漫画家御用達のお絵かきソフト「CLIP STUDIO PAINT EX」を立ち上げて、VAIO Z Canvas(液晶保護シート付き)とCintiq 13HDの描き心地を取っ替え引っ替え比較してみた。ここではマシンパワーの条件をそろえて、純粋にペン性能の違いを比べるため、Cintiq 13HDをVAIO Z Canvasに接続して使用している。
あくまで個人の感想と断っておくが、以下のような得手不得手がみえてきた。
ペンの追従性についてだが、Cintiqはホバー中も描画中もペンの追従性が素晴らしい。VAIO Z Canvasのペンは、ホバー状態だとペンの動きにやや遅れてカーソルが付いてくる感じで、描画中もほんの少し遅れている印象だ。Cintiqを普段使っていることもあり、ペンの物理的な位置ではなくカーソルの位置を見ることに慣れている筆者は、多少の使いにくさを感じた。ただ、表示が遅れても線がゆがんだりするわけではなく、慣れればあまり気にならない。
続いて筆圧性能について。筆圧レベルのスペックで言えば、Cintiqが2048段階なのに対し、VAIO Z Canvasはハードウェア的には256段階で、ソフトウェア処理により1024段階相当の効果を実現しているという。一見、VAIO Z Canvasがかなり劣勢に思えるが、使った印象としては、どちらも筆圧の変化は滑らかに反映されていると感じた。
一方で「軽いタッチ」については「最小ON荷重1グラム」を誇るCintiqの方が繊細に反応する。VAIO Z Canvasでは、非常に弱い筆圧で細い線を描こうとすると、ペンが圧力を感知せず、線が「抜け」てしまうことがあった。
ただ、Cintiqも1グラム以下の荷重は感知できないので、力が弱すぎると「抜け」てしまう。結局のところ、極細の線を描きたければ単純にソフト側で細いペンを使えばいいわけで、筆圧の特性を分かったうえで線の太さを選べばいいと筆者は考えている。
ちなみにVAIO Z Canvasは独自の「VAIOの設定」ユーティリティで筆圧設定を変更できる。設定を「硬い」に変更することで、多少力んでしまっても線が太りにくく、安定して細い線が描けた。VAIO Z Canvasを試用するときは、ぜひ「硬い」筆圧設定も試してみてほしい。
ここからはVAIO Z Canvasが優勢だと感じた点について述べていこう。まず、ペンとカーソルとの位置のズレが画面全体で小さく、思った通りの線が引ける。また、試作機段階で気になっていた「線を非常にゆっくり引いてみるとゆがみが大きくなる」という点も、チューニングにより改善しており、ほとんど気にならなかった。
一方Cintiqでは、画面の端に近づくにつれペンの位置検出精度が低くなる傾向がある。絵を描くときは画面中央を使うことが多いので、表現力に影響を与えることは少ないと思うが、例えば画面端の細かいアイコンをペンで押そうとすると、うまく押せないといった不便はある。
そして、液晶ペンタブレットを語るときによく着目される「視差」についてだが、VAIO Z Canvasは液晶パネル面と表面ガラスとの距離がとても短く、視差がよく抑えられており、ペンのすぐ下に線が描かれる。Cintiq 13HDも、Cintiqシリーズとしては視差の小さいモデルだが、VAIO Z Canvasと比べてしまうと視差は大きく、ペンで描いた表面と実際に線が描かれる面の間にスペースが感じられる。
VAIO Z Canvasは、視差の小ささとペンの位置ズレの小ささとが相まって、紙の感覚に近い使い心地だ。筆者はこの点がとても好ましかった。既存の液晶ペンタブレットの視差に不満を持っている人は、VAIO Z Canvasを試してみるべきだ。
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