インタビュー
» 2009年11月26日 02時34分 UPDATE

“存在を感じさせない”サイト変換ソリューションで、業務効率が向上――インデックス

よいソリューションは、その存在を感じさせない――というが、インデックスが携帯向けECサイトに採用したサイト変換ソリューションは、まさにそんな製品だったという。機種ごとの動作チェックを不要とする、ワンソースマルチユース対応の「roundabout」は、インデックスのサイト構築業務をどう変えたのか。

[日高彰,ITmedia]

 携帯電話向けのWebサイトは、端末の機種ごとに異なる端末の仕様を常に意識しながら制作する必要がある。PC向けのサイトでもWebブラウザの違いが問題になることはしばしばだが、携帯電話の場合、キャリアによってベースとしているコンテンツ記述言語そのものが違っていたり、画面の解像度や表示可能な画像フォーマットに制限があったりするため、各キャリア・端末の仕様に十分配慮したサイト作りを心がけないと、機種によってはWebページが表示すらされないといったトラブルを招きかねない。

 しかし、携帯サイトが大規模で高機能なものになり、毎年何十機種もの新端末が発売される中、Web制作者が自力で無数の機種に対応したサイトを構築するのは、現実には不可能なこともある。そのような場合に用いられるのが、サイトにアクセスしていくる端末に応じてソースや画像等を自動変換するコンテンツ変換ソリューションだ。

 変換ソリューションは各社がさまざま製品を提供しているが、シンメトリックが昨年リリースした「roundabout」は、コンテンツ変換の仕組みをWebサーバに直接組み込むことで、運用効率とパフォーマンスの向上を図ったのが特徴という。roundaboutを採用した携帯電話向けEC(物販)サイトの構築を手がけたインデックス メディア・ソリューション局の西村純一氏と丸山修央氏に、導入のメリットを聞いた。

アクセスも売り上げも大きく変動するテレビ局のECサイトは、課題が山積

Photo インデックス メディアソリューション局 第八営業部 副部長の西村純一氏

 携帯向けサイトの開発と運営で多くの実績を持つインデックスの場合、これまで手がけたサイトのほとんどは、変換機能を自社開発し、対応を図っていたという。ただ、ECサイトは例外で、商品の入れ替えが発生するたびに画像を追加する必要があったり、Webページの表示以外にもショッピングカートや決済などの大規模なシステム開発が必要になることから、他社が開発したコンテンツ変換と画像変換のソリューションを導入してサイトを構築していた。

 roundaboutを初めて採用し、2008年末にオープンした「フジテレビ e!ショップ」も、その名の通りECサイトだ。以前、フジテレビが開設していたECサイトをリニューアルしたもので、それに合わせてコンテンツ変換ソリューションもroundaboutに切り替えた。

 移行のきっかけは、瞬間的に多くのアクセスが発生する“テレビ局の携帯サイト”で安定した運用を行いたいという事情があったからだと西村氏は振り返る。同サイトで販売されるのは主に番組に関連したグッズであり、商品自体が放映中の番組内で紹介されることもある。紹介された直後は、普段とケタ違いにアクセスが集中することになり、平常時と集中時のアクセス数の違いは、場合によっては数十倍にも及ぶという。

 このような突発的なアクセスの集中にも対応できるよう、インデックスでは十分な数のWebサーバを用意して負荷を分散する体制をとっているが、問題は、従来の変換ソリューションがWebサーバとは別のサーバに用意されている点にあった。Webサーバ自体に余裕があっても、コンテンツや画像を変換するサーバの能力を上回るアクセスがあった場合、そこがボトルネックとなってホームページが表示されない――という事態が発生していた。

 一番のかき入れ時にページが表示されなければ、商品の売り上げに大きな影響を与えることになる。番組に関連するグッズは、番組の視聴時に購買意欲が急激に高められ、その熱が冷めるのも速い。サイトの混雑が落ち着いてから、再びショップを訪れる可能性が他の実用商品に比べてかなり低いことから、なおさら深刻な問題と捉えていた。

 しかし、「月額課金制のサイトと異なり、ECサイトは毎月固定の売り上げがあるわけではないため、固定経費が高いのは致命的」(西村氏)ということで、パフォーマンスが足りないからといって、さらに社外に費用を支払って変換サーバを増強するわけにもいかなかったという。インデックスの場合、従来はASP型で提供される変換サービスを利用していたため、ピーク時のアクセスに合わせてサービスを契約すると、アクセス集中時以外にはまったく使わないシステムに対して継続的に多大な費用が発生してしまうことになる。

 また、Webサーバと変換サーバとの間にネットワークが存在するのもコストや障害の要因となるほか、多くの変換ソリューションではURLの形式が「http://変換サーバーのホスト名+元々のURL」という形式に変わってしまうため、リンク先の指定時などにミスが発生しやすく、サイトの管理効率が悪くなるという問題もあった。

Apacheの拡張機能として動作、介在することを意識させない変換ソリューション

Photo インデックス メディア・ソリューション局 開発管理部 丸山修央氏

 このように、従来の変換ソリューションで突発的なアクセス集中に対応するのは原理的に無理があった。roundaboutはApacheの拡張機能(Apacheモジュール)として動作することでこの問題を解決している。

 最大のメリットは、Webサーバ自体にコンテンツ・画像変換機能を追加できるので、変換サーバがボトルネックになる心配がないという点。システム開発を担当した丸山氏も「Webサーバに直接組み込めるので、用意したサーバの能力を使い切ることができるのが導入の決め手となった」と話す。

