「スマートパスポートを持って、インターネットの世界に漕ぎ出していただきたい」
KDDIがauの新戦略として「スマートパスポート構想」を打ち出した。同社の田中孝司社長は、新構想を「インターネットのオープンで規制のない世界へのパスポート」と表現する。まずは春から、“アプリ取り放題”や“固定通信サービスとのセット割引”といったお得感のあるサービスを開始。さらに、購入したコンテンツを複数のデバイスで追加料金なしに楽しめる環境や、auのネットワークをさまざまな機器でシームレスに利用できる環境も順次整えていき、サービスの「自由」さをユーザーに訴求していく考えだ。
auロゴのデザインも刷新し、“新生au”を始動させたKDDI。その手始めとして発表されたスマートパスポート構想は、(1)月額390円の定額サービス「au スマートパス」、(2)固定通信サービスとスマートフォンのセット割「au スマートバリュー」、(3)KDDIのサービスやネットワークを便利に使うための「au ID」、の3施策が「キーファクターになる」(田中氏)という。
新戦略の目玉の1つであるau スマートパスは、スマートフォンで「良いコンテンツを安心してお得に楽しんでもらう」(田中氏)ためのサービス。月額390円で「モンスターハンター」などをはじめとする人気有料ゲームや「大辞林」といった辞書アプリなど、総額5万円以上、500本以上のアプリが取り放題になる。
容量10Gバイトのクラウドストレージ「au Cloud」による写真や映像のバックアップサービスも、au スマートパスを通じて提供する。さらに、ローソンやグルーポンなどで利用できる各種クーポンサービス、「ウイルスバスター」によるセキュリティサービスも組み入れ、390円で「余りある価値」を提供すると同社の高橋誠専務は胸を張る。また、au Cloudに関してはAPIを公開することで「オープン」にし、他社製カメラアプリとも連携していく方針。「snapeee」や「DECOPIC」といったアプリとの連携に向けた準備が始まっている。
au スマートパスはまずAndroidスマートフォンに向けたサービスとして提供するが、高橋氏は同サービスを夏、秋、冬にかけて「タブレット、PC、テレビなど、すべてのデバイスに広げていく」ことを強調する。いずれも追加料金不要で利用できるようにし、ユーザーに“auの自由さ”を訴求していく。また、定額音楽サービス「LISMO unlimited」や定額のビデオサービスなどもau スマートパスに合流させ、“ワンプライスで使い放題”のプラットフォームとして拡充していくようだ。
料金面ではau スマートバリューも「かなり踏み込んだ」施策だと田中氏はアピールする。同プランは、KDDIと関連するFTTH/CATVの固定通信サービスに加入すれば、家族のauスマートフォン利用料が月1480円(最大2年間)割り引かれるというもの。月5460円のISフラットが月3980円となり、家族4人に適用すれば月5920円の節約になる。固定とモバイル、双方のサービスを統合するFMC(Fixed Mobile Convergence)による「ゲームチェンジ」(田中氏)の足がかりともとらえ、取り組みを進めていく。
スマートパスポート構想は、田中氏が社長就任時から掲げてきた「3M戦略」の第1弾でもある。3M戦略の3Mはマルチデバイス、マルチネットワーク、マルチユースのことで、複数のデバイスやネットワークをシームレスに利用できるサービスの実現が同社の中期的なビジョンだ。マルチデバイス対応サービス/コンテンツの拡充や、固定通信サービスとのセット割引も、3M戦略の下で展開している。
こうした“マルチ”なサービス環境をシンプルにまとめるためのIDとして機能するのが、3月から提供を予定するau IDとなる。従来から提供する「au one ID」をリニューアルするもので、au IDとひもづいたサービスやネットワークは、さまざまなデバイスで利用できるようになっていくという。
例えば、KDDIは公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」を展開中だが、au IDを持っていれば、スマートフォン以外のPCやタブレット端末でも無料でau Wi-Fi SPOTに接続できる。さらに海外約100カ国でも提携の公衆無線LANサービスを、「au Wi-Fi 接続ツール」によって各端末で利用できるようになる。au IDはこのほかにも、購入したアプリやコンテンツを複数のデバイスで利用したり、ユーザー同士でコンテンツをシェアするために利用される。
夏にはテレビやPCとの連携、さらに秋冬にはLTEサービスとの連携が始まり、スマートパスポート構想は「完成していく」(田中氏)予定だ。また、Android端末に限らず、他のスマートデバイスプラットフォームでもau IDを使えるようにする方針で、交渉を進めていくという。
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