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ドコモがスマート家電に参戦! 家族のための「ペトコ」開発者インタビュー(3/3 ページ)

» 2017年06月29日 12時26分 公開
[山本敦ITmedia]
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「しゃべってコンシェル」の自然対話技術の一部を応用

 ペトコの日本語によるコミュニケーションはとてもスムーズだ。本体に内蔵するドコモ製の自然対話プラットフォームにはNTTグループが開発を進めるAI「corevo」の技術が含まれている。音声認識は常時スタンバイ状態で待機しており、「ハイ、ペトコ」のコマンドで起動した後は、フュートレックの技術を組み合わせて音声をテキストに変換。解析されたコマンドにペトコが応答する仕組みだ。フュートレックはドコモのスマホが搭載する「しゃべってコンシェル」のサービスを長年に渡って共同で開発するパートナーであり、今回はペトコにその技術の一部が応用されている。

petocoアプリにチャットの内容が表示され、スマホでテキストを返信できる

 ペトコが対応するコマンドは単語が中心で、ある程度のコマンドセットが決められている。自然な日本語を認識してくれるが、長い会話のフレーズからでもコマンドを拾い上げて反応する使い方にはなっていない。フォーティーズの川添氏は、今後発売までにペトコが対応するコマンドセットをWebサイトなどで公開し、ユーザーがそれを参照しながら使えるようにしたいと語っている。またユーザーの意見や要望も採り入れながら追加機能が増やせるように設計の幅を持たせているようだ。

 ビデオチャットはペトコに外出先からおとうさんの映像を映しながら、同じ画面にペトコがキャプチャーしている映像をピクチャーインピクチャー表示しながらできる。試作段階ではまだ、外出してスマホを操作している側も音声でしゃべらなければならない仕様だが、村上氏は「外出先のおとうさんやおかあさんが、電車の中などにいて映像を見ながら声を出せない場所にいることも考えられます。これを想定して、ペトコアプリの画面の上側に子どもの映像を表示しながら、会話の内容が音声だけでなくテキストでも表示されたり、応答をテキストでできるような機能拡張も進めています」と語っている。音声のテキスト変換の精度はまずまずといったところだったが、これも発売までには格段に精度が高くなる予定であるという。

ビデオチャットが着信するとスマホアプリが呼び出しをかける
petocoからのビデオチャットにテキストで返信を返したり、petoco側から入力される音声メッセージをテキスト化してアプリに表示する機能なども実装される予定

 このほかにもペトコが覚えている家族の記念日に「おめでとう」と祝ってくれる機能や、タイマー、アラーム機能なども搭載されている。外部のコンテンツと連携して「今日の天気」やニュースを簡易な対話をしながらペトコに聞くこともできるようになりそうだ。

ユーザーの記念日を登録しておくと、専用のキャラクターがその日を迎えたときにお祝いのメッセージを伝えてくれる

 スピーカーやBluetooth機能を内蔵しているので、音楽再生にも使えるのだろうか。村上氏は「ハードウェアの構成としては対応できるようになっていますので、スマホにつないで音楽を再生したり、スマート家電を音声コマンドで操作できる機能なども、今後ユーザーからの反響をみながら検討していきたい」と、今後の可能性に含みを持たせた。

 ペトコは本体にカメラを内蔵するデバイスだが、見守りカメラ的な使い方には対応していない。ユーザーの操作によってペトコが起動して、通話の着信にユーザーが反応した時に映像のキャプチャーがスタートする。利用時のセキュリティーを考慮しての判断であるということだが、フォーティーズの川添氏は「トライアルサービスの中でユーザーの声を聞きながら、サービス内容も柔軟にアップデートできるようにしたい」と話していた。見守りカメラとしての機能追加はけっして技術的には難しいことではないという。

ドコモとIoTやスマート家電の関係は今後どうなる

 まもなくトライアル販売が始まるペトコを起点に、今後ドコモではスマート家電、あるいはIoTに関連するデバイスやサービスをどのような方針で充実させていくのだろうか。油川氏は「ペトコは重要な事例の第1号になる」としながら、ドコモとしてデバイスの開発はペトコの販売を手がけるフォーティーズのようなパートナーと組みながら、ドコモでは自然対話などコミュニケーションプラットフォームの開発に注力していく考えを示した。

 一方で、NTTドコモはIoT機器やウェアラブル機器の操作を一元化できるスマホアプリやWebアプリを開発するためのインタフェース技術「GotAPI」を開発し、さらに2015年にはソフトバンクモバイルととともに技術の普及と機能検討を行うための「デバイスWebAPIコンソーシアム」を設立。家の中にあるスマート家電やデバイスのコントロールについて、ドコモとしてイニシアチブを取っていくための体制を整えている。

 家電の「スマート化」は今後、各メーカーのプレミアムモデルを中心に広がっていくことも予想されるが、その技術の核心的な部分についてはメーカーが独自の製品を差別化するためブラックボックスの中に置かれることになるだろう。ユーザーが統一的なプラットフォームの上でスマート家電を便利に使える環境が整うためには、ドコモのような通信キャリアが音頭を取って技術やプラットフォームの標準化を押し進めていくことがとても大事だと筆者は思う。ペトコ以降も、ドコモが関わるスマート家電の二の矢三の矢が次々と放たれることを期待したい。

 川添氏は「将来は外部のデベロッパーがペトコのためのサービスを開発できるような仕組みを作りたい」とも語っている。ペトコを中心にさまざまな家電がつながって、サービスを活用するユーザーの数も増えれば、家電のスマート化に大きな“うねり”が生まれるかもしれない。

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