民間による宇宙ビジネスが加速している。米スペースXによる民間宇宙船クルードラゴンは、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する宇宙飛行士の輸送を2020年に始めた。日本人宇宙飛行士では、野口聡一さんが約半年間の滞在を終え21年5月に帰還。現在は星出彰彦さんがISSに滞在している。スペースXは1万を超える人工衛星を打ち上げて世界中にインターネット接続を提供するスターリンクプロジェクトも進めるなど、米国企業が中心となって宇宙開発を牽引しているのが現状だ。
日本でも民間の小型ロケット開発や、人工衛星による地球観測とデータ活用など、多様なベンチャー企業が宇宙ビジネスに参入。異業種からの参入が多いのも日本の特徴で、この動きを宇宙航空研究開発機構(JAXA)が後押ししている。こうした企業や機関、団体が集積している拠点の一つが、東京・中央区の日本橋だ。オフィス街の日本橋に宇宙産業が集積する背景には、日本橋の再開発に取り組む三井不動産の存在がある。交流の場の提供やマッチング、情報発信など、民間の宇宙ビジネスをさまざまな側面から支援している。
三井不動産は4月、JAXAとの共創プロジェクト「X-NIHONBASHI Global Hub」を日本橋の室町三井ホールで開催した。米航空宇宙局(NASA)やJAXAのほか、米国で宇宙ビジネスに参入している日本企業の関係者がパネリストとして参加。「注目の宇宙産業のこれから」をテーマに宇宙ビジネスへの参入機会や、日米連携の可能性を議論した。同イベントを取材し、宇宙ビジネスに取り組む背景を三井不動産に聞いた。
東京・日本橋で開催されたX-NIHONBASHI Global Hubには、宇宙ビジネスへの参入を検討している企業などから多くの関係者が参加。世界で急速に拡大している宇宙ビジネスへの関心の高さが伺えた。会場では新型コロナウイルスの感染防止策が講じられた上で、講演やパネルディスカッションなどが展開され、その模様はオンラインでも同時配信された。
冒頭にJAXAの石井康夫理事があいさつし、「宇宙開発を長年やってきましたが、本当にここ数年の変化には目を見張るものがあります」と、米国と日本の民間宇宙ビジネスの現状を説明。米国が中心になって進めている、月の探査と将来的に火星の探査も視野に入れた「アルテミス計画」に日本政府とJAXAも参加していることに触れ、参加者に次のように呼びかけた。
「日本人宇宙飛行士が月で活躍することが近くなってきているのではないかと期待しています。その活動が、やがて新しい経済活動になっていくと考えていますので、興味をもっていただければと思います」
続いてNASAアジア代表として在京アメリカ大使館に駐在しているガーヴィー・マッキントッシュ氏が、NASAの現状について説明。「日本は世界中のどの国よりも、NASAが最も信頼するパートナー」と宇宙開発への参加を呼びかけた。
パネルディスカッションでは、宇宙ビジネスに参入している企業関係者が、今後の可能性や、米国での事業の実情などについて議論。また講演では、新規事業や課題解決を支援する宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)を進めているJAXAの伊達木香子新事業促進部長が、民間とのプロジェクトの現状を紹介した。
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