載した一般PCではなく、専用のファイルサーバを導入するメリットはなんだろうか。

1、ファイル共有のパフォーマンス向上

 ファイルサーバ未導入の環境でも、Windowsのファイル共有機能などを使ってファイルを共有しているところは多いだろう。誰かが作成・編集したファイルをほかの人が自席PCから閲覧・修正する。あるいは、小さなファイルであればメールなどに添付したり、USBフラッシュメモリなどを介して受け渡すことも難しくない。

 だが、ファイルサイズが大きかったり、多数のファイルに分かれていたり、あるいはフォルダ構成が複雑な場合は、ファイルを圧縮して渡すなどの一手間が面倒になってくる。このほかにも、ファイルのコピーがあちこちにできてしまうために最新版を追うことが難しくなるという問題もある。こうした場合は「オリジナル」のファイルを直接アクセスできるほうが効率がよい。

 その場合、誰かのPCの一部を共有するのは手軽ではあるものの、処理能力の一部を割くことになるためにパフォーマンスの低下を招く。逆にそのPCが重たい処理を実行していたときには共有ファイルを利用する側のアクセス速度も遅くなる。もし、そのPCがハングしたり、再起動しなくてはならない状態になったときの影響も大きい。

 それらのことを考慮すると、ファイル共有を行うPCはファイル共有「だけ」をやる、少なくともクライアントOSのようなデスクトップアプリケーションは実行させないことが求められる。すなわち、「ファイルサーバとなる専用マシンを運用する」ことが望ましい。

2、耐障害性の向上

 ディスクの大容量化に伴い、HDD障害によるダメージは深刻化している。さらに高密度化によってマージンは減少傾向にあり、ユーザー側での対策の重要性も増している。これらに対する対策は主に2つある。

 1つは冗長化による耐障害性の向上だ。

 冗長化とはデータなり、機器なりを必要最小限よりも多く(ダブらせて)持ち、何か障害が発生しても処理が継続できるようにする仕組みのことだ。コンピュータの世界ではミクロな部分からマクロな部分まで多くの冗長化がとられているが、HDDの場合はRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)と呼ばれる技術が利用可能だ。

 RAIDはその方式、構成によってRAID 1/5/6/10などのレベルがあり、最小構成台数、許容可能な同時障害台数が異なる。また、その実装方法もマザーボードの機能やRAIDコントローラボードを使って管理する方法(ハードウェアRAID)と、OSやデバイスドライバの機能を使って管理する方法(ソフトウェアRAID)がある。

 どのようなRAID構成が利用可能かは製品の仕様に依存するが、Windows 7などクライアントOSでのソフトウェアRAIDではミラーボリュームという名称でRAID 1のみ利用できる(ストライプボリュームという名称でRAID0も利用可能だが、RAID0は高速化のための仕組みであり、冗長化はなされない)。

RAID 1はミラーリングとも呼ばれる。同じ内容を2台に書き込むので1台クラッシュしてもあとの1台だけでデータを保持できる(画面=左)。RAID 5は3台以上で構成し、2台分のデータでもう1台のデータを復元する。そのため1台クラッシュしてもデータが保持できる(画面=中央)。RAID 6はRAID 5の仕組みを2つ組み合わせたようなもので、4台以上で構成する。2台同時にクラッシュしても大丈夫(画面=右)

 ソフトウェアRAIDだと追加費用を抑えることができるものの、OSの仕組みである以上、OSを起動するディスクとしては利用できない。起動ディスクはそのままシングルボリュームとし、データ用としてRAID 1ボリュームを追加することになるため、最低でも都合3台のHDD(もしくはSSD)を搭載する必要がある。

 電源やマザーボードを個別に選択できる自作PCならばともかく、メーカーPCではベイが足りなかったり、電源容量に不安があることも多い。また、重要なデータがあるPCすべてに対してHDDを追加するのはコスト的にも作業的にも負担が大きい。

 RAID構成にハードウェアで対応したファイルサーバを導入し、そこに重要なファイルを保存するようにすれば負担は大幅に減る。

WindowsではRAID 1で構成されたボリュームを「ミラーボリューム」と表す。メニューにはRAID 5ボリュームも見えているがサポートされていない(画面=左)。1台あたりのディスク容量が大きくなったこともあり、空き容量も大きくなる。集約させれば効率は向上する(画面=右)

3、バックアップ

 HDD障害に対するもう1つの対策がバックアップによるデータ保全だ。

 バックアップは定期的にデータを別のメディアにコピーし、HDDの障害や誤操作によるデータ喪失を回避するものだが、誤操作はともかく、HDDの障害に備えるにはそれぞれのPC用に外付けなどの別のHDDを用意する必要がある。

 また、ユーザー各自にバックアップ作業を行ってもらう場合は、作業実施を徹底することが難しい。バックアップ用ソフトウェアを購入する場合は必要ライセンス数が多くコスト高になることもある。

 重要データをファイルサーバに集約することで、バックアップ運用も集中管理することができる。

4、ディスク容量の効率的な利用

 10人のユーザーが使っているPCにそれぞれ追加で200Gバイトのデータディスク容量を与えるとしよう。その場合に必要な総ハードディスク容量はどれくらいになるだろうか。

 単純に計算すれば2Tバイトだが、実際にはそうはならない。今では200Gバイト程度のHDDは入手性が低く、むしろ1Tバイト級のほうが安かったりもする。そうすると合計10テラバイトということになるが、実際にユーザーが利用する容量の合計は個人差もあってかなり少なく収まるはずだ。

 これらのディスク領域をファイルサーバによって1カ所に集約すれば、これが2Tバイトで済む。RAID 1で冗長化しても4Tバイト、十分におつりがくる計算だ。各PCに対して個別に対応すると全HDDの未使用容量は増大し、利用率としては低くなる。ディスク利用量の多い人はパツパツなのに、それ以外の人は余っている、という状況も珍しくない。

 そのうえ、障害の発生確率は台数の増加に伴って高くなる。ファイルサーバを導入すればディスクの利用効率を上げることができるだけでなく、ディスクの本数が少なくなることで障害そのものも減る。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー