作りたてと鮮度にこだわり続けるファンケルの物流改革RFIDソリューション(2/2 ページ)

» 2009年05月25日 10時06分 公開
[富永康信(ロビンソン),ITmedia]
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物流改革の前にERPで生産体制を改革

ファンケルが目指した新物流体制構築の目標要因

 そこで同社は、物流体制だけではなく生産体制にも手をいれないと根本的な改革には結びつかないだろうと考え、1年半ほどかけて生産改革に着手。2006年4月からERP(SAP R/3)の導入を決定していた同社は、パッケージに業務を合せることに社内でもさまざまな議論が起こったが、個別最適の仕組みのまま顧客に迷惑をかけるよりERPに合せて生産体制を変えていくことを選択した。

 ERPを導入する過程で、従来の生産方法ではルール化が未整備だった箇所や非効率な箇所が見直され、さまざまなメリットが派生。「一応の成功をみることができた」という成松氏は、生産工場を子会社化するなど、現在までの2年間で10億円以上の生産コストを削減し、在庫量もERP導入以前の約3割を削減。結果として、商品の廃棄量も半減したという。

 「“毎日生産”をルール化したことにより、新鮮さと作りたてのファンケルというイメージを改めて顧客に訴求できたことが最も大きな成果」(成松氏)

9割の信頼と1割の不安

ファンケルの関東物流センターの概要図(出典:ダイフクのホームページから引用)

 次に取り組んだのは物流拠点の統合である。2006年3月に社内プロジェクトが発足。日本全国8カ所に存在した拠点を1箇所に統合することで、部分最適で行ってきたオペレーションから全体最適のオペレーションに変え、業務の効率化とレベルアップを図ろうと考えた。

 そして2008年8月、千葉県柏市に日立物流が新設する倉庫の約4000坪(約1万3200平方メートル)のスペースを使用し、商品を一括管理する新物流拠点「ファンケル関東物流センター」を稼働させた。

 日立物流に倉庫内オペレーションをアウトソーシングし、NECの「EXPLANNER/Lg」をベースに開発したWMS(倉庫管理システム)を軸にERPと連携させ、入荷、出荷、在庫管理、棚卸し、マスタ管理、出荷検品などを実施。また、自動倉庫や自動補充システムを備えたピッキングシステムと検品ステーションなどで構成されたダイフクのマテハン(マテリアルハンドリング)システムを導入し、物流に関する情報を統合的に管理した。

 中でも、当時注目されたのは、1万4000枚のICタグを顧客のオーダ別に商品をとりまとめる小型コンテナに添付し、コンベヤ上には合計164台のリーダ/ライタが取り付けて、正確かつ迅速な出荷を行えるようにしたRFIDシステムの構築だった。

 成松氏は、「この物流改革プロジェクトの計画が担当者から提案されたとき、プラン内容に対する90%は信頼していたが、8拠点を1拠点に統合した上に、ICタグを利用したやりかたが本当に機能するのだろうかと、GOサインを出す際に10%の不安もあった」と打ち明ける。

 事実、システムが正式に稼働する3カ月前、システムに大規模なエラーが発生し、スタッフが徹夜で修復にあたったこともあったという。

即日出荷率が13%アップし出荷ミスがほぼゼロ化

新物流体制構築後の効果

 関東物流センターに物流拠点を集約したことにより、在庫の見える化と削減が実現し、課題となっていた別配送が解消した。また、JANコードによるチェックからRFIDによるチェックへ変更することによる倉庫内作業の効率化が図られ、即日配送に対応が可能になった。さらに、当日出荷可能な注文締め切り時間を15時40分から17時40分まで延長したことで、当日出荷割合も78%から91%に増加し約2000件増やすことができたという。

 加えて、重量による検品からPOS検品に変更することよる出荷ミスが0.04%(1804件)から0.005%(200件)以下にまで減少したという。また、ファンケルの売り上げが増加傾向にある中、物流費を年間10%程度削減し、従来280名程度を要していた作業人員は200名ほどで作業できるようになったことも効率化の効果としている。

 さらに、年間740万枚も出力されていたピッキングリストを廃止し、倉庫間輸送や出荷待ちをする配送トラックの輸送量を減少させることで、CO2を年間約130万トン 削減することを見込んでいるという。

 この物流改革によって、今後6年間で8億6000万円ほどの物流費削減が可能と試算する成松氏は、「このノウハウを基に、今後は冷凍保存製品の扱いにも拡大するとともに、将来は新たに関西物流センターを新設することも計画に入れ、より顧客に近い位置で健康をサポートしていきたい」と語り、物流・生産改革を引き続き進めていく考えを示す。

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