インフォテリア、iPhone向けコンテンツ有料配信サービス「Handbookライブラリ」を提供

» 2010年07月22日 17時32分 公開
[園部修,ITmedia]

 インフォテリアが7月22日、無料のiPhoneアプリ「Handbook」で閲覧可能なコンテンツを、ユーザーに直接有料配信できるサービス「Handbookライブラリ」を開始した。

Photo インフォテリア 代表取締役社長/CEOの平野洋一郎氏

 Handbookライブラリは、企業や教育機関などが、出版社や制作会社を介さずに、コンテンツをiPhone/iPod touch/iPad向けに配信できるプラットフォーム。月額1万7500円(年間契約が必須。1年で21万円)で500MバイトのストレージとオーサリングツールHandbook Studioの利用権が取得でき、容量制限内であれば自由に何本でもコンテンツを公開できる。コンテンツの価格は115円から11万5000円まで85段階で設定可能で、無料公開にも対応。有料版は売上の30%がアップルの取り分となり、契約者(著者)には50%を還元。インフォテリアには残りの20%を配分する。

 インフォテリア 代表取締役社長/CEOの平野洋一郎氏はHandbookの発表会で、「電子書籍や電子出版は、出版社やコンテンツ制作会社を経由し、アプリならアプリを開発して流通させる必要がある。しかしHandbookライブラリなら、企業や教育機関が持っている資料のような貴重な独自コンテンツを簡単に電子化して販売できる。本当に価値あるものを必要としている人とマッチングさせて販売できるのがHandbookライブラリ」とその特長を説明した。

PhotoPhotoPhoto Handbookライブラリの特長は、低価格な料金と50%を確保した著者還元率、そして容量の範囲内ならタイトル数は無制限でHandbookが登録できること

電子書籍との違いは「コンセプト」「ターゲット」「制作・更新・時間」

Photo 一般的な電子書籍との違いは「コンセプト」「ターゲット」「制作・更新・時間」

 Handbookライブラリを利用したコンテンツ配信と、一般的な電子書籍との違いは、大きく3点あるという。1つはコンセプト。電子書籍は、紙の書籍の再現を重視しており、ページをめくれたり、文字が裏写りしていたり、縦書きだったりと、あくまでも紙の本の体験を置き換えるもの。だがHandbookライブラリは、紙にいはない表現に重きを置いている。例えば映像や図版をふんだんに用いてコンテンツを構成できるほか、クイズを出題したり、アンケートを取ったりといったインタラクティブな作り込みも可能だ。

 もう1つの違いはターゲット。電子書籍は、出版社が持つコンテンツを電子的に広げていく取り組みだが、Handbookライブラリは企業や教育機関のコンテンツをメインターゲットにしている。例えば会社案内や論文、プレゼンテーションの資料などは、多くの場合一部の人にのみ配布されたりしているが、中には下手な書籍よりも価値の高い情報が含まれているものもある。こうしたものは、Handbookライブラリを活用することで、本当にその情報を必要としている人に販売することが可能になる。

 そして3つめの違いは「制作/更新/時間」。電子書籍は、開発者や制作者がいて、その人たちにいろいろ依頼をする必要があったり、リリース時期なども出版社に依存してしまう。アプリとして提供するのであれば、アプリの開発も必要になる。一方Handbookライブラリは、すべてコンテンツを持つ人がコントロール可能だ。制作はHandbook Studioで行え、内容の更新も容易で、App Storeの申請さえ通ればいつでもリリースできる。

対応機種、まずはiPhone/iPod touchから iPad版も準備中

 Handbookライブラリは、インフォテリアがすでにApp Store経由で配信している「Handbook」アプリに追加コンテンツを購入・ダウンロードできるようにする仕組みとも言える。課金はIn App Purchase(アプリ内課金)を利用しており、App Storeで決済する。iTunesにクレジットカードを登録するか、iTunesカードなどで金額をチャージしておけば、そこから代金が支払われる。インフォテリア側では決済の仕組みを用意していないので低価格にプラットフォームを提供できるという特長がある。

