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» 2018年10月05日 06時00分 公開

鈴木淳也の「Windowsフロントライン」:Windows Virtual Desktop、Office 2019、そして…… 変化するMicrosoftの戦略 (1/2)

MicrosoftはAIとクラウドへの注力に伴い、WindowsとOfficeの戦略を柔軟に変えつつある。WindowsとOfficeの新製品・サービスをまとめつつ、同社の狙いを考える。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 Windows 10大型アップデート「October 2018 Update(1809)」の一般向け配信が始まった。広告計測サービスを提供するAdDuplexによれば、Windows 10のバージョン別シェアは「April 2018 Update(1803)」が2018年9月末にシェア89.6%まで達した。同社はこの数字をほぼシェアの上限とみており、October 2018 Update普及の準備は整った状態といえる。

AdDuplex 2018年9月時点でのWindows 10バージョン別シェア(出典:AdDuplex)

 一方、米MicrosoftはWindowsおよびOfficeの戦略を度々変更しており、9月24〜28日(現地時間)に米フロリダ州オーランドで開催したITプロフェッショナル向け年次イベントの「Ignite 2018」でも多くの発表を行った。その幾つかを見ていこう。

Microsoft純正のクラウド仮想デスクトップサービス

 まずは、「Microsoft Azure」のクラウド上で動く仮想デスクトップ環境の「Windows Virtual Desktop(WVD)」サービスだ。Azureを利用したサービスのため、従来のVDI(Virtual Desktop Infrastructure)で必要だったサーバを構築することなく、Azureのコンソールから設定するだけですぐ始められる。

 WVDは2018年内にプレビューを開始し、Microsoft 365 Enterprise E3/E5のサブスクリプションがあれば、誰でも利用が可能になる予定だ。

 このWVDでは、Windows 10 Enterprise、Windows 7 Enterprise、Windows Server 2012 R2+のWindows OSを利用できる。ポイントはWindows 7を選択でき、しかも2020年1月のWindows 7延長サポート終了後も3年間のセキュリティアップデートを受けられる「Windows 7 Extended Security Updates(ESU)」の対象になることだ。

 WVDで利用するWindows 7はESUを追加料金なしで利用できるため、どうしても稼働中の古いアプリケーションを延命させ続けざるを得ない企業ユーザーの一部において有力なサービスになるだろう。

WVD 「Microsoft Azure」のクラウド上で動く仮想デスクトップ環境の「Windows Virtual Desktop」サービス

買い切り型の「Office 2019」が登場

 MicrosoftはIgnite 2018にて「Office Perpetual」と呼ばれるライセンス永続版(買い切り型)Officeの最新バージョン「Office 2019」の提供開始も正式発表した。

 法人向けのボリュームライセンスから提供を開始し、続けて一般ユーザー向けにも提供する。対応OSは、Windows版が「Windows 10」以降、Mac版が「macOS 10.12」以降だ。「Office Home & Business 2019」の価格は米国で249.99ドル(約2万8200円)となっており、予告通り前バージョンの「Office 2016」に比べて20ドル高い。

Office 2019 「Office 2019」のPowerPoint

 Office 2019は、「Word」「Excel」「PowerPoint」「Outlook」「Project」「Visio」「Access」「Publisher」のアプリケーションで構成される。このうち、Project、Visio、Access、PublisherはWindowsのみの提供だ。Office 2019はクラウド版の「Office 365 ProPlus」に過去3年で加えてきた機能を反映したオンプレミスのユーザー向けOfficeだが、今後新機能の追加はない。

 なお、「OneNote」については、Windows版もMac版も個別のアプリとして提供している。

レガシーな存在になる「Office Mobile」

 Office関連では「Office Mobile」の今後についても注目だ。Office Mobileはもともと「Windows Phone」向けのOfficeプレビューや簡易編集を可能にするためのアプリとして提供されていた。後によりリッチな機能を搭載したWord、Excel、PowerPointの個別アプリがiPadなどのタブレット向けにリリースされ、「タブレットやPCではOfficeの個別アプリ、スマートフォンではOffice Mobile」のように分けられていた形だ。

 しかし米Neowinによれば、MicrosoftはIgniteのセッションにてOffice Mobileが既に「レガシー」な存在であり、今後はiOSやAndroidのプラットフォームに注力していくことを認めたという。

 さらに、米ZDNetのメアリー・ジョー・フォリー氏によれば、Microsoftは「Office Mobileを捨てたわけではないものの、モバイル向けはiOSとAndroidに注力し、WindowsについてはWin32版とWeb版にフォーカスしている」ことを認めたという。

 Microsoftが注力していたスマートフォン向けOSの「Windows 10 Mobile」は2017年の段階で事実上の終了宣言が出され、Windows Phoneの系譜は絶たれてしまった。Microsoftにとっては、無料のOffice Mobileが有料のPC向けOfficeの市場を侵食しないために、「Office製品のすみ分け」を行う必要があったわけだが、状況はすっかり変わっており、Office Mobileは過去の遺物と考えているようだ。

 Microsoftとしては、前述のOffice 2019とOffice 365 ProPlus、そしてUWP(Universal Windows Platform)版のOfficeを加えた、いわゆる「デスクトップ版Office」を軸に据えつつ、ライトな用途や企業での共同作業向けには「Web版Office」を提供し、モバイル向けには「iOS版とAndroid版のOffice」を推していく構えなのだろう。

 いずれにせよ、Windows単体ではなくマルチプラットフォーム展開を前提にクラウドで稼いでいくという、昨今のMicrosoftの戦略をそのまま反映した形だ。

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