「Touch Bar」は予想以上に使いやすい 新MacBook Proレビュー本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)

» 2016年11月17日 16時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 かつて、ここまで物議を醸したApple製のパーソナルコンピュータはなかったかもしれない。

 何しろ、4年以上もの長きにわたってマイナーチェンジを繰り返してきた「MacBook Pro」が久々の刷新だというのに、発表会の中継が進むにつれて、いつもならApple製品を絶賛しているファンのようなブロガーまで、不満の声が挙がったからだ。

 議論のポイントは三つある。

 一つは今回のアップデートにおける目玉とも言える「Touch Bar」。もう一つは、USB Type-Cコネクターと互換性のあるThunderbolt 3を採用し、ヘッドフォン端子を除き一切のポートを排除したこと。そして三つ目は12インチMacBookで初採用した薄型キーボードの搭載だ。

 これらの点について考えながら、先代MacBook Proの初代機(2012年前半出荷モデル)を今でも仕事上のメイン機として使っている立場から、買い替え対象として新ラインアップを評価してみたい。

MacBook Pro 新型「MacBook Pro」。スリムになったボディーと、キーボード上部に搭載した「Touch Bar」が特徴だ

使ってみて分かった「Touch Bar」の利便性

 さて、発表会直後の記事でTouch Barに関しては既に触れていた。Appleとしてはクラムシェル型パソコンであるMacBookの基本的なユーザーインタフェースのスタイルを変えずに、タッチパネルによる操作性を加えたいのだろう。

 画面全体をタッチパネルにしてしまうと、キーボードを中心にしたデスクトップスタイルのGUIでは操作がなじまないため、Windowsのように画面デザインやユーザーインタフェースのスタイルを大きく変更させる必要が出てくる。

 そうした「パソコン的操作スタイル」のバランスを崩さず、タッチパネル操作のよさを生かすため、ファンクションキー部分をタブレット的な操作スタイルのために解放。ファンクションキーとしても使わせながら、タッチユーザーインタフェースを追加した。

Touch Bar キーボードで1番上の列が省かれ、ここに高精細なOLED(有機EL)ディスプレイと静電型マルチタッチパネルを組み合わせた「Touch Bar」が追加された
Touch Bar Touch Barはアプリケーションによって表示が切り替わって使い方も変化する。右端には、電源ボタンと指紋認証センサーの「Touch ID」が統合されている

 考え方は分かるが、本当にそれで使いやすさ、生産性が上がるのか、という疑問は残る。実際のところ、どんな使い勝手になるのだろうか。発表会後の印象は、「ニュートラル(中立)」だった。

 しかし、実際に使い始めてみると、自分でも驚くほどすぐにTouch Barになじむ。スマートフォンやタブレットによって、もはや当たり前となったタッチ操作はアナログ的操作をグラフィックス表示とともに提供し、そのとき、その場に応じた適応的機能を提供する場としても利用されるからだ。

 写真であれば、写真選択時にサムネイルが表示されてタッチ選択。指をスライドさせれば滑らかに表示画像が変わっていく。画像を編集する際には、傾き調整や色調整など、さまざまな調整を指先一つで分かりやすい表示を元にしながら操作可能だ。

 Webブラウザの「Safari」なら、操作の状況に応じてお気に入りページの選択に使われたり、タブの追加が行えたりする。また、複数タブでのブラウズ時には、各タブで表示しているページのサムネイルで内容を示唆してくれ、動画再生時には再生位置をスライダー操作したり、全画面化や再生制御をTouch Barで行えるよう画面が切り替わったりする。

Touch Bar 例えば、「Safari」ならお気に入りページの選択や、タブで開いているページのサムネイル表示に使われる

 メールならフラグ設定、アーカイブ、削除やフォルダ移動などをサポートし、カレンダーは月表示なら何月か、週表示なら何週目かをワンタッチで切り替え可能になり……と、動的にどんどん内容が変わっていくのだ。

Touch Bar メッセージやメールなどのアプリでは、絵文字の表示も可能

 これは「iWork」でも同じで、とりわけ書式の設定や色選択などではサクサクと物事を進めることができる。Touch Barがカラー表示ができることで、目の前で色を見ながら選べるのはなかなか便利だが、当然ながら「iPad」のアプリがアプリごとに使い勝手が異なるように、Touch Barの使い方もアプリの使い方次第だ。

 だが、まだリリースはされていないものの、Microsoft OfficeのMac版がTouch Barに対応予定とのこと。米発表会場ではβ版のOfficeがインストールされていたようだが、現地で取材した人物は一様に絶賛していた。なお、OfficeのTouch Bar対応版は、Office Insiderプログラムのファーストでも配信されていないため、まだ配信には時間がかかるようだ。

 このようにサードパーティーのアプリがTouch Barを使いこなすには、それなりの時間が必要だろう。しかし、多くの開発者は既にタッチパネルの使いこなしには慣れている。Appleのアプリは、あらかじめこのときのためにユーザーインタフェースを練り込んでおり、「Final Cut Pro」や「Logic Pro」なども含め、よいデモプログラムとして機能しているため、時間の問題で充実していくのではないだろうか。

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