撤退の決断が早いほど、ダメージは小さくなるトップ3%の人の仕事のルール

何事も先へ行く勇気は大事ですが、それ以上に退く勇気が必要です。撤退の判断が早いほど、受ける損失は少なくて済むからです。トップ3%の人は、撤退することを恐れないものです。

» 2013年11月22日 11時00分 公開
[石原明,Business Media 誠]

集中連載「トップ3%の人の仕事のルール」について

 本連載は、石原明著『トップ3%の人だけが知っている仕事のルール』(中経出版)から一部抜粋、編集しています。

トップ3%に入るような成功者は、少し違った基準で仕事をしています。その基準の多くは、細かいスキルや能力を伴うものではなく、仕事に対する姿勢やモノのとらえ方に関するものです。

ビジネスやプライベートに関係なく、人生において望んだ結果を得るために必要な知識や考え方の基準、さらにはお金の使い方や学習の方法まで、幅広い分野について「教訓=インストラクション」という形でまとめました。

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登山時の事故が多いのは、登るときではなく下りるとき

 ある登山家に聞いた話です。

 山に登るとき、どの過程でいちばん事故が多いかというと、登るときではなく、下りるときだそうです。

 例えば、エベレストに登るとき、実際に登る前に2年半とか3年という時間をかけて、さまざまな訓練や準備をしたり、入念な調査を行います。やっと登りはじめることができても、今度は、山の天候を見ながら、数日をかけてふもとから登っていくわけです。

 だから「あと少しで登頂できそうだ」というその最後の最後で、つい無理をしてしまうことがあるといいます。

 「もう少しすると、山の天気が荒れるかもしれない」という不安が頭をよぎりながらも、「ここで引き返したら、これまで努力してきた積み重ねが台なしになり、下山の日程も狂ってしまうことになる。だから、このまま行ってしまおう」と、無理をして頂上を極めてしまうというのです。

 しかし、仮に無理して登頂できたとしても、いざ下山をしようというときに、恐れていた通り天候が急変し、下山を急ぐあまり事故に巻き込まれる、ということがあるといいます。

 こうしたときに「今回はダメでも、また挑戦することができる」と、状況を冷静に判断し、下山を決断できる人がリーダーでなければ、命を落とす事態になりかねません。

撤退の決断が早いほどダメージは小さくなる

 会社経営やプロジェクトでも、このような場面には頻繁に出くわします。

 バブル期に、ある企業が「100周年記念事業」としてリゾート開発をスタートさせました。

 入念な準備をし、大量のヒトやモノ、カネを投入して大々的に告知したこともあり、「このまま続けたら危ない」と分かった時点でも、もはや止めるに止められなくなってしまいました。

 そのままズルズル開発を続けていたら、いよいよバブルが崩壊。

 「この計画は無理かもしれない」と誰もが分かっていても、その計画を止める人が現れなかったのです。いざ撤退が決まったときには、すでに3000億円という赤字を抱えていました。

 先へ行く勇気は大事ですが、それ以上に退く勇気が大事なのです。

 トップ3%の人は、撤退することを恐れません。

 もしあなたが携わっている仕事やプロジェクトが失敗することが目に見えているのに、惰性で続けているならば、撤退を検討する必要があるでしょう。

 撤退の判断が早ければ早いほど、受ける損失は少なくて済みます。

ACTION

失敗が見えている仕事があれば、勇気ある撤退を検討しよう。



(次回は「5人の著者のすべての本を読む」について)

著者プロフィール:

石原明(いしはら・あきら)

日本経営教育研究所代表、僖績経営理舎株式会社代表取締役。ヤマハ発動機(株)を経て、外資系教育会社代理店に入社。「セールス・マネージャー世界大賞」を受賞後、日本経営教育研究所を設立、経営コンサルタントとして独立。現在、中小企業から大企業まで、業種や企業の規模を問わず幅広いコンサルティング活動を行っている

主な著書に『トップ3%の会社だけが知っている儲かるしくみ』(中経出版)、『営業マンは断ることを覚えなさい』(三笠書房)、『社長、「小さい会社」のままじゃダメなんです!』(サンマーク出版)などがある。


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