少子高齢化の影響により、2030年には多くの業界で労働力不足が懸念されている。特に高齢化社会を支える医療や介護の業界では、187万人が不足するという。その解決策として有効な方策の1つが、医療・介護従事者の7割から8割を占める女性が働きやすく、活躍できる職場を作ることだ。
千葉市の幕張メッセで10月に開催された「医療と介護の総合展 東京」(主催・RX Japan)では、医療や介護の現場で女性が活躍できる職場を作るためのセミナーが開催された。
「厳しい競争の中で生き残るための経営戦略とは?」と題して講演したのが、川島労働衛生コンサルタント事務所代表、産業医の川島恵美氏だ。この講演は予防医療普及協会理事の堀江貴文氏、日本家族計画協会の北村邦夫会長らとのセッション「女性が活躍できる職場をつくるために管理者が知っておくべき解決策」の中で行われた。
会場に集まった医療機関や介護施設の経営者に向けて、人材確保のためには女性特有の疾患を理解した「健康経営」を進めることが重要だと語った。川島氏の講演の模様をお伝えする。
女性の取締役を採用すると業績が上がることが、民間企業で話題になっています。女性の活躍を推進するとともに、管理職や取締役に占める女性の割合を上げようとしている民間企業は増えつつあります。
業績への効果については、さまざまな報告もされています。1つは女性取締役の採用と、ROE(自己資本利益率)などの会計上のパフォーマンスとの間には正の関係があり、企業の効率性に貢献することです。
もう1つは、取締役会の2つの重要な機能である、モニタリングと戦略との関わり合いが促進されることです。いずれの場合も、女性はあくまで一例で、取締役会に多様性をもたせることによって得られた効果を表していると考えられます。
では、医療や介護の現場ではいかがでしょうか。職場では女性の割合が高く、7割から8割を女性が占めるといわれています。他の業界に比べて女性の管理職比率が高いことも特徴です。ただ、現場のリーダーとして働く女性は多い一方、取締役など経営陣の一員になることはそこまで多くはないように思います。
ボストンコンサルティンググループが2017年に実施した調査によると、女性と男性が有効だと考える女性の活躍推進の取り組みには、大きなギャップがあることが分かりました。
女性の活躍推進に有効だと考える取り組みで、女性マネジャーが2番目に挙げているのは「法律で定められている以上の育児休暇」。ところが、男性のシニアマネジャーはこの取り組みを5番目に挙げています。
また、「柔軟な勤務時間と勤務場所」についても、女性マネジャーが3番目に挙げているのに対し、男性マネジャーは4番目に挙げています。さらには男性が1位に挙げているものは女性では6位、女性が1位に挙げているものは男性では9位であり、認識の差に違いがあることが分かります。
女性を経営層に登用することによって、女性の社会的な役割や、男性との生物的な違いを持った視点が入ることになり、このギャップを埋める可能性があると考えられています。
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