倍率300倍? 1年間、世界中を旅しながら働けるプログラムが参加者募集中

» 2016年05月24日 06時00分 公開
[中井千尋ITmedia]

 世界を旅しながらリモートで働きたい……そんな究極のノマドワークスタイルに憧れる人は、特にPCとインターネットさえあればある程度の仕事はできてしまうIT業界に多いかもしれない。

 そんな人に朗報。日本ではあまり知られていない、しかしそれをかなえてくれるアメリカ発のプログラム「Remote Year」をご紹介する。きっと本気で参加を検討する人も出てくるのでは……?

東京で家賃を払い続けるよりも実はお得?

「Remote Year」

 Remote Yearは、応募者の中から審査で選ばれた75人の参加者が、1年間、ひと月に1都市のペースで世界を点々としながらリモートで各自の仕事をするというもの。都市は運営事務局が指定するものの、旅好きのノマドワーカーにまさにもってこいのプログラムだ。

 選考を通過し参加費を支払ったプログラム参加者には、各国間の移動手段、プライベートルームでの宿泊、インターネット接続が確保されたワーキングスペース、旅行保険、各国で使えるSIMカードまで、すべて事務局から提供される。

 旅行中の宿泊先探しや急な旅程変更など忙しい人にとって煩わしい作業も事務局が担ってくれ、さらに参加者同士が交流を図るための交流会やアクティビティー、ショートトリップなども開催されるなど至れり尽くせり。しかもそのための費用も参加費に含まれる。

 なお、事務局が指定する最初と最後に訪れる国と自国間の交通費は、参加者によって異なるためカバーされない。

働く、楽しむ、生活する。Remote Yearの各シーン(同プログラムのWebサイトより引用)

 ここまで運営事務局がやってくれて気になるのはその費用だが、すべて合わせて2万7000ドル(約290万円)。初月に5000ドルを、翌月からは月々2000ドルを支払う。この費用はここまで紹介した旅に必要なものに当てられる。

 仮に東京に一人暮らしをしていたとしても家賃だけで100万円くらいは消えるだろう。さらにはこの費用だけで、働きながら世界中を旅し、さまざまな国籍の友人が作れるという、普通の旅や日本に住んでいたのでは経験できないことをかなえてくれるのだから、自己投資としては破格の値段ともいえる。

 参加者の多くは自宅をいったん引き払い、大きな家具やクルマなどは売り、旅行に持っていけない荷物をトランクルームや実家に預けて参加しているようだ。そのような面倒はあるものの、「特にニューヨーク、ロンドンなど大都市では家賃の高騰など負担が大きいので、それを考えるとこの価格で宿泊費込みというのはメリットが大きい」(プログラム参加者談)。

2016年のプログラムは8月開始 どんな人が選ばれる?

 では、どのような人が応募できて、選ばれるのだろうか。参加希望者は同プログラムのWebサイトから応募する。応募者の中からリモートワークの経験や動機など踏まえ絞り込まれ、最終的に事務局とのインタビューによって75人の参加者が選ばれる。

 参加資格は、多少の例外はあるものの基本的に23歳以上。このプログラムの目的が学生旅行ではないことを意味している。23歳以上でも、ただ仕事から離れて旅行をしたい人が参加できるのではなく、リモートでできる仕事を持っていて、その仕事のための経験として参加する意思がある人が選ばれる。ちなみに昨年(2015年)は、75人の枠に対して2万5000人が応募。実に倍率300倍以上だ。

 参加動機を具体的に提示することが選考通過の鍵のようだ。第1回だった昨年の参加者で、デジタルエージェンシー「R/GA」のクリエイティブディレクターであるGeetika Agrawalさんは、リモートで仕事をしながら、その間に新しいサービスを立ち上げた。ユーザーが世界各国のアーティストを訪れワークショップに参加できる旅のプランを提供するサービス「VAWAA」。GeetikaさんがRemote Yearで各国でアーティストを訪ね歩いた経験がそのまま生かされている。

 第2回となる2016年のプログラムは8月から開始予定で、本記事を執筆中の2016年5月時点では参加希望者を募集中だ。今回の旅程は、まずポルトガルの首都リスボンからスタート。モロッコ・ラバトやクロアチア・スプリト、スペイン・バレンシア、メキシコ・メキシコシティなどを周り、アルゼンチンのブエノスアイレスが最終目的地。観光客があまり行かないような都市を訪れることができるのも魅力の一つだ。

2016年8月開始のプログラムで訪れる最初の都市、ポルトガルのリスボン(同プログラムのWebサイトより引用)

 社会人になってから、会社を辞め旅に出たりワーキングホリデーに行ったりする人は珍しくない。そうではない、「リモートで仕事する」という方法で自分のキャリアを考えながら、めったにできない経験を積むRemote Yearのようなスタイルに対する需要は確実に存在しそうだ。

ライター

執筆:中井千尋 編集:岡徳之(Livit Tokyo)


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