ISDB-Tmmか、MediaFLOか?――携帯端末向けマルチメディア放送の公開説明会(2/3 ページ)

» 2010年06月28日 10時08分 公開
[田中聡,ITmedia]

「コンテンツ産業の活性化に期待している」――増田氏

 第2部では、まずはモデレータから各申請者への質疑応答が行われた。「新しい放送メディアとしての期待と可能性をどのように考えているか」という問いに対し、メディアフロージャパン企画の増田氏は「コンテンツ利用の垣根が低くなる」と回答。「現在もさまざまな(ケータイ向け)コンテンツがあるが、お客さんの操作が必要になり、通信料もかかる。ケータイへコンテンツを送る携帯端末向けマルチメディア放送では、わずらわしい操作をせずに、定期的に情報を得られるので、ユーザーの利便性が上がる。現在は、(一部のユーザーには)操作性やパケット通信料が障壁になっているので、これまでリーチできなかったお客さんにコンテンツを届けられる。コンテンツ産業の活性化に期待している」と話した。

 mmbiの二木氏は「今回の携帯端末向けマルチメディア放送は、放送とモバイルの新しい組み合わせで実現するもの。久しぶりに登場した新しいメディアということで期待している。端末、コンテンツ、通信が三位一体となり、通信事業者や放送事業者と一緒に展開したい」と意気込みを話した。

 続いて、モデレータは「携帯端末向けマルチメディア放送を開始するには、スピード感や、目に見える効果を視聴者に還元する姿勢が重要。それについてはどう考えているか」と質問。二木氏は「サービスの早期立ち上げと、早い段階でユーザーを確保することは非常に重要。(ISDB-TmmとMediaFLOという)方式の優位性がなくても、周波数の利用率と利用効率を高められる」と力説した。

 一方、増田氏は「お客さんの利用シーンを考えると、屋内をはじめ、全体的にエリアの品質が重要。可能な限りエリアを拡張していきたい」と回答。二木氏がスピード、増田氏がエリア品質を重視している姿勢がうかがえた。

 マルチメディア放送を成功させるには、コンテンツを提供する委託放送事業との連携も重要だ。モデレータの「委託放送事業者とはどういう形で共存共栄していくのか」という質問に対し、増田氏は「委託放送事業者とはさまざまな協議をしており、オープンな形で委託放送事業の参入を希望している方へ説明している。また、沖縄の実証実験で協力いただいた、コンテンツプロバイダーの意見も参考にしたい」と述べた。

 対して、二木氏は「委託放送事業者の経営の問題もあるので、まずは安くすることが重要」だと回答。「顧客管理や料金体系などのプラットフォームをオープンにし、委託事業者が入りやすい仕組みを作りたい。また、マルチメディア放送は話題にはなっていたが、なかなかビジネスとして世界で立ち上がっていない。今後は端末とコンテンツが一体となったエコシステムを作ることが重要だ」と述べた。

「SFN混信の原因局を特定できる」――河合氏

photo マルチメディア放送 取締役 技術統括部長 上瀬千春氏

 申請者間の質疑応答では、まずはメディアフロージャパン企画がmmbiへ質問。増田氏が「我々はワンセグ視聴に関する実態調査を定期的に取っているが、ワンセグを問題なく視聴できるという回答が、大きな割合になっていない。(ISDB-Tmmの)13セグメントで受信する環境だと、ワンセグよりもさらに厳しくなるのではないか」と受信品質について疑問を投げかけた。

 これに対し、上瀬氏は「ISDB-Tmmでは、地デジ(ワンセグ)よりも送信電力を高めに取っている。また変調方式も地デジと違う」と回答。メディアフロージャパン企画に対しては「全国の世帯カバー率の根拠が分かりにくい。中規模の基地局が、大規模局と比べて室内に電波が入りやすいという根拠も今のところないのでは」と応戦。

photo KDDI研究所 研究主幹 河合直樹氏

 続いてKDDI研の河合氏がSFN混信について言及し、「我々は、SFN混信の原因となる局を確かめるために、基地局にIDを付けている。mmbiさんはどのような対策を取っているのか」と質問。上瀬氏は「SFN混信の発生率を1%まで追い込めるようシミュレーションしている」と回答した。

 すると河合氏は「地デジを見ても明らかだが、実際はあちこちでSFN混信が起きている。シミュレーションで追い込める段階ではない。SFN混信が起きた場合にどう対策をするかが非常に重要だが、mmbiさんには新しい技術がないことが分かった」と話すと、上瀬氏は「徳島でSFN混信が起きた際にしっかりとディレイ調整した。いい加減なSFN調整はやっていない」とヒートアップする場面も。

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