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» 2018年09月26日 06時00分 公開

西田宗千佳の「世界を変えるVRビジネス」:建築・製造の現場で導入が進む「HoloLens」の現状――ホロラボの中村薫社長に聞く (1/2)

「Mixed Reality」のビジネス利用はどこまで来ているのか。ホロラボの中村社長に話を聞く。

[西田宗千佳,ITmedia]

 「外から見えているだろう世界と、現在の動きとではかなり印象が違うんです」

 ホロラボ・中村薫社長はそう話す。

ホロラボの中村薫社長

 同社は2017年1月創業。創業日は1月18日で、この日は日本市場にMicrosoftの「HoloLens」が導入された日でもある。それだけにHoloLensをはじめとした機器を使ったビジネス案件を得意とする企業である。VRやARを使った機器は、いまだ「ビジネスの現場で大活躍している」状況にはない。だが、水面下では多数の導入検証が行われ、ビジネスが活性化しつつある。

 VR・AR(マイクロソフト的にいえば「Mixed Reality」=MRだが)とビジネス導入の現状がどうなっているのか。中村社長に話を聞いた。

まずは建築現場で「実証」が進む

 冒頭で述べたように、ホロラボは、企業から依頼される、AR関連のシステム開発とコンサルテーションを中心にビジネスを行っている。もともと個人で企業から仕事を請け負っていたメンバーが中心となって起業したこともあり、それぞれと関係が深い企業からの案件も多いが、現在はもちろん、より幅広い案件が寄せられるようになってきている。

 現在、同社が主に行っているのは、ARが業務においてどのように活用できるかを検証する「Proof of Concept」(PoC)という段階の作業である。といっても、「HoloLenを使うとどうなるか」というレベルの話ではない。業務に特化したアプリケーションを実際にHoloLensなどの上で動作する形で開発した上で、その価値がどのくらいのものになるのか、という実証的な段階である。

 特に多いのが「建設業」への導入検討だ。

中村 建設業での活用は、特に、建設中の現場で使われることを想定したものが多いです。例えば、鉄骨がどう入っているかを3Dデータとして現場に重ねる、といった使い方です。そうやって「どのくらい現場で使えるかを見たい」という要望が多いです。

中村 現場とデータを重ねて見ると、設計と施工の違いがはっきり分かるんです。例えば、穴の空いた鉄骨があるとして、その穴の位置が違うとか。障害物のシミュレーションをBIM(後述)のモデルを使って行い、設計上クレーンの回転を制限するものがある場合、HoloLensをかけて見ると、制限区域のアラートが目に見えます

 こうした使い方の分かりやすい例は、インフォマティックスがHoloLensで行っている「墨出し」だ。墨出しとは、必要な基準線を柱やコンクリートなどに書き出す作業のこと。どの工事でも必要になるものだが、図面データから直接CGにして現実に重ねることができないか……ということで、現在検証が進められている。

 この他、建築へのHoloLensの利用例としては、建築後の景観をシミュレートする用途が多い。建設業界では「BIM」(Building Information Modeling)として、3Dのデジタルモデルに対し、部材の種別やコスト、仕上げ状況などの情報を付加して利用する流れがある。BIMデータは巨大なものなので、そのままではHoloLensなどでの活用は難しいものの、うまく変換を行えば、現場作業検証や景観シミュレートなどに生かせる。ホロラボでも、「AR CAD CLOUD for BIM」として開発が進められている。

 建築分野への導入検証については、「かなり明確な特徴がある」と中村氏は話す。冒頭で述べたように、「現場への導入」が中心だ、ということだ。これまで、建設分野でのIT化は、設計や調達といった部分が中心だったが、HoloLensを含めた技術の導入については、圧倒的に建設現場の効率化やノウハウ共有が目的となっている。

中村 建設は現場の危機意識が大きいです。今後作業者が減る、外国人作業者の割合が増える、といった状況が懸念されます。ノウハウが継承されず、作業レベルが下がる可能性があります。そのため、教育の高度化や作業の効率化が急務です。ですから、手作業のデジタル化やチェックプロセスの自動化、作業の遠隔支援といった部分が重要なのです。

 ホロラボも、前出のインフォマティックスと提携し、HoloLensでの遠隔コミュニケーションを実現している。PCからHoloLensをかけた作業者に映像で通話しつつ作業を進められるようにすることで、作業の円滑化が可能になる。建築現場に無線LANを導入、HoloLensを接続しつつ利用することで、こうしたアプリケーションが実際に有用であることが、実証実験から確かめられている。

ホロラボとインフォマティックスが提携して開発したアプリケーション。HoloLensをかぶって作業中に、墨出しの線と遠隔地からの指示が同時に見られる
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