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ヤマト運輸が舵を切るデータ・ドリブン経営 “DX請負人”の中林紀彦執行役員を直撃再配達をなくせるか(3/4 ページ)

» 2021年11月18日 12時43分 公開
[中西享ITmedia]

デジタル化とDXの課題とは

――これまでいくつかの会社でデジタル改革を担当していますね。日本企業に共通する課題としてはどんなことが挙げられますか。

 デジタル改革にいくつも関わってきました。「データがたくさんあるので何かできるのではないか」といった方法論から入ることが多いのですが、これではうまくいきません。きちんとした事業戦略のなかに戦略としてデジタル化を落とし込んでいかないと、うまくいかないからです。

 経営陣から「人と組織を作って何かやれ」といわれても、担当者は具体的に何をやればよいのか分からなくて戸惑うことが少なくないですね。

――DX改革を加速させるためには、企業のトップの理解が不可欠だといわれていますが、どう思いますか。

 少しずつですが日本企業の経営陣も変わってきている印象があります。特にDXが叫ばれるようになってからは理解のある経営陣が増えてきています。当社社長の長尾もこの点は十分理解していて、データ・ドリブン経営をしないと立ち行かないという危機感を持っています。

 スカウトされた時は「データ戦略の実行が欠けていたので、やってくれないか」と言われました。会社を変えていくフェーズの時にDX改革は必要だと思っていたので、ヤマトでデジタル改革を担当することになりました。経営メンバーにデジタルを使いこなせる人材がいないと、企業は前に進まない時代になってきています。

――DX改革を進めようとすると専門的な人材が必要になりますが、どのように獲得していますか。

 現在データサイエンティストは数十名いますが、ヤマトにはいなかった人材なので全て外部から中途採用しました。デジタル人材として、昨年度は2桁後半の人数を中途採用しましたが、今年も同じくらい採用する計画です。この方式は私が昨年新たに策定したデジタル人材の「エキスパート制度」に沿ったもので、待遇は従来の年功序列とは異なるジョブ型に基づき、マーケットを加味した形で採用しています。

 職種はデータサイエンティスト、アーキテクトなど9職種を定義し、客観的な評価に基づいてジュニア、ミドル、シニアにランク付けしています。ミドルクラスの年収は650万〜1100万くらいです(2021年10月時点)。こうしたエンジニアの中途採用の面接をしていると、大きなデータを使って社会貢献できることに魅力を感じる応募者が多く、宅配という身近な仕事である点も応募が増えている理由だと思います。人材獲得には初年度から特に力を入れています。

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