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AIを駆使したソニーのパーソナルトレーナー「FAIT」を体験した(3/3 ページ)

» 2017年10月03日 17時21分 公開
[山本敦ITmedia]
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測定結果はグラフやスコア表にまとめられ、プリントアウトもできるようになっている

 スポーツセンサーにはユーザーの動作を正確に検知するため、ソニーが開発・商品化した「スマートテニスセンサー」にも組み込まれた精度の高い加速度/ジャイロセンサーモジュールを2基ずつ内蔵している。筆者が体験した健康チェックのほかにも、よりシビアに体力を測ることを目的とした「スポーツテスト」も、スポーツクラブなどの施設向けに開発されているという。

測定の結果、ユーザーに最適なトレーニングのメニューをAIがレコメンドしてくれる
測定結果を履歴で確認しながら、続けるためのモチベーションが維持できる

誰にでも操作できる簡単なユーザーインタフェース

 もう1つのアクティビティトラッカーは手首に巻いて使うリストバンドタイプのデバイスだ。常時身に着けて生活しながら、食事や睡眠、歩数など日常の活動を記録していく。蓄積したデータは月次で施設の共有端末に読み込み、専用サーバにアップロード。スマートフォンやタブレットを使わずにクラウドデータと同期できるように設計されている。

リストバンドタイプのアクティビティトラッカー。バンドの部分にNFCタグが内蔵されている

 アクティビティトラッカーは加速度センサーのみ搭載するシンプルなデバイスだ。「高齢者のユーザーが簡単に使ってもらえることを想定して、複雑な仕様をそぎ落としている」と廣部氏が説明する。一方で、ユーザーがデバイスの使い勝手を意識することなく、正確にアクティビティデータを記録できるよう随所に気配りもある。本体は5m生活防水で、バッテリーは汎用性の高いコイン型電池。最低3カ月以上の連続駆動に対応する。表側にはサービス事業者が自由に機能を割り当てられる3つの物理ボタンを配置。システムの共有端末や他のIoTデバイスと簡単にデータ通信やペアリングができるように、NFC/FeliCaの近距離無線通信機能も搭載した。廣部氏によると「スポーツクラブでは会員証として使ったり、用途に合わせて電子マネー機能を付与することも可能」という。

介護施設やスポーツクラブ、IoTマンションにも広がるFAIT

 ソニーモバイルが想定するFAITのメインターゲットは介護事業者のほかにも、例えば自治体が運営する「高齢者向け健康クラス」などがある。廣部氏は「実証実験も行っているが、FAITで体操などアクティビティの成果が数値化できるので、ユーザーだけでなく自治体の運営者にも好評を得た」と語っている。

 ほかにもショッピングモールなどで短期間開催する「健康イベント」にFAITを持ち込んだり、大手住宅メーカーの大和ハウスと組んで、個人宅用のヘルスケアプラットフォームの開発にも展開。大和ハウスとの協業について廣部氏は「個人のユーザーの健康管理を長期間サポートするようなサービスをイメージしている。長く続けてもらうためのポイント付与や様々なインセンティブ設計が今後の開発テーマになるだろう」と説いた。今後大和ハウスが販売する新築の“IoTマンション”に組み込んで、2019年からサービスを開始する予定だという。新築以外の物件にもプラットフォームを導入できるようだが、具体的な方法については現在検討が進められている段階だという。

 FAITのサービスには、ソニーが開発するAIやクラウドディープラーニング、センシングの最先端技術が投入されているが、その“スゴさ”をユーザーに意識させることはなく、日常生活の延長線上で便利に使ってもらうための様々な気配りが散りばめられている。例えば今回、筆者が体験した健康チェックの結果を、ふだんタブレットを使い慣れていない高齢者のユーザーが繰り返し確認できるよう、紙にプリントアウトできる「印刷」機能もしっかりと組み込まれている。Xperiaシリーズのスマホで培ってきたノウハウをスマートプロジェクターやBlueotoothイヤフォンにも広げて、さらにユーザーの生活に深く根付いたサービスにまで浸透させていくことができるのか。「FAIT」の周辺に広がる展開に今後も注目していきたい。

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