 実際に得られるパフォーマンスも申し分はなく、「当初ハードウェアの構成を決めた時点ではroundaboutを使う予定はなく、純粋にECサイトとして必要な台数のサーバを用意しただけだった」(丸山氏)にもかかわらず、roundaboutの採用が決まってからも、サーバの台数や性能を変更する必要はなかったという。

 roundaboutは他の変換ソリューションと同様に、リクエストに応じて1つのソースから各機種に合わせたページを生成するが、roundaboutに特有のコンテンツ記述法は特に必要なく、条件となるのはXHTMLで記述するということと、フレームなど携帯電話のブラウザがそもそも対応していない要素を使わないということくらいだという。CSSで定義したデザインもHTML内に展開されるので、携帯サイト独特のノウハウを知らないデザイナーやコーダーでも、PC向けサイトを作るのと同じ要領で携帯サイトを作成できる。

 最も表現力の高い最新機種向けにページをデザインしておけば、それ以前の機種に対してはroundaboutが自動的にデータ容量やピクセル数を削減するほか、その機種のブラウザが対応していない要素を表示可能な形式に変換してくれる。従来、どの機種でも見られるサイトを作るためには古い機種に合わせる必要があったが、それとは真逆の考え方になる。

 サーバへの組み込みは、Apacheのコンフィギュレーションファイルにroundaboutをロードするためのコマンドを数行追加し、roundaboutの動作を設定するパラメータを用意するだけでよく、Webページ自体に特別なヘッダを書き加えるといった作業は不要。このため、サーバ上でroundaboutがWebデザイナーやサイトの更新担当者などの目に触れることはない。

機種ごとの確認作業がなくなり、サイト運用の手間が大幅に軽減

Photo シンメトリック シニアエンジニア+マーケティングリーダー 千葉孝博氏

 roundaboutを導入した新サイトのオープン後、コンテンツ・画像変換ソリューションの負荷が原因でホームページが表示されないという問題は完全に解消された。「Webサーバは余裕があるのに、変換サーバがダウンしたせいで――という歯がゆい状態がまったくなくなったので、我々で用意したプラットフォームの能力を十分に発揮できるようになった」(西村氏)。自動変換されたコンテンツの表示に関しても「我々としては非常に満足しており、クライアントからそれに関して指摘を受けたことはない」(同)といい、十分な品質が得られていると言えそうだ。

 また、制作に着手してからサービス開始までのスケジュールがタイトなプロジェクトだったということだが、丸山氏は「短い納期の中では、従来だったら『そんなところにこだわっている場合じゃない』となるところが、サイトを設計した担当者が最初から追求していたデザインで作り上げることができた」と話しており、従来であれば、端末ごとの表示テストにかかる工数を考えてあきらめてしまうような凝ったデザインを、限られた時間のなかで妥協せずに実現することが可能になったという。

 導入のメリットはサイト構築時だけにとどまらない。携帯電話は毎年大量の新機種が発売されるが、roundaboutでは新機種発売日までに端末仕様の定義ファイルが用意され、Webサーバにプッシュ配信される。「従来は新機種が発表されると、ユーザーエージェントなどの情報が発表されるのでそれを登録し、コンテンツをテストサイトにアップロードし、実機で正しく表示されることを確認して、ようやく対応が完了していた。(roundabout導入後は)そういうプロセスがなくなり、機種ごとに対応するという手間自体が限りなく削減された」(西村氏)と、サイトの運用に入ってからの手間も大きく削減できた。そのようにして得られた人的リソース上の余裕は、ユーザビリティの改善や売り上げアップのための工夫といった、本来のWebサイトの目的達成のために費やせるようになる。

 丸山氏は「従来の仕組みでは、アクセスが集中したときやURLのミスが発生したときなどに、どうしても変換ソリューションのことを意識せざるを得なかったが、roundaboutに変更してからは、その存在を意識すること自体がなくなった。(roundaboutに関して)大規模な改修依頼をしたこともなく、完成度はかなり高いと感じている」と話しており、一度導入すれば、各機種に対応する手間がなくなることに加え、変則的なURLやコンテンツ変換のための記述法といった、変換ソリューション自体を扱うための細かな手間も不要となったのを大きなメリットと感じているという。実際に、サイトのリニューアル後に加わった新しい運用担当者には、roundaboutを使用していることは特に伝えておらず、それでも何の問題もないということだ。

 待ち受け画面やデコメ素材の販売サイトなど、デジタルコンテンツ自体を販売するサイトでは、商品の品質を保証する必要があるため自動変換にまかせるのはあまり現実的ではないが、それ以外ならECサイトに限らず多くの携帯サイトにroundaboutは適用可能であり、シンメトリックによればインデックス以外にも採用が決まっている案件が複数あるという。

 また、今回の事例では大規模サイトのアクセス集中問題を解決するために採用されたが、それ以外の携帯サイトでも導入のメリットは十分にあるため、roundaboutが利用できるホスティングサービスが、IIJ、テック・インデックス、So-net、GMOホスティング&セキュリティの4社から提供されている。これらのサービスであれば、共用ホスティングで月額2000円から、専用ホスティングで月額10万円から利用できるので、インフラへの投資コストが限られる中小規模のサイトでも手の届く範囲と言えるだろう。

 シンメトリックでは、ユーザー企業からの反応がいいことから、現時点では大規模な機能追加よりもユーザーの拡大に注力しているということだが、最大のメリットであるパフォーマンスにさらに磨きをかけるため、今後はコンテンツの変換スピードをさらに高速化していきたいとしている。

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.