 有料のコンテンツは、ユーザーがHandbook Studioから申請をしたあと、インフォテリアの審査を経て、AppleのApp Store向け審査に出される。App Store向けの公開が可能になったところでHandbookライブラリからダウンロードできるようになる。無料のコンテンツはAppleの審査は不要だが、インフォテリアが公序良俗に反するものでないか、反社会的な内容ではないか、といった簡易な審査を経て公開となる。

 なお当初は対応端末がiPhone/iPod touchのみになるが、iPad対応版も準備ができ次第リリースする予定だ。AndroidやWindows phoneへの対応は、今後検討する。特にAndroidは、Androidマーケットというワールドワイドなアプリ販売プラットフォームがあることが魅力だと平野氏は言うが、同時にアプリ内課金などの仕組みがまだ用意されていないため、アプリの提供はまだ行わない。現状ではアプリ内での決済に「決定版」と言われるようなサービスがなく、「早急に対応方法は考えたい」(平野氏)としていたが、明確な時期の言及はなかった。

マニュアルやノウハウの共有ツールに

 Handbookライブラリを利用するには、まずインフォテリアと契約を交わしてHandbook StudioのIDを取得。Webブラウザで動作するHandbook Studioを用いてコンテンツを作成し、最後に「販売申請」ボタンを押すと、インフォテリアに対して販売の申請ができる。インフォテリアは、この申請を受け取ったら内容を簡単に審査したうえで、さらにAppleへApp Storeに公開するための審査に出す。Apple側で承認されれば、晴れてHandbookライブラリでの販売が可能になる。

PhotoPhotoPhoto Handbookライブラリの概要。契約者はHandbook Studioでコンテンツを作成して販売を申請。インフォテリアとAppleの審査を経て、ライブラリにコンテンツが登録され、エンドユーザーに向けて販売できるようになる。価格はリーズナブルな設定とした
PhotoPhotoPhoto Handbook Studioで作成するコンテンツは、テキストだけでなく画像や動画、ファイルなどが添付可能。さらに簡単なクイズやアンケート機能も備えており、学習コンテンツの理解度確認やコンテンツに対するフィードバックの取得なども容易に行える

 Handbookライブラリで販売するコンテンツは、学習/受験勉強用コンテンツ、スポーツ/習い事コンテンツ、広報/PRコンテンツなど、マニュアルやノウハウのような価値ある情報を共有するためのものが中心になる。

 例えば高校の基礎物理のクイズを235問収録したPhotonics World Consortiumの「クイズ基礎物理」(350円)や、ITパスポート試験の勉強ができる富士通エフ・オー・エムの「ITパスポート試験直前対策」(450円)、バスケットボールのプレイ方法などを学習できるフラッグの「プロバスケ選手に学ぶbjリーグクリニック Handbook版2【シュート編】」(115円)、浴衣の着付け方法を映像を交えて紹介する「awai浴衣教室」(無料)などがラインアップされる。このほか、北海道大学の講義の内容を広く一般公開するHandbookや、中央大学の学校案内なども提供予定だ。今後2年間で4000タイトルほどをそろえたいという。

 なお、企業や教育機関での利用をターゲットとするHandbookライブラリだが、士業と呼ばれる弁護士や弁理士、税理士など、高度な専門性が要求される職業からの引き合いもあるという。こうした分野でも、ノウハウ共有のためのツールとしてHandbookライブラリを活用してもらいたい考えだ。

 また料金さえ支払えば、個人ユーザーがコンテンツを公開することも可能だ。ただ、Webサイトやメールマガジンで公開しているような情報を配信する程度では、採算は合わないのではないかと平野氏は言う。企業や学校などでは、例えばePub対応の電子書籍を出す場合、数十万円する専用のアプリケーションなどを導入する必要があるため、その代替としてHandbookライブラリを利用するのは理にかなうが、個人レベルでは投資に見合ったリターンは得られない可能性があるという。


 出版社が提供する電子書籍とはまた違ったアプローチで、スマートフォンを活用したコンテンツ流通プラットフォームとなるHandbookライブラリ。インフォテリアはこのHandbookライブラリで「電子出版のロングテールを実現する」と意気込む。

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