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小さくなって大きな進化、ソニーが有機EL搭載ヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T2」を国内発表おにぎり1個ぶん軽くなりました

» 2012年09月11日 13時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 ソニーは9月10日、有機ELパネルを搭載した3D対応のヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T2」を発表した。昨年末に登場した「HMZ-T1」の後継機。“20メートル先に750インチの大画面”というコンセプトを継承しつつ、本体を小型化したほか、新しい映像モードや交換可能なイヤフォンの採用で映像と音も進化させている。10月13日に発売予定で、市場想定価格は7万円前後。

3D対応のヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T2」

 1円玉サイズの有機ELパネルを2枚搭載することで、3Dテレビには付きものだったクロストークを根本的に排除したユニークな3D表示デバイス。2D映像でも自発光デバイスの有機ELならではの応答性能や高いコントラスト、漆黒表現などが特長で、従来機HMZ-T1は一時多くのバックオーダーを抱える人気商品となった。ただし購入者からは、本体の重さや装着感、ヘッドフォンの音質などについて改善を求める声も多く、「そうした意見を最大限に反映し、多くの改善を施したのがHMZ-T2」(ソニー)。

 まず外観は、独特の流線形フォルムを踏襲しつつ、より薄くコンパクトに仕上げた。HMD部分の外形寸法は187(幅)×104(高さ)×254(奥行き)ミリと、HMZ-T1比で幅が23ミリ、高さは22ミリ小さくなった計算だ。また、従来はブラックに塗装されていた本体下部もホワイトとし、“シンプルな塊感”を演出。前面のLED表示も幅を広げ、未来的な青い光が強調されている。注目の重量は約330グラムで、HMZ-T1の約420グラムから約90グラムの減量に成功。「コンビニのおにぎり1個ぶん軽くなった」という。

HMZ-T1と比較(左)。すっきりした印象になった

 軽量化と合わせ、装着時の負担を軽減する対策も施した。まず額にあたるヘッドパッドをワイド化して圧力を分散。ヘッドパッドの表面も従来よりグリップ感の高い素材を使っている。また、新たにヘッドパッドの位置を前後に4段階で調整できる仕組みにして、ピントが合わない、鼻にあたるといった場合にも対応できるようにした。「メガネをかけている人も装着具合に応じて調整することで、痛くない場所が見つかるだろう」。そのヘッドパッドの下には外光の進入を防ぐライトシールドを追加。合わせて下部のライトシールドも形状を変更し、全体の遮光性を向上させている。

ヘッドパッドをワイド化(左)。表面も従来よりグリップ感の高い素材を採用(中)。目幅調整は左右独立して調整できる(右)

 HMDの重さを支えるバンドも改善した。従来は、装着前にバンドの位置決めが必要で、左右のバンドが外れることも多かったという。そこで今回は、バンドを“組み込み式”にして外れないようにしたうえ、上から突起をおさえると緩む仕組みにして、装着しながら簡単に長さ調整が行えるようにした。装着後の目幅調整(目の間隔に合わせる)でも、新たに左右が独立して5段階の調整が可能になっている。

映像と音の進化、動画ボケもさらに抑制

 HMZ-T2も「20メートル先に750インチ」という虚像サイズは従来機と変わっていない。有機ELパネルは従来と同じ720p(1280×720ピクセル)で、期待されたフルHD化こそ果たされなかったものの、有機ELパネルの特性を生かしたいくつかの新機能が追加されている。

好きなヘッドフォンと組み合わせて装着できる

 まず、光学レンズの特性を考慮した「新エンハンスフィルター」と有機ELパネルの性能を引き出す「14bitリニアRGB 3×3 色変換マトリクスエンジン」をベースに各画質モードをのチューニングを刷新。リッチな色のりと精細感重視の画作りを行ったという。新たに搭載した「24p True Cinema」は、フィルムと同じ毎秒24コマ表示により、映画館独特の映像を楽しめるというものだ。

 また色温度設定には、従来の「高/中/低1/低2」に「ナチュラル」を追加している。ナチュラルは、各画質モードに従い、人間の目の特性に合わせてリラックスできる色温度(目が疲れにくい)に自動調整するというモードで、色温度の変化に順応するという人間の視覚特性を生かして徐々に色温度を変化させるため、処理がかかっていることをユーザーに意識させないという。

 また、「プレイステーション3」などでアクションゲームを楽しむ際にうれしい新機能が「パネルドライブモード」だ。もともとソニーの有機ELパネルは0.01ミリ秒という応答速度を持っているが、HMZ-T1で動きの早いレーシングゲームなどをプレイすると残像を感じることがあった。これは、パネル発光時間の長さによっては目の網膜に残像が残ってしまうためだという。そこでパネルドライブモードでは、1コマあたりの発光量を従来の90%から50%まで減らすことで残像を排除。ぼやけず、さらにくっきりとした映像が楽しめるという。

 音質面では、まず従来のオープンエアダイナミック型ヘッドフォンに変え、密閉ダイナミック型のイヤフォン(同社「MDR-EX300」相当品)が付属。再生周波数帯域は従来の12〜2万Hzから5〜2万4000Hzへと上下にワイドになり、カナル型のため外部の雑音も入りにくい。

付属のイヤフォンはMDR-EX300相当。ケーブルは短くなっている(左)。3.5ミリミニジャックを装備(右)

 さらに大きな変化は、付属のイヤフォンを外して好みのヘッドフォン/イヤフォンを接続できる仕様になったこと。ヘッドマウントディスプレイの内側にステレオミニジャックのヘッドフォン端子を備え、サウンドモードには「インナーイヤー」「オーバーヘッド」を用意。ヘッドフォンのタイプに応じて5.1chバーチャルサラウンドを最適化するという。なお、HMDにヘッドフォンを装着せず、自宅のホームシアターシステムで音を再生(AVアンプなどのHDMIパススルー機能を使用)して楽しむこともできる。このほか、圧縮音源で失われがちな消え際の微小な音を再現し、音に深みと伸びのある音場を実現するという「ハーモニクスイコライザー」も新しい。

プロセッサーユニット

 付属のプロセッサーユニットの仕様はHMZ-T1とほとんど変わらないが、音声入力が従来はリニアPCMに限られていたのに対し、今回はDolby DIgitalとAACもサポート。サイズは180(幅)×36(高さ)×168(奥行き)ミリ、重量は約600グラムとなっている。

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