「Apple Silicon」はMacをどう変えるのか Windowsから離れiPhone・iPad互換が強みに本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)

» 2020年06月30日 17時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 今年はオンラインで開催されたAppleの開発者会議「WWDC20」。iOSのアップデートもかなり大掛かりなものではあるが、同社で最も歴史ある製品の「Mac」がCPUアーキテクチャを変更する話題が、最もエキサイティングで興味のあるところだろう。

 WWDCではIntel向けに開発されたMac用アプリを自社開発プロセッサ「Apple Silicon」に移植する際の情報など、幾つかのセッションが用意されていたが、そこから見えるのは、どうやら「今回は移行に関する問題が少なそうだ」ということだ。さらに各セッションでは「Apple Siliconにするとこんなよいことがある」という情報が、少しずつではあるがちりばめられていた。

Apple Silicon Macのプロセッサは今後2年をかけてIntel製からApple自社開発の「Apple Silicon」に切り替わっていく

 そんなWWDCの情報をまとめながら、年末には登場するというApple Siliconとそれを搭載するMacに関して思いをはせてみることにしよう。

Apple Silicon MacはIntel Macの上位互換になる?

 視点にもよるので「それは違う」という意見も出てくることは承知の上で書くが、Apple Silicon搭載Macは機能的にIntel CPU搭載Macの上位互換となるようだ。

 もちろん、Arm系命令を採用するApple SiliconではIntel x86系命令は実行できないため、これまでのIntel CPU搭載Macと同じようにx86の仮想マシンを動かしてその上で(x64版・x86版の)Windowsを使ったり、Boot CampでWindowsを直接起動したりすることはできない。

 Apple Siliconそのものは仮想化には対応し、その上で多様なOSを動かすことも可能だ。しかし、x86命令を実行できないのだから、一般販売されている(x64版・x86版の)Windowsが動かないのは致し方ないところだろう。いずれ、現在は市販されていないArm版のWindowsが仮想化ソフト上で動作するようになることを期待したい。

Apple Silicon WWDC20の基調講演では、Apple Silicon搭載Macを用いて「Parallels Desktop」による仮想環境でLinuxを動かすデモが行われた。一方で、Windows OSを動かすデモやそれについての言及はなかった

 しかし、これをもって「後退」と考えるのは早計だろう。そもそも、Macにx86命令が使えるIntel CPUを採用することで仮想化技術やBoot CampでWindowsを動かすというのは、プラスアルファのおまけであって本質的な部分ではない。一方で独自設計のApple Siliconに移行することによって、(性能面だけではなく)機能面でも、Intel CPU搭載Macよりも前進できる部分はあるからだ。

 その一つはセキュリティだ。現在のMacはセキュアな起動のため、Appleの「T2」チップの支配下でIntelアーキテクチャが動くような構造になっているが、Apple Silicon搭載MacではiPhoneやiPadと同じく、メインのSoC(System on a Chip)そのものにセキュアなブートプロセスが組み込まれる。

Apple Silicon Intel CPU搭載Macのアーキテクチャ。Appleの「T2」チップの支配下でIntelアーキテクチャが動くような構造だ(画像はAppleの解説動画「Explore the new system architecture of Apple Silicon Macs」より)
Apple Silicon Apple Siliconの構成要素。SoCに「Secure Enclave」と呼ばれるセキュリティアーキテクチャも組み込まれる

 「Macとしての機能」については、Apple Silicon搭載MacはIntel CPU搭載Macの上位互換とも言うべき形になるのだ。Intel CPU搭載Macにある機能は、x86命令に依存する部分以外は全てApple Silicon搭載Macにも備わるが、その逆はない。そしてそれは、パソコンとしての基本的な機能だけでなく、その上で動作するアプリにとっても「上位」になる。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年05月10日 更新
  1. 新型「iPad Pro」がM3チップをスキップした理由 現地でM4チップ搭載モデルと「iPad Air」に触れて驚いたこと (2024年05月09日)
  2. 個人が「Excel」や「Word」でCopilotを活用する方法は? (2024年05月08日)
  3. M4チップ登場! 初代iPad Proの10倍、前世代比でも最大4倍速くなったApple Silicon (2024年05月08日)
  4. Core Ultra 9を搭載した4型ディスプレイ&Webカメラ付きミニPC「AtomMan X7 Ti」がMinisforumから登場 (2024年05月08日)
  5. NECプラットフォームズ、Wi-Fi 6E対応のホーム無線LANルーター「Aterm WX5400T6」 (2024年05月09日)
  6. iPad向け「Final Cut Pro 2」「Logic Pro 2」登場 ライブマルチカム対応「Final Cut Camera」アプリは無料公開 (2024年05月08日)
  7. パナソニックがスマートTV「VIERA(ビエラ)」のFire OSモデルを6月21日から順次発売 Fire TVシリーズ譲りの操作性を実現 (2024年05月08日)
  8. SSDの“引っ越し”プラスαの価値がある! 税込み1万円前後のセンチュリー「M.2 NVMe SSDクローンBOX」を使ってみる【前編】 (2024年05月06日)
  9. これは“iPad SE”なのか? 新型iPadを試して分かった「無印は基準機」という位置付けとシリーズの新たな幕開け (2022年10月24日)
  10. “NEXT GIGA”に向けた各社の取り組みやいかに?──日本最大の教育関連展示会「EDIX 東京」に出展していたPCメーカーのブースレポート (2024年05月09日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー