以上のような女性特有の疾患の影響を踏まえて、医療や介護の現場で女性が活躍するためのアプローチを6点挙げてみます。
1点目は柔軟な休暇制度や勤務形態を採用することです。コロナワクチンの接種を進める際、医療従事者が不足して、潜在看護師の活躍が期待されましたが、現場復帰はなかなか進みませんでした。その理由は、就業可能な時間帯がかみ合わなかったからです。
私がワクチン接種をしていた職場では、1日あたりの勤務時間を短くする、午前・午後と選択できるなどの施策を設定していたため、看護師の確保に困ることは一切なく、無事接種を終えることができました。難しいとは思いますが、勤務時間や曜日が選択できて、突発的な休みにも対応できることは、働く女性にとって大きなメリットになり、離職率の低下につながる可能性があります。
2点目は適切な人員配置です。育児休暇から復帰した後の職員をプライベートやキャリアを考慮して配置することです。労働生産性の向上に効果があり、結果的に経営的にもプラスになります。
3点目は、婦人科がん検診の推奨です。前述したように、就労世代では乳がんや子宮頸がんに罹患する人が少なくないので、がん検診を推奨し早期発見と早期治療を行うことで、長期の傷病休職を防ぐことにつながるのではないでしょうか。検診を受ける時間を確保する、院内で受診できるようにするなどが挙げられます。民間企業では大企業中心ではありますが、関心が高い対策の一つです。
4点目は女性の健康について情報提供をすることです。女性に関するヘルスリテラシーが高い方が、プレゼンティズム(健康の問題を抱えつつも仕事をしている状態)が大幅に少なく、PMSを経験したときのパフォーマンスが優れていることが報告されています。全員が知識を持つことで、自分だけでなく同僚の不調にも気付きやすくなります。
5点目は相談窓口の設置。特に病院は一定の知識があって、ある程度自己解決できる従業員が多いため、産業医が機能しづらい職場です。不調に気付くためには、また気付いた時にすぐに相談できる場所として、院内に相談窓口を設置することは有効な方法の一つです。
6点目はメンタルヘルス対策。女性のうつ病の有病率は男性と比べて2倍といわれています。燃え尽き症候群の頻度も女性の方が高いです。こうした症状は女性管理職に起こりやすいことも分かっています。女性の管理職が多い医療や介護の現場では、メンタルサポートの強化は働きやすい環境を作るために欠かせません。
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