転職、リストラで手に入れたものは?アラフォー起業家の“継続拡大”人脈術

終身雇用制が崩れかけている現在、転職は日常茶飯事になっている印象を受ける。筆者自身がリストラされた経験から、リストラやそれに続く転職の過程で見えてきたメリットをご紹介しよう。

» 2009年04月28日 14時40分 公開
[加藤恭子,Business Media 誠]

 外資系IT企業歴がそれなりに長く、起業する前は、米国ナスダック上場のソフトウェア会社の日本法人マーケティングの責任者をしていた。外資系勤務の場合、リストラは日常茶飯事。売り上げの達成できない営業担当者が解雇される光景に何度か出くわしたことがある。

 また、日本法人の社長はある意味「日本支社の営業部長」という位置づけなので、売り上げが達成できないと別の社長に変わる。セクハラで消えていく幹部も見た。新社長が部下を連れてきて、社員がほぼ入れ替わるケースもある。外資系ITでなくても、今は終身雇用制が崩れていることもあり、転職は日常茶飯事になっている印象を受ける(超大手の大企業除く)。

 今考えてみると、転職には以下の良い面があった。

  • いろいろな上司の下で働けるため、さまざまなマネジメントスタイルを知ることができる(マイクロマネジメントの弊害なども見えてきた)
  • いろいろな仕事の進め方を体験できるため、それを元に自分の仕事スタイルを確立していける
  • 一個所(特定の1つの会社)でしか通用できない仕事スタイルではなく、次の会社でも通用する仕事の方法が身につく(どの部分が会社のローカルルールなのかが見えてくる)

 これだけでも十分な利点であるが、これを上回る利点はずばり「人間関係の広がり」である。

 以前ブログにも書いたが、私もリストラをされたことがある。「何かやっちゃったんじゃない?」と言われるが、外資系IT企業の正社員リストラは日常茶飯事。元同僚もマーケティングや営業担当者は大半が一度は経験している。私は、リストラ後に内定をもらった会社がM&Aで採用自体がなくなり、あわててよく調べもしないで入社した会社が肌に合わず、1年ほどで退職してしまったという経験もある。

 でも、それらの経験を通じて格段に人間関係は広がった。一緒に仕事をした相手であるので、こちらが何が得意か、何が苦手かも把握してくれている。会社が変わっても一緒におもしろい仕事をしたり、情報交換をしたりと、仲良くさせてもらっている。

 プライベートでも遊ぶ友人になったり、重要な取引先になったりもしている。相談ごとを聞いてもらったり、仕事でもアドバイスをもらったりしている元同僚や上司もいる。困ったときに助けてくれる元部下もいる。中には、短期間しか在籍しなかった会社で知り合ったのに大事な友人もいるので、その転職は無駄にはならなかったのだなと改めて思う。

 実際問題として、とても嫌な思いをして辞めていく人もいると思う。自分から望まない転職もあると思う。しかし、辞めるときにはちゃんと連絡先を伝え合ってやめていってはどうだろうか。引継ぎもきちんと行うことで、お互いにWin-Winになる。引継ぎをしないでいきなり消えた人と将来的に取引をしたいと思う人は少ないだろうし、その人を採用したいと思わないだろう。それに、きちんと引き継いでやめたら自分も気持ちが良いのではないだろうか。

 この不景気、安易な転職はお勧めしないが、転職せざるを得ない場合、跡を濁さない転職が良い人脈を作ると思うのだがいかがだろうか。なお、履歴書情報を公開できるビジネス特化型SNS「LinkedIn」を活用することで、元同僚の連絡先や転職情報は管理が比較的容易になるのでお勧めしたい。

著者紹介:加藤恭子(かとう・きょうこ)

 IT誌の記者・編集者を経て、米国ナスダック上場IT企業の日本法人にてマーケティング・広報の責任者を歴任。外資系企業ならではの本社へのリポートの方法や、離れた地域にいる国籍の違う同僚とのコミュニケーションを通じて、効率よく実施する仕事のノウハウを高める。現在は、その経験を生かし、IT企業・組込み系システム企業のマーケティング・PR(広報)のコンサルティングを行うビーコミの代表取締役として活動。日本PR協会認定PRプランナー。

 日経BP社、翔泳社、アイティメディア、ダイヤモンド社、アスキーなどで連載や記事も寄稿。インターネットを活用したコミュニケーションも研究しており、複数の学会などでブログコミュニケーションやネットPRに関する発表をしているほか、「CGMマーケティング」(伊地知晋一著、ソフトバンククリエイティブ刊)の編集協力も務めた。青山学院大学国際政治経済学研究科修士課程修了。現在は某大学院の博士課程に在籍し、引き続きコミュニケーションを勉強中。


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