以上の6点のアプローチのうち、2点目にあげた適切な人員配置を実施したのが東京城東病院です。育児休暇後の職員を、それぞれの事情に考慮して配置するとともに、復帰して働くことにインセンティブを付与しました。その結果、勤務を希望する研修医が増加し、赤字だった病院収支も改善して黒字化を実現しています。
東京城東病院が改革できた理由は、女性の医師を副院長に登用して、経営陣に加えたことだといわれています。週1回開催される病院の経営会議で、女性副院長が必要な対策を提言し、その提言をトップが真摯に聞いて実行に移したそうです。女性の視点が経営に生かされた結果、女性が活躍しやすい職場に改善されました。
このように、経営陣に多様性があることで、現場が求めている対策に気付くことができます。また、経営陣が女性特有の疾患に関する知識を共有することで、離職率の低下や労働生産性の向上にもつながる可能性があります。
しかし、医療や介護の現場で東京城東病院のような改革に取り組んでいるところは、まだまだ多くはありません。だからこそ、今から取り組むことによって、人材不足の懸念を解消し、女性が働きやすい職場としてブランディングも実現できます。女性が多い医療・介護現場だからこそ、ぜひ女性特有の疾患に注目しながら、健康経営を進めてみてください。
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで警察不祥事、労働問題、教育、政治、経済、パラリンピックなど幅広いテーマで執筆。「スポーツ報知大相撲ジャーナル」で相撲記事も担当。Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/。著書に『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)。
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