四輪自転車の改造、ついに実現――計画マンに強力な助っ人現る樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

我が家の財務省を説得し、四輪自転車「ZEM」を5台買い取った。しかし1人で5台改造するのは難しい。そこで付き合いのある大学に共同研究を持ちかけたのだった。

» 2009年11月27日 08時30分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]

 先週話した四輪自転車「ZEM」のことを徹底的に調べたら、日本でZEMを何台か所有している人がいることが分かった。電話で連絡を取り、新幹線で数時間かけて訪問した。その人はZEMを5台も持っていた。

 所有者に5台全部を買い取ってくれないかと言われた。完成車に試乗して、かなり気に入っていたが、1人で5台も改造をするのは難しいし、ヨメサンの購入承認がおりないことも恐れた。そこでわたしは最後の手段をとった。「ZEMをヨメサンの持ち物にする」ことで、我が家の財務省を説得したのだ。しかし、どこで改造するのか……。

 そんな時、大学校との共同研究を思いついた。以前に講演をしたことのある、職業能力開発総合大学校東京校の准教授に連絡を取って、ある提案をした。「アイデアマラソン研究所が四輪自転車を無償で供給するので、学生たちの研究対象として、無公害の電動アシスト四輪自転車を共同研究してはどうか」と。

 この大学校には、生産技術科や、制御技術科、電子情報技術科、産業デザインなど、たくさんの専門課程があり、生産技術1つをとっても、さまざまな先端設備がそろっている。共同研究としてはまさに最適のパートナーである。

 先生も熱心で協力的。学生たちもやる気があった。同じ電動アシストのユニットを付けるなら、最新鋭の回生モーターの方式にしようと話がまとまった。わたしは5台のZEMを購入し、うち4台を大学に運び込んだ。

 学生たちは卒論でZEMの改良を取り上げることになった。1台のZEMに対して、回生モーター付きの電動アシストを2台、後輪の左右に取り付ける設計と改造作業を開始した。車輪の大きさと回生モーターがぴったりと合わないことから、予想よりはるかに大きく複雑な改造が必要となった。

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 学生たちは、卒論の研究対象として3年間ZEMの改造に取り組んだ。教授たちの熱心な指導のおかげもあって、ZEMの改造研究は進んだ。駐輪している間にもバッテリーに充電するため、ソーラーパネルをZEMの屋根として使うことになるなど、改造の夢はさらに大きくなった。

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 こうしてようやく完成したのが、おそらく日本初であろう「ソーラーパワー自己充電式電動アシスト四輪自転車」のプロトタイプ、その名も「e-ZEM1号」である。スイッチの切り替えやソーラー充電の効率など、現在もテストを続けている。

 風力発電で夜間も充電を続けることや、燃料電池で走行中も充電することにも挑戦したいと思っている。これが完成したら、まず日本縦断を試みたい。そして念願のオーストラリア東岸を南北に走りたい。

今回の教訓

 ヨメサンの持ち物なのに――。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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