さて、A10-7890Kでは同時に製品付属のCPUクーラーが、新設計の「Wraith Cooler」となる。そして、既存の一部製品にもWraith Coolerと同等の性能を持つクーラーが付属する予定だ。TDPは125ワットまで対応しており、TDPが95ワット、CPU倍率もロックフリーのA10-7890Kなら多少のオーバークロックをしても十分に対応できる計算になる。こちらの構造を確認しておこう。
Wraith Coolerは、旧CPU付属クーラーの構造はそのままに大型化した印象だ。ファンの口径も大型化されている。大雑把に言えば、CPUクーラーの冷却性能はヒートシンクの大きさとファンの風量で決まり、CPUクーラーの静音性はファンの口径と回転数によって決まる。Wraith Coolerは、それぞれを大型化したことによって、冷却性能、静音性の双方の改善を狙ったCPUクーラーだ。
細部を見ていこう。まずCPU接触面は銅製で、これは旧CPU付属クーラーと同じ構造。ヒートパイプに関しても4本という構造に変わりはない。ヒートシンク部分は、フィンの密度がおろそかになった印象だが、大型化のぶん表面積では拡大しているだろう。
ファンは9cm角サイズで、6cm角程度と小口径だった旧CPU付属クーラーと比べると大きさにかなりの違いがある。同時にファンの厚みも異なるので、ブレードが一回転することで生じる風量には相当な違いが出ることになる。
CPUソケットへの固定方法は従来同様。CPUソケット側の固定器具にあるツメに引っ掛け、レバーでロックする方法だ。なお、Wraith Coolerは大型化したためにレバーとファンのカバー部分とが近い。
CPUクーラーとしての性能向上を狙ったWraith Coolerだが、マザーボードとの相性には注意が必要のようだ。特に大型化したことでメモリスロットとの干渉する可能性が増えている。手持ちのmicroATX、Mini-ITXマザーボードで試したところ、ヒートシンクの大きなメモリでは干渉が生じた。
Mini-ITXのようにメモリが2スロットしかない場合はとくに深刻だ。干渉を避けて外側1枚、シングルチャネルで動作させるというのはパフォーマンスが低下するので、現実的ではない。なんとかメモリ側で対処したいところだが、ヒートシンクの背が低い、あるいはヒートシンクのないメモリは動作クロックが低いものが中心で、それではAPUのGPUパフォーマンスを引き出せない。このジレンマに悩まされることになるだろう。
また、Mini-ITXマザーボードでは、グラフィックスカードとの干渉も問題になりそうだった。試しに装着したグラフィックスカードとは、コンマ数ミリのクリアランスがあったが、ケース側の固定ネジの締め方次第ではヒートパイプとグラフィックスカードの基板裏面が接触する可能性もある。接触してしまった場合、ショートによってPCのハードウェアに深刻なダメージを与えることも考えられる。どうしても、という場合には耐熱性のある絶縁シートを張り付けるのがよいだろう。
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