「自分の不幸は他人の笑い」から始めるビジネスパーソンの原稿書き入門樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

「人間は毎年8つほど、とても面白く、珍しく、参考になる体験をしている」というのが筆者の独断的仮説。ただ自分にとって面白くても他人にとって面白いかどうかは分からない。そんな時は、自分の不幸や失敗を書いてみるといいだろう。

» 2009年06月12日 16時47分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]

 「人間は毎年8つほど、とても面白く、珍しく、参考になる体験をしている」というのが筆者の独断的仮説だ。人並みの好奇心があれば、この仮説は正しいと思っている。

 ただ読者にとっては「とても面白い」エピソードが、本人には「ひどい体験」であったり、「心臓が止まるほどの驚き」であったり、「辛い失敗」であったりする。逆に本人が面白いと思うエピソードであっても、他人にとっては「何が面白いの?」「それで?」と言われるようなこともある。

 筆者の場合は、海外生活で自分が遭遇した旅行の失敗、海外の悪徳税関吏や悪徳警官のキツい体験は全部原稿にした。時には自分を笑いの対象にしてでも、後続の人たちに同じ辛さを与えないように記事を書いているのだ。

 交通事故でサウジアラビアの拘置所にぶち込まれた時も、手帳に体験談を書いていた。サウジの友人が保証人になってくれたので、結局2時間ほどで拘置所からは出られたのだが、その間、筆者は拘置所内でインタビューをして手帳に書き留めていた。

 体験は、その場で書かないと迫力を失う。交差点で停止していて、追突されたこともネタにした。追突してきた車が逃げたので、追いかけたのだ。その車は自分の村に逃げ込んだので、筆者は村人に抗議したら、リンチにあって命からがら警察に逃げ込んだことなども、体中が痛む中、ホテルで書き続けたものだ。

 砂漠で車輪を砂にはめ込んで、夜中1人で歩いた。カシオペア座のおかげで、正しい方向に帰れた体験など、筆者には恵まれた体験がいっぱいあったことも事実だ。

 とにかく、ひどい目にあったらまず体験を書いておこう。それだけで、大切な原稿になる。泥酔していて馬鹿をやってしまうようなことも、かっこうのネタになる平和な国・日本だ。

 一方、明るいネタを探すのは大変。筆者には1つだけある。ネパールに駐在していた時に知り合った茶園のオーナーの息子が、日本の大学に自費留学してきた。このネパール人学生は2年間大学で学びつつ、学費と生活費をねん出するために、毎日必死になって働いた。日本語もたちまち上手になっていった。

 その間、我が家では何度も食事に呼び、時に仲間を募ってバスの温泉ツアーに連れて行き、故郷に国際電話をかけさせたりなど、協力を惜しまなかった。とうとう卒業の時に彼は、筆者のヨメサンの仲間からもらったアドバイスを受けて、日本の企業に入社。彼の卒業式には筆者とヨメサンが親代わりで招待されたのだ。筆者達夫婦の国際支援は、いつもPtoP(パースントゥパースン)なのだ。

原稿のエピソードに困らない人になるチェックポイント

  1. 何度も海外生活をした
  2. 毎月何度か海外や国内で出張する
  3. 毎月交流会を仕切ったり、何件か参加している
  4. 仕事以外に生きがいを作っている
  5. 読書にのめり込むあまり、書いてみようとファンタジーの世界に生き始めた
  6. 仕事だけで一日を終えない人

今回の教訓

 ファンタジーな体験をお待ちしてます(誠 Biz.ID編集部)


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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