auの通信品質は大きく改善する――KDDI 通信速度制限の狙いと今後のインフラ戦略神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2008年10月06日 10時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 他キャリアより一足早く3Gに移行し、「つながりやすさ」と「高速・大容量通信」で人気となったKDDIのau。しかし最近は、都市部を中心にauは“つながりにくい”“通信スピードが遅い”というユーザーの声が上がるようになり、実際、筆者が利用しても同様の印象を受けることが少なからずあった。

 そのような中、KDDIと沖縄セルラーは10月1日から、通信利用の多いユーザーを対象に、EZwebの通信速度制限の適用を開始した。これは前々月の月間通信量が300万パケットを超えるユーザーの一部に対して、21時〜翌1時まで、EZwebの通信速度を制限するというものだ。パケット通信の利用制限はNTTドコモもすでに導入しているが、それは「利用量が逼迫した地域で、定額制ユーザーの通信速度を落とすことがある」(ドコモ広報部)というもの。明確な基準を設けた上で、特定のユーザーだけ利用制限を行うというのは、auで今回導入した利用量制限が初めてとなる。

 なぜ、KDDIは“一歩踏み込んだ”形で利用量制限を行ったのか。さらに、その効果はどれだけあるのか。

 今日のMobile+Viewsでは、KDDI モバイルネットワーク開発本部 au技術企画部 システムインテグレーショングループ 課長の大内良久氏と、同課長補佐の新名豪氏にインタビュー。auを支えるネットワークインフラの現状と、今後の展望を聞いた。

PhotoPhoto KDDI モバイルネットワーク開発本部 au技術企画部 システムインテグレーショングループ 課長の大内良久氏(写真=左)と、同課長補佐の新名豪氏(写真=右)

ドコモより”一歩先“にきたネット渋滞問題

 「最近のauは遅い」「つながりにくい」

 これは最近、よく耳にするようになった“ユーザーの声”だ。筆者の利用経験を顧みても、メールの送信に失敗する、サイトの表示や接続に時間がかかる、モバイルSuicaやEdyのオンラインチャージ中に通信が切れてエラーになる、といったシーンに何度か遭遇した。2007年後半くらいから、auの通信環境は「以前よりも悪くなったのではないか?」と感じていたのは偽らざるところだ。

 むろん、こうしたユーザーの印象は「主観的なもの」である。KDDIではネットワークトラフィックの現状について、どのような認識を持っているのだろうか。

 「まず、現状として確かなのが『トラフィックが急激に増えている』ということです。これはブロードバンドコンテンツの利用が拡大していること、またデータ通信定額制の料金モデルが一般的になったことなどが、主な原因です。

 その上でKDDIの現状を見ますと、1Mbpsの高速通信が利用できるユーザー数や定額制プランの加入者数が他社よりも多い。例えば、ドコモの定額制プランの利用者数は約1300万人ですが、auの定額制プラン利用者数は約1500万人になります。

 このような中で、局所的に『ネット渋滞』が起きていることは我々も確認しています」(新名氏)

 auは2003年11月28日のCDMA 1X WINサービス開始と同時にデータ通信定額制を導入し、「モバイルブロードバンド」の扉を開けた。そのためドコモよりも定額制ユーザーの構成比率が高く絶対数も多いが、皮肉なことにこれが他社よりも早く「ネット渋滞」に悩まされる背景になってしまった。しかし、そのような中でもauインフラの状況は「(局所的なネット渋滞はあるが)マクロで見れば、それほど悪くない」(大内氏)という。

 「例えば、auでは新たに2GHz帯の基地局を増設していますが、これが整備された場所では地域全体の収容力が上がっていて、ネット渋滞の問題はほとんど起きていません。ただ、基地局の整備には時間がかかりますので、ネット渋滞の問題は、こうした設備増強が追いつかない極めて局所的な場所で起きていたと考えられます」(大内氏)

速度制限で公平性を確保――多数のユーザーが快適に

 ブロードバンド需要の進展に、インフラの増設が追いつかない。そういった側面はあるものの、むしろもっと大きなネット渋滞の原因になっているのが、「ごく一部のユーザーによる大量のデータ通信」(大内氏)だという。

 「これまでのEV-DOの仕様では、電波環境のいい端末を優先して通信を行い、エリア全体の通信効率を向上させるという設計がされていました。しかし、この仕様ですと、特定のユーザーが大量のデータ通信を行い続けると、エリア全体の帯域が占有されてしまい、他のユーザーにとって通信がしづらい環境になってしまうんです。これがネット渋滞の原因のうち、かなりの部分を占めています」(新名氏)

 そこで10月1日から、auでは特定ユーザーに絞り込んで、通信速度制限に踏み切った。これはネット渋滞の原因になっている一部のヘビーユーザーの利用を一時的に制限することで、多くの一般ユーザーの利用環境を改善し、結果として、公平につながりやすい通信環境を実現するというものだ。

 「今回導入した通信利用制限の中で規定している『月間300万パケット以上』の利用があるユーザーの比率は、多い月で全体の3%程度です。そのうちの3分の1から2分の1程度のお客様が、利用制限の対象になると想定しています。

 では、この利用規制の効果がどれだけあるかという点ですが、我々が行った実験では、利用規制を行うことで、この規制対象外のお客様のスループットは1割程度向上しました。また規制開始前の20時台と規制開始後の21時台のスループットで見ても、規制対象外のお客様は21時以降の方がスループットが向上するという結果になりました」(新名氏)

 このような結果を鑑みれば、全体の97%を占める一般ユーザーにとっては、今回の利用規制にはむしろ“メリットがある”のは明らかだ。平均的に1割程度のスループット向上が得られるということは、規制時間帯はさらに大きな改善効果が体感できるだろう。

 「我々の本音としては、お客様の利用方法にあまり制限をかけたくありません。例えば、大容量コンテンツの代表格とされる動画にしても、我々自身EZムービーのサービスを行っていますし、YouTubeなど動画サービスの需要が高くなっていくのは自然な流れ、一般ユーザーのニーズだと考えています。しかし、その一方で、(携帯電話の)データ通信需要の97%がメールと携帯サイト利用なのも事実です。ですから、auとしては、まずは多数派であるメールと携帯サイトを利用したいお客様に対して、快適な通信環境を提供しなければならないと考えています」(大内氏)

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