3M戦略を具現化し「ゲームチェンジ」する2012年――KDDI 田中社長に聞く:新春インタビュー(1/4 ページ)

» 2012年01月04日 10時30分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 KDDIにとって、2011年はかつてないほど激動の年になった。

 2010年12月に新社長に就任した田中孝司氏の指揮の下、スマートフォン分野での出遅れを取り戻すべく、ラインアップを拡充。従来から取り組んでいたAndroidスマートフォンに加えて、マイクロソフトのWindows Phone 7.5搭載端末「Windows Phone IS12T」と、Appleの「iPhone 4S」を獲得。スマートフォン分野での“フットワークのよさ”で、ライバルのNTTドコモとソフトバンクモバイルを上回り、いちはやく“3プラットフォーム体制”を構築した。

 インフラ分野でもKDDIの強みを生かすべく、新たな手を打った。傘下のUQコミュニケーションズとの連携を深め、スマートフォンやWi-FiルーターにモバイルWiMAXを搭載。LTEサービス「Xi」で先行するドコモに対して、グループ内のモバイルWiMAXを使ったマルチネットワーク路線で対抗軸を作った。

 そして2012年。auの勢いはさらに盛りあがり、スマートフォンを始めとする新たな時代を牽引する役割となれるのか。そして、総合通信キャリアとしての強みを生かしきれるのか。KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏に聞いていく。

2011年は「目標の8割程度はできた」

―― 昨年(2011年)は田中新体制の1年目でしたが、その手応えはいかがでしたか。

Photo KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

田中孝司氏 これは社長就任の時にも申し上げましたが、2011年は「auモメンタムを回復する年」と決めていました。社内的にもマインドセットの変更を徹底しました。

 このauモメンタムで何を追っていたかと言いますと、4つのKPI(重要業績評価指標/Key Performance Indicators)がありました。1つは「解約率」、2つ目が「MNP」、3つ目が「純増数」、そして4つ目が「データARPU」です。

 結果はどうだったかと言いますと、「解約率」は大幅に減少して二重丸でした。今では(解約率は)0.5%を切っており、非常にいい結果が出ています。「MNP」の部分でも成果が出ていまして、想定より半年前倒しで(他キャリアへの転出と他キャリアからの転入の差し引きで)プラスになりました。これも二重丸です。「データARPU」もスマートフォン移行が進んで伸びていますので、財務的にも手応えを感じています。

 しかし、その一方で、純増数の部分はどうかといいますと、ここは「ちょっと荒れているな」と感じています。我々もTCAのデータを見ていますけれども、例えばソフトバンクモバイルが“機種変更=純増”みたいなスキームをやっていたりとか。そういった背景もあって、我々はもう純増数の数字を(指標として)追うのはやめようと考えています。

―― 確かに今もっとも重要なのは、「解約率」と「MNPでの競争力」ですね。その点では、KDDIは2011年にプロダクト戦略が成功して、ラインアップを充実させることができたメリットが出ていると言えるでしょう。

 現在の市場全体の変化は、どうご覧になっていますか。

田中氏 僕は“お客様を中心とした世界に変わっていく”段階にあると見ています。この変化が2011年から始まっています。

 昔(フィーチャーフォンの時代)はキャリアがすべて準備して、「これを使ってください」としていました。しかし、スマートフォン時代には、お客様自身が選ぶようになっています。ですから我々は2011年に品ぞろえを増やすことに注力し、(選べることを訴求した)ああいったCM展開を行っていったのです。

―― フィーチャーフォン時代の考え方は、「全部入り」と「お膳立て」が基本でした。しかし、スマートフォンから始まったスマートデバイスの時代では、むしろお客様を中心に据えて「選べること」を重視した戦略が重要になる、というわけですね。

田中氏 なぜ、“選べること”を重視しているかと言いますと、それは我々が大きな目標としている「3M(マルチデバイス・マルチネットワーク・コンテンツマルチユース)」にも関わっているからです。

 例えば、家族という視点で見た場合、父親は“エリアがよくてハイスペックのスマートフォンが欲しい”、母親は“できるだけ使いやすくて、かわいいデザインのものが欲しい”、子どもは“iPhone 4Sが欲しい”とか、ニーズは多様なわけです。キャリアからすると、ここにバリエーション豊かな製品やサービスを供給して、お客様にさまざまな選択肢や組み合わせを選んでいただけるようにする。これが大事になってきていますね。

―― 選べることを軸にしたマルチデバイス化は、2011年にかなり進みましたね。マルチネットワークへの布石はいかがでしょうか。

田中氏 ネットワークに関してはスマートフォンでオーバーフローすることが分かっていましたので、Wi-Fiスポットの「au Wi-Fi」をきっちり作ってきています。(2011年度中に)10万スポットと目標設定していますので、それに向けて進捗しています。

 一方、(お客様との接点となる)OTT(PCを経由せずネットワーク上のコンテンツやサービスを提供する事業・デバイス/Over the Top)の部分は、2012年の3M戦略のベースになってきます。ここではFacebookとのコラボレーションが順調に進んできていますし、それ以外の取り組みも進捗しています。この部分は欧州オペレーターのような競争軸ではなく、(他社との)コラボレーションが軸になると考えています。自ら投資し提供するLISMOのようなものもありますが、レベニューシェアで他社とコラボするモデルも構築できつつあります。

 総括すると、2011年に我々がやらなければならないことの8割くらいはできたのではないかと評価しています。

ブラウザ型推進でプラットフォームごとの垂直統合を外す

―― プロダクト戦略で見ますと、iOS、Android、Windows Phoneと現在有力な3つのプラットフォームをすべてそろえているキャリアはKDDIだけです。それぞれのプラットフォームを、どのように評価されていますか。

Photo

田中氏 僕は(中長期的には)Androidが強い、と見ています。iOSはスマートフォンの黎明期には5割くらいのシェアを持ってましたけど、今は5割を切る状態になっている。おそらくiOSの世界は、スマートフォン市場全体の3割くらいになるでしょうね。もちろん、いきなりiOSが3割になるわけではありませんが、徐々に(iOSのシェアが落ちて)そういう風になっていくのではないかと見ています。

 一方、Windows Phoneは、まずは我々として(Windows Phone)7.5の端末を出しましましたが、メインは次の8でしょう。今はそれに向かって準備をしていく段階で、急に一気に売るというものではない。まだPeople Hubのところとか、(一般市場にまで簡単に)浸透できるものではない。2011年、我々がHTCの「EVO WiMAX ISW11HT」でモバイルWiMAX対応を初めてやった時のように、先行して取り組んでいる段階ですね。

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