名刺のデジタル管理に本命なし(今のところ)最強フレームワーカーへの道

名刺管理は、ビジネスマン共通の悩み。デジタル化は必須だが、はたして本命はあるのだろうか。スキャナ、iPhone、Pokenなどの個人向けサービスから、ちょっと高めの法人向けソリューションまでをご紹介しよう。

» 2010年04月21日 17時06分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 「あれっ? あの人の名刺どこ行ったっけ?」と机の名刺フォルダから1枚ずつ名刺を見ながらお目当ての名刺を探しだすのは、よくある光景だ。最近の名刺であればいざ知らず、半年くらい前に会った人などは探しだすのも大変。わたしの場合、しょっちゅうパーティや会合、商談などで大量の名刺を頂戴するので、その整理は頭の痛い問題である。名刺フォルダに整理するにしても、名刺交換した日付で並べればよいのか、社名で並べればよいのか、あるいはカテゴリで分類すべきか、非常に迷う。

 名刺管理は、ビジネスマン共通の悩みである。特にオンラインコミュニケーションがベースとなっている現代においては、名刺のデジタル化は非常にニーズが高い。しかも欧米などに比べて、特に日本では名刺のステータスが高いのだ。個人の能力よりも、どの組織に属しているかがステータスとみなされる風潮があるからだろうと思う。

 本来は、ビジネスSNSの「LinkedIn」や実名が基本のSNS「Facebook」などでお互いに個人情報をシェアすれば済む話なのかもしれないが、まだまだ日本では普及していないし、名刺交換というビジネススタイルも当面なくなることはないだろう。であれば、名刺のデジタル化が必須だ。

おなじみFacebook。主にネットワークはパーソナルなものが中心だ
LinkedInはビジネスに特化したSNS。現在所属している企業や役職、過去の履歴などもシェアする。日本では残念ながら普及の途上にある

 名刺情報を自分でコツコツ、名刺管理ソフトに入力した経験を持つ人も多いだろう。かくいうわたしもその1人だった。しかし、入力が手間だし、その後に該当する人が転職したり、部署が変る度に更新するのは大変だ。OCRで処理するにも精度の問題がある。そんな状況の下、いくつか現段階で利用されている名刺管理のしくみをひも解きながら、将来の名刺管理のあり方を考えてみたい。

手軽なスキャナ、でもデータの修正は必要

 まずは、名刺を自分でデジタル化するためのソリューションから。わたし自身、以前はScanSnapと付属の管理ソフトで名刺を管理していた。ScanSnapで名刺を通すと、名刺の画像がPDFや画像として登録され、OCRで読み込み、それを後から検索できるというもの。ただし、OCRの読み取りミスは確実に残るので、「名刺画像管理」として割り切るか、自分でチマチマ修正する必要がある。

手描きのメモや名刺の整理にぴったりのスキャナ専用機「ScanSnap S1500」
ScanSnapで読み取った名刺。読み取り精度は高くなくても、画像として管理するという割り切りがあれば、使えなくはない
iPhoneアプリのWorldCard Mobile。カメラで読み取り、デジタルデータとして管理する

 同様のものとしてiPhoneのカメラから読み取るアプリもある。「WorldCard Mobile」(iTunesが開きます)がそうだ。iPhoneのカメラのマクロモードで読み取り、英語や日本語のOCRをかけて登録できる。

 比較的読み取り精度は高く(認識率は公表値で96%)手軽ではあるが、枚数が増えると面倒なのと、やはり最終的には自分でチェックや修正が必要になる。実際にWorldCard Mobileを使ってみると分かるのだが、せっかくスキャンした名刺画像はアプリ上で管理できず、読み取った名刺情報も「連絡先」に登録されるだけだ。画像と連絡先情報を一緒に見ながら管理ができない点は不満が残る。


精度は高い企業向けソリューション、価格がネック

 また、名刺のデジタル化を支援してくれる企業向けのソリューションもある。「アルテマブルー」「Link Knowledge」がそうだ。専用のスキャナに名刺を入れると、読み取った画像データをセンターに転送し、人の手で入力するという。

 精度は100%に近く、リンクナレッジでは企業の人事情報やプレスリリースと名刺の情報を連動してくれるので、便利だ。ニーズとしては完全に満たされているが、一方で入力コストが高いのがネック。例えばリンクナレッジでは基本料金8500円で名刺が20枚まで入力可能だが、超過分は1枚あたり80円の加算。1人で数十枚の名刺を月にもらうような人が何人もいるような部署では、かなりのコストになってしまう。

リンクナレッジでは、名刺の入力から企業情報やプレスリリースとのひも付けも

PokenやBumpは面白いけども

 こうした紙の名刺をデジタル化するのではなく、デジタル名刺情報を交換するガジェットも登場している。1年前から日本に上陸している「Poken」もその1つだ。

デジタル名刺ガジェットの手をハイタッチして、データを交換するPoken

 スイス発のデジタル名刺ガジェットで「ポーケン」と呼ぶ。Pokenの手の部分を1、2秒かざしあって“ハイタッチ”して情報を交換する。ハイタッチ後、緑のランプがつけばデータ交換成功! こうしてPokenをPCのUSBソケットに挿入すると、デジタル名刺を交換した相手の情報が一元管理されているというわけだ。Poken自体は2000円くらいだが、企業がお土産代わりに企業ロゴ入りのオリジナルPokenなどを配布するというカタチで普及を図っている。楽しく、気軽であるが、このPokenを持っている人がまだまだ少ないので、仕事には向かないのが残念だ。

 かざしあってという意味では、飲み会などでは携帯電話の赤外線通信機能を利用した情報交換が一般的だが、iPhoneやAndroid携帯といったスマートフォンでも同様のアプリが出ている。それが「Bump」(iTunesが開きます)である。あらかじめ入れておいた個人情報をiPhoneをぶつけ合うことで、交換できる。ただ、Bumpが動作するスマートフォン同士でなければならない。

こちらは、あらかじめ入れておいた個人情報をiPhoneをぶつけ合うことで、交換できるという「Bump」。

 こうして名刺管理を改めて見直すと、コストメリットと手軽さがそろったベストなサービスは残念ながら今は見当たらない。いっそのこと、政府あたりがデジタル名刺の規格を統一してくれれば――とも思う。SNS、Twitter、名刺情報……。いろんな場所に散在した自分の個人情報と人脈管理を何か一元的に管理できるソリューションは出ないものか。ないなら、自分で作ろうか……。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